著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Veterinary Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
皮下脂肪への影響を調べる
研究チームは、飼料に加えたグアニジノ酢酸(GAA)が、チベット羊の皮下脂肪の蓄積や性質にどう影響するかを調べました。GAAは、細胞のエネルギー供給を支えるクレアチンの材料となる物質です。皮下脂肪にはエネルギーの貯蔵や体の保護という役割がありますが、過剰な蓄積は飼料利用の効率や肉質に関わります。
研究チームは、生後2か月の雄の子羊120頭を無作為に4群に分け、同じ基本飼料にGAAを0%、0.08%、0.10%、0.12%加えて90日間飼育しました。試験終了後、各群から6頭を選び、皮下脂肪の厚さ、脂肪細胞の大きさ、酸化による損傷に対抗する働き、脂肪酸の組成を調べました。
0.10%添加群で脂肪の厚さと抗酸化指標に変化
著者らは、GAAを0.10%加えた群では、添加しない群より皮下脂肪が有意に薄くなったと報告しています。一方、脂肪細胞の面積と直径が添加しない群より有意に小さかったのは、0.08%添加群でした。
抗酸化に関する指標でも、0.10%添加群に特徴がありました。脂質の酸化による損傷の指標となるマロンジアルデヒド(MDA)は、この群でほかの3群より低く、活性酸素を取り除く酵素SODの活性は高くなりました。総合的な抗酸化能力を示す指標も、添加しない群と0.08%添加群を上回りました。
脂肪酸の分析では40種類が検出され、添加量によって組成が変わりました。例えば、0.12%添加群では、リノール酸とα-リノレン酸の含有量がほかの3群より有意に低くなりました。添加量を増やすほど、すべての指標が同じ方向に変わるわけではありませんでした。
遺伝子と脂質の分析から探る変化の背景
研究チームはさらに、遺伝子の働き具合を調べるRNA解析と、脂質分子を詳しく測る質量分析を組み合わせました。その結果、脂肪の厚さや抗酸化指標、脂肪酸の含有量と関連する遺伝子群や脂質分子が見つかりました。これらには、栄養の利用や蓄積に関わるインスリンの情報伝達、細胞の酸化・還元のバランスに関係するものが含まれていました。
著者らは、抗酸化能力やインスリンの情報伝達の変化が、皮下脂肪の変化に関わる可能性を示しています。ただし、関連の分析だけで具体的な仕組みが確定したわけではありません。この研究は、GAAの飼料添加が、チベット羊の皮下脂肪の量だけでなく、酸化への対抗力や脂質の構成にも関わることを示した報告です。
原著論文の著者・所属:Zhenglu Yang(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Chengdi Shi(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Zhendong Liu(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Rengeerli Sa(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Yu Zhang(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Qiurong Ji(Maduo County Agriculture and Animal Husbandry Technology and Rural Revitalization Comprehensive Service Center, Qinghai, China)、Lijuan Han(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Xiaohong Wang(Guinan County Animal Husbandry and Veterinary Station, Qinghai, China)、Shengzhen Hou(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)、Linsheng Gui(College of Agriculture and Animal Husbandry, Qinghai University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhenglu Yang, Chengdi Shi, Zhendong Liu, et al. Effects of rumen-protected guanidinoacetic acid on fat deposition, antioxidant capacity, fatty acid profiles in subcutaneous adipose of Tibetan sheep: integrated RNA-seq and LC-MS/MS analysis. Frontiers in Veterinary Science 2026-08-25. DOI: 10.3389/fvets.2026.1866223. 原著ライセンス:CC BY.