お米の籾殻(もみがら)、ビールを造った後に残るホップの搾りかす、香辛料として使われるオレガノやタイムの茎——こうした食品・農業由来の「残りもの」には、実はまだ活用しきれていない成分が含まれていることがあります。ポルトガルの繊維・衣料産業技術センター(CITEVE)の研究チームが発表したこの研究は、こうした農産食品残渣に含まれるポリフェノール(フェノール化合物)の量や抗酸化活性を比較し、どのような抽出方法が効率的かを調べたものです。

ポリフェノールは抗酸化性を持つことで知られ、機能性材料への応用が期待される成分ですが、原料の種類や取り出し方によって得られる量や質が変わります。この研究では、そうした違いを実際にデータで比較しています。

何を、どうやって調べたのか

研究対象となったのは、米の籾殻、ビール醸造で使い終わったホップ(スペントホップ)、そしてオレガノとタイムの茎という4種類の農産食品残渣です。これらから成分を取り出す方法として、超音波を使った抽出法(UAE)と、従来型の湯せんによる抽出法(WB)の2種類を比較しました。

得られた抽出液は、総フェノール含量(TPC)を測る分光光度法による分析に加え、DPPH法とABTS法という2種類の方法で抗酸化活性を評価しています。さらにHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて、抽出液に含まれる個々のフェノール化合物の種類まで詳しく調べています。

研究でわかったこと

結果として、オレガノとタイムの茎から得られた抽出液が、総フェノール含量・抗酸化活性ともに最も高い値を示したと報告されています。一方、米の籾殻からの抽出液は検出されたフェノール化合物の濃度が最も低かったとされています。

個別の成分としては、ヒドロキシケイ皮酸類、特にp-クマル酸とフェルラ酸が、調べたすべての原料に共通して多く検出された成分だったとしています。

多変量解析(複数のデータを同時に扱う統計的手法)の結果からは、フェノールの構成や抗酸化の働き方を左右する要因として、抽出方法よりも原料そのものの違い(マトリックス組成)の影響が大きいことが示されたとしています。そのうえで、超音波を使ったUAE法は、従来のWB法と同程度の結果を、より短い抽出時間で得られたと報告されています。

また、ピアソン相関分析(複数の数値の関連性を調べる統計手法)からは、抗酸化活性は単一の成分によるものではなく、複数のフェノール化合物が組み合わさって働いた結果である可能性が示唆されたとしています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、食品や農業の過程で生じる残渣を、機能性材料の原料として持続可能な形で活用できる可能性を示すものと位置づけられています。ただし、これは特定の抽出条件・分析手法のもとで得られた結果であり、ここで述べられている抗酸化活性は健康効果そのものを直接示すものではありません。食品としての摂取による効果を保証する内容ではない点に注意が必要です。また、一つの研究であり、ここでの知見がすべての農産残渣や条件に当てはまると結論づけられたわけではありません。

まとめ

米の籾殻、スペントホップ、オレガノやタイムの茎といった、通常は廃棄されがちな農産食品残渣にも、フェノール化合物が含まれており、その量や抗酸化活性は原料の種類によって大きく異なることが今回の研究で報告されました。特にオレガノとタイムの茎で高い値が示された一方、抽出方法としては超音波を使うことで従来法と同等の結果を短時間で得られる可能性も示されています。今後、こうした知見が食品残渣の有効活用につながっていくのか、注目されるところです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Vanessa Carvalho, Catarina Rodrigues, Marta Mota, et al. Valorisation of Agri-Food Residues: Comparative Analysis of Phenolic Composition, Antioxidant Activity and Extraction Methods. アプライドケム (2026). DOI: 10.3390/appliedchem6030052. 原著ライセンス: cc-by.