この研究は、ブラジル、ポルトガルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Food Measurement & Characterization

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

タイオバ(Xanthosoba sagittifolium、学名表記はXanthosoma sagittifolium)は中南米の熱帯地域に自生する植物で、「非慣行食用植物」に分類されます。地下の塊茎(ちかけい、地中の茎が養分をためて太くなった部分)はデンプンの供給源となり、葉にはタンパク質や食物繊維、カルシウム、マグネシウム、ビタミンCのほか、抗酸化作用が知られる生体活性成分(バイオアクティブ化合物)が多く含まれると報告されています。

デンプンは食品や医薬品、化粧品などで増粘・ゲル化・安定化のために広く使われますが、そのままの「天然デンプン」には技術的な制約があり、性質を改良する処理が必要になることがあります。著者らは、化学的な改質に代わるより安全で持続可能な方法として、植物抽出物に含まれる成分をデンプンに取り込ませる手法に注目しました。ただしフェノール化合物などの生体活性成分は熱に弱く、高温や長時間の加工で分解しうるという課題があります。

論文によれば、タイオバの塊茎からのデンプン抽出についての研究はすでにありますが、葉の抽出物でデンプンを富化したうえで、乾燥の進み方、熱力学的な性質、物理化学的な安定性、生体活性成分の残存を同時に評価した研究はほとんどないとされています。また、葉の抽出物の作り方の違いが、富化デンプンの機能的・技術的な性質にどう影響するかを扱った研究は見つからなかったと著者らは述べています。そこで本研究は、葉と塊茎の成分・ミネラル・抗酸化能を明らかにするとともに、抽出物の調製法と乾燥温度が富化デンプンの性質に与える影響を調べることを目的としました。

何をどのように調べたか

材料は、ブラジル・アクレ州シャプリの農林センター(西アマゾン地域)で栽培されたタイオバの葉と塊茎です。著者らは、水分やミネラル、フェノール化合物、アスコルビン酸、フラボノイド、クロロフィル、カロテノイドなどを測定し、抗酸化能はABTS、DPPH、FRAPという3種類の試験で評価しました。シュウ酸の含量や色も測定しています。

葉の抽出物は3通りに作り分けられました。加熱せず生葉を常温の水とともに粉砕したもの(EI)、水中で5分間煮出したもの(ED)、10分間蒸した後に常温の水とともに粉砕したもの(EV)です。一方、塊茎は粉砕・ろ過・沈降・洗浄の工程を経てデンプンのペーストにされました。このデンプンを4つに分け、3つをそれぞれの抽出物と混ぜて低温で静置し、余分な抽出液を除いて富化デンプン(ES-I、ES-D、ES-V)とし、抽出物を加えないものを対照(CS)としました。

これらのペーストを厚さ約3mmの層にし、30℃、40℃、50℃の熱風で乾燥させながら、重量が一定になるまで定期的に計量して水分の減り方(乾燥動力学)を記録しました。得られたデータには複数の数式モデルが当てはめられ、水分の内部移動のしやすさを表す「有効水分拡散係数」や、温度依存性を示す「見かけの活性化エネルギー」、さらにエンタルピー・エントロピー・ギブズ自由エネルギーといった熱力学的性質が算出されています。実験は無作為化計画で、各条件とも独立した3反復で行われました。

主な報告結果

葉と塊茎はいずれも水分と水分活性が高く、葉は水分85.50%・水分活性0.982、塊茎は67.80%・0.951でした。著者らはこれが微生物の増殖や収穫後の品質低下を招きやすい条件であると指摘しています。炭水化物は貯蔵器官である塊茎で27.92%と高く、葉では8.31%でした。灰分(ミネラル量の指標)は葉のほうが高く、pHは葉が4.44、塊茎が5.64でした。

ミネラルについては、カルシウムとマグネシウム、またマンガン(2.37 mg/100 g)と鉄(1.60 mg/100 g)は葉で高く、カリウム、ナトリウム、リン、亜鉛、銅は塊茎で高い値を示しました。特に塊茎のカリウムは1010.66 mg/100 gで、著者らはこの部位がカリウムの重要な供給源となる可能性を挙げています。

