この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food and Bioprocess Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ハーブティーには、ポリフェノールと呼ばれる植物由来の成分が含まれていることが知られています。ただし、こうした成分は熱や光、酸素などの影響を受けやすく、抽出してから粉末などの形に加工する過程で失われてしまうことも少なくありません。今回紹介する研究では、オーストラリア原産のハーブであるレモンマートル(Backhousia citriodora)とリバーミント(Mentha australis)を対象に、水を使った超音波抽出という方法と、スプレードライ(噴霧乾燥)によるマイクロカプセル化という加工技術を組み合わせて、ポリフェノールを効率よく回収し、安定した粉末にできるかどうかが調べられました。
研究でわかったこと
まず研究チームは、超音波抽出の条件(抽出時間、超音波の強さを示す振幅、原料と溶媒の比率)をいろいろと変えながら、抽出液に含まれる総フェノール量(TPC)を指標に、もっとも効率よく成分を引き出せる条件を探しました。その結果、抽出時間20分、振幅30%、原料と溶媒の比率1:20という条件で、方法開発の段階ではレモンマートルが25.10±0.61 mg GAE/g、リバーミントが51.98±4.28 mg GAE/gという総フェノール量が得られたと報告されています。
この条件を、実際に製造用として用意した原料(レモンマートルについては別途調達した市販品バッチも含む)に適用したところ、抽出液(フィード)の総フェノール量はそれぞれ64.35±2.72 mg GAE/g、37.67±2.40 mg GAE/gとなったとのことです。
続いて、この抽出液をマルトデキストリン、またはマルトデキストリンとアラビアガムを組み合わせたキャリア素材とともにスプレードライし、粉末化する工程が検討されました。製造収率はレモンマートルで72.00〜78.92%、リバーミントで62.09〜65.63%、工程全体の収率はそれぞれ53.37〜69.83%、68.76〜70.65%だったと報告されています。
興味深いのは、成分ごとの結果の違いです。総フェノール量をもとにしたカプセル化効率は、リバーミント(80.60〜86.50%)のほうがレモンマートル(59.71〜68.02%)より高かった一方で、粉末中の総フェノール量そのものはレモンマートル(45.33〜48.05 mg GAE/g)のほうがリバーミント(24.25〜25.63 mg GAE/g)より高く、フェノール成分の保持率(68.8〜74.9%)もレモンマートルのほうがリバーミント(61.3〜70.4%)より高かったとされています。さらに、特定の成分に注目すると、レモンマートルに含まれるガリック酸のカプセル化効率はおよそ78〜85%、リバーミントに含まれるロズマリン酸では88〜96%だったと報告されています。
このほか、粉末の水分量は5.69〜9.37%、DPPH法による抗酸化活性はレモンマートルで3.31〜10.52 mg TE/g、リバーミントで3.48〜6.26 mg TE/gの範囲だったとされています。また、粉末の水分活性は0.42〜0.47、溶解性は85.3〜88.4%、粉体の流動性を示すCarr指数は39.69〜46.73、Hausner比は1.66〜1.88であったと報告されています。研究チームは、今回検討した条件下では、レモンマートルはフェノール成分の密度が高く、リバーミントは特定の指標成分の保持効率が比較的高いという傾向が示されたとまとめています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の抽出条件・加工条件のもとでレモンマートルとリバーミントのポリフェノール回収や粉末の性質を比較検討したものであり、これらのハーブや成分が健康に良い効果をもたらすことを直接証明するものではありません。あくまで一つの研究であり、条件や原料が変われば結果も変わりうる点、また今回得られた数値がそのまま他の製品や状況に当てはまるとは限らない点に留意する必要があります。
ポリフェノールの健康への影響については様々な研究が行われていますが、本研究の要旨からは、抽出・加工技術によって成分の回収量や安定性にどのような違いが生じるかという、食品加工の観点からの知見が示されているにとどまります。
まとめ
今回の研究では、超音波抽出とスプレードライによるマイクロカプセル化を組み合わせることで、レモンマートルとリバーミントというハーブから、ポリフェノールを含む粉末を作る試みが行われました。両者では、フェノール成分の含有量やカプセル化効率、成分の保持率などに違いが見られ、レモンマートルはフェノール密度の高さ、リバーミントは特定成分の保持効率の高さがそれぞれの特徴として示唆されています。今後、こうした加工技術がどのように活用されていくのか、続報が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):超音波抽出とスプレードライ・マイクロカプセル化によるレモンマートル及びリバーミントのハーブティー抽出液中のポリフェノール回収と安定性の向上(フード・アンド・バイオプロセス・テクノロジー・2026年08月)
著者:Joseph Robert Nastasi(School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, Brisbane, Australia)、Laila Laila(School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, Brisbane, Australia)、Keely Rose Perry(School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, Brisbane, Australia)、Synne Hylen Røsten(School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, Brisbane, Australia)、Alberto Baldelli(School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, Brisbane, Australia)