著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品は、腸内環境によいイメージから健康との関連がしばしば話題になります。近年では、子どもの喘息やぜんそく性の咳(喘鳴)といったアレルギー性の呼吸器症状との関連にも関心が寄せられてきました。今回紹介する研究は、これまでに発表された観察研究を集めて統合的に分析し、発酵乳製品の摂取と子どもの喘息・喘鳴リスクとの関連を検証したものです。
研究の方法
この研究は、PROSPEROに登録されたプロトコルに基づき、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryの4つのデータベースを2026年1月まで検索し、発酵乳製品の摂取と子どもの喘息・喘鳴リスクとの関連を報告した観察研究を収集した系統的レビュー・メタアナリシスです。合計11件の研究(参加者119,372人)が対象となり、ランダム効果モデルを用いてオッズ比(OR)を統合しました。研究デザイン(横断研究かコホート研究かなど)、アウトカムの種類、製品の種類、摂取時期の違いによるサブグループ解析に加え、結果の頑健性を確認するための感度分析(Hartung-Knapp補正を含む)も行われています。
研究でわかったこと
主要な解析(DerSimonian-Laird法によるランダム効果モデル)では、発酵乳製品の摂取は子どもの喘息・喘鳴(両者を合わせたアウトカム)のリスク低下と関連する結果でした(OR = 0.72、95%信頼区間: 0.55-0.95)。ただし、研究間のばらつき(異質性)は大きく(I² = 77.0%)、より保守的な統計手法であるHartung-Knapp補正を行うと、この関連の統計的有意性は消失しました(OR = 0.72、95%信頼区間: 0.52-1.01、p = 0.054)。
さらにサブグループ解析からは、この関連が主に横断研究によってもたらされていたことが示されました(横断研究:OR = 0.51、95%信頼区間: 0.33-0.78)。一方、より因果関係の推定に適しているとされるコホート研究に限ると、統計的に有意な関連は認められませんでした(OR = 0.91、95%信頼区間: 0.72-1.16)。このほかにもいくつかのサブグループで異なる傾向が見られましたが、サブグループ間の差そのものは統計的に有意ではありませんでした。また、Egger検定では出版バイアスを示す統計的な兆候は認められませんでした。研究の著者らは、全体としてのエビデンスの確実性は「非常に低い」と評価しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究の著者らは、現時点での科学的根拠は、発酵乳製品の摂取と子どもの喘息・喘鳴リスクとの間に頑健な関連を支持するものではないと結論づけています。見かけ上の関連が観察された背景には、研究デザインなどの方法論的な要因が影響している可能性があるとしています。特に、横断研究(ある一時点での摂取状況と症状の有無を調べる研究)は、症状があることが摂取行動に影響するなど、因果の方向性を判断しにくいという制約があります。そのため著者らは、この関連をさらに明らかにするには、よく設計された大規模な前向き研究(コホート研究)が必要だと述べています。
本記事で紹介した内容は、あくまで既存の観察研究を統合した一つのメタアナリシスの結果であり、発酵乳製品の摂取が喘息・喘鳴を予防する、あるいはリスクを下げるといったことを証明するものではない点にご留意ください。
まとめ
今回のメタアナリシスでは、発酵乳製品の摂取と子どもの喘息・喘鳴リスクの低下との間に見かけ上の関連が示唆されたものの、統計的な補正を行うとその関連は明確には支持されませんでした。特に横断研究に結果が左右されていた可能性が指摘されており、著者らはより厳密な前向き研究による検証が必要だとしています。発酵乳製品と子どもの呼吸器の健康との関係について、今後の研究の進展が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):発酵乳製品の摂取と小児における喘息・喘鳴リスクとの関連:観察研究の系統的レビューとメタアナリシス(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)
原著論文の著者・所属:Bing Tian(College of Traditional Chinese Medicine, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Lijie Hou(Department of Pediatric Internal Medicine One, Affiliated Hospital of Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Ling Zhang(Department of Cardiovascular Medicine, China-Japan Union Hospital of Jilin University, Changchun, Jilin, China)、Zhuang Wang(College of Traditional Chinese Medicine, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Xiaofei Xie(Department of Pediatric Internal Medicine One, Affiliated Hospital of Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Dongze Li(College of Traditional Chinese Medicine, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Yongji Wang(College of Traditional Chinese Medicine, Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)、Yongji Wang(Department of Pediatric Internal Medicine One, Affiliated Hospital of Changchun University of Chinese Medicine, Changchun, Jilin, China)