乾燥については、検討されたモデルはいずれも実測値によく当てはまり(決定係数はおおむね0.990超)、なかでもMidilliモデルが最も良好な統計的性能を示しました。ただし著者らは、これは半経験的なモデルであり、個々のパラメータを物理的な輸送特性そのものと解釈すべきではないと注意を促しています。温度を上げると水分の除去は速くなり、50℃では約150分で吸湿平衡に達した一方、30℃では一部の処理で約270分を要しました。30℃から50℃への昇温により、全体の処理時間は約41%短縮されたと報告されています。

有効水分拡散係数は、ES-I30の1.84×10⁻¹⁰ m²/sからCS50の8.55×10⁻¹⁰ m²/sの範囲にあり、すべての処理で温度の上昇とともに増加しました。抽出物を加えたデンプンは、同じ温度で比べると対照デンプンより低い値を示す傾向がありました。著者らはこれを、抽出物の成分がデンプン分子と相互作用し、水の結合の仕方やマトリックスの構造、水分の移動経路を変えたことと関連づけて考察しています。同時に、用いた簡略なモデルは外部の物質移動抵抗や収縮、空隙率の変化などを明示的に扱っていないため、これらの値は実験条件下での「見かけの」値として解釈すべきだとしています。

見かけの活性化エネルギーは、ES-Dが最も低く21.09 kJ/mol、次いでES-Vが30.96 kJ/mol、ES-Iが42.16 kJ/molで、対照デンプンが44.24 kJ/molと最も高い値でした。著者らは、抽出物の添加が水分移動の見かけの温度依存性の違いと結びついていることを示すとしつつ、温度水準が3点のみであることから、これらの差を統計的に有意な差や異なる分子拡散機構の証拠とみなすべきではないと明記しています。

この研究が示すこと

著者らの報告は、タイオバの葉と塊茎が栄養・機能の両面で異なる持ち味をもち、葉の抽出物をデンプンに取り込ませると、乾燥中の水分の動きや温度への応答が対照デンプンとは異なってくることを示しています。また、抽出物を煮出す・蒸す・加熱しないという調製法の違いが、その後の乾燥挙動の指標にも反映されていました。

乾燥温度を上げれば処理時間は短くできますが、著者らは、過度な加熱がデンプンの構造や機能特性を損ない、熱に弱い生体活性成分を分解させうることにも触れています。工程の効率と、成分の安定性や製品の技術的特性の保持との間でどう釣り合いをとるか——この研究は、未利用の植物資源を素材として扱ううえで、その判断に必要な基礎データを提供するものだと言えます。

著者:Emerson Zambrano Lara(https://ror.org/02239nd21 grid.472927.d 0000 0004 0370 488X Department of Agro-industrial Technology Federal Institute of Education, Science and Technology of Acre Xapuri AC Brazil)、Josivanda Palmeira Gomes(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Rossana Maria Feitosa de Figueirêdo(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Yaroslávia Ferreira Paiva(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Food Engineering Federal University of Campina Grande Pombal PB Portugal)、Alexandre José de Melo Queiroz(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Francislaine Suelia dos Santos(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Mailson Gonçalves Gregório(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Lumara Tatiely Santos Amadeu(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Nailton de Macedo Albuquerque Júnior(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Sabrina dos Santos Costa(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Process Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Juliana Cruz Albuquerque(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Agricultural Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)、Dyego da Costa Santos(https://ror.org/04je48v27 grid.466755.3 0000 0004 0395 6665 Department of Food Science and Technology Federal Institute of Education, Science and Technology of Rio Grande do Norte Pau dos Ferros RN Brazil)、Charlene Maria de Alcântara(https://ror.org/00eftnx64 grid.411182.f 0000 0001 0169 5930 Department of Process Engineering Federal University of Campina Grande Campina Grande PB Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emerson Zambrano Lara, Josivanda Palmeira Gomes, Rossana Maria Feitosa de Figueirêdo, et al. Drying behavior, thermodynamic properties, and functional stability of taioba starch enriched with leaf bioactive extracts. Journal of Food Measurement & Characterization 2026-10-03. DOI: 10.1007/s11694-026-05020-3. 原著ライセンス:CC BY.