8月に入り、梨がいよいよ店先で存在感を増してきました。幸水をはじめとする早生の品種が出回る「走り」の時期にあたり、これからお盆を過ぎるころにかけて豊水などが加わり、甘みと果汁がぐっと乗ってくる季節です。かじった瞬間にあふれる水分と、すっと広がる甘さは、暑さで火照った体にうれしい涼やかさを届けてくれます。
日本なし 生のあの甘みの正体をたどると、糖の内訳が答えを教えてくれます。100gあたりで見ると、果糖が3.8g、しょ糖が2.9g、ぶどう糖が1.4gと、果糖が最も多く含まれています。梨のみずみずしい甘さは、この果糖が主体になって生まれていると考えられます。同じ甘みでも、しょ糖主体の果物とは少し違う、すっきりとした後味の理由がここにありそうです。
それでいてエネルギーは100gあたりわずか38kcal。食物繊維も0.9g含まれており、みずみずしさと軽さを両立した果物といえます。梨は幸水・豊水・二十世紀・南水など品種が豊富で、糖度や酸味、食感がそれぞれ異なりますが、成分自体はどの系統でも大きくは変わりません。廃棄率は皮・芯・種を除いて15%ほどあり、まるごと1個(約300g)でも、思ったよりしっかり果肉を楽しめる計算になります。
もうひとつの主役、ソルビトール
梨で特に目を引くのが、100gあたり1.5g含まれるソルビトールです。これはさくらんぼや海藻などにも見られる糖アルコールの一種で、整腸作用があるともされる成分です。梨のさっぱりとした甘さの奥に、もうひとつの顔が隠れているのは興味深いところです。
薬膳の考え方では、梨は五性でいう「涼」、五味でいう「甘・酸」に分類され、肺や胃に関わるとされてきました。火照った体が梨を欲しくなる感覚は、こうした昔からの見立てと重なる部分があるのかもしれません。
食べ方と保存のひと工夫
幸水のようにそのまま冷やしてかじるのはもちろん、二十世紀のような青梨系との食べ比べも夏らしい楽しみ方です。保存はクッションやペーパーで包んで冷蔵すればまるごとで1カ月ほど保ちます。カットしたものなら2週間ほどで食べきるのが目安です。食べきれないときはラップに包んで冷凍しておけば、2カ月ほど日持ちします。冷凍した梨は水に30秒から1分ほどくぐらせると皮がつるりとむけ、半解凍のまま食べればシャリシャリのシャーベット代わりに。暑い日の小さなごちそうになります。
まとめ
梨の甘さの主役は、果糖という一点に集約されます。すっきりとした後味も、暑い日に一玉が軽く食べられるのも、この糖の顔ぶれの違いから来ています。走りの幸水から、お盆を過ぎての豊水へ。同じ「梨」でも品種が移るこれからの一か月は、味の違いを確かめるのにちょうどいい時期です。
なお、これは特定の食品の効果を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。