この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Agricultural and Food Economics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
普段の食生活について「自分はわりと健康的に食べているほうだ」と感じている人は少なくありません。しかし、その自己認識が実際の食べ方とどこまで一致しているかは、必ずしも明らかではありません。研究チームは、この「自己認識」と「実際の行動」の間にある隔たりを重要な空白と位置づけ、そこに焦点を当てました。
この研究が調べたのは、自分の普段の食事をどれくらい健康的だと感じているか(研究では「知覚された習慣的食事の健康度」と呼ばれています)という感覚が、どのような心理的要因によって形づくられているのか、そしてその感覚が、実際に健康的な食事パターンをどれだけ実践できているか(「健康的食事パターンの遵守」)とどう対応しているのか、という点です。前者はあくまで本人の主観的な評価であり、後者は実際の食べ方に関する指標にあたります。
何を調べ、何が分かったか
研究チームは、イタリアの成人1,000人を対象とした調査を実施しました。その結果、自分の食事を健康的だと感じる度合いは、「健康的な食生活を送る人という自己像(健康的な自己アイデンティティ)」、「自分の食べ方を意識して見張る習慣(セルフモニタリング)」、そして「食や栄養について自分は知っているという主観的な知識感」という三つの要因によって、はっきりと押し上げられていました。
一方で、この主観的な健康度の感覚と、実際の健康的な食事パターンの遵守との結びつきは弱いものにとどまりました。つまり、「健康的に食べているつもり」と「実際の食べ方」は、必ずしも足並みがそろっていなかったということです。なお、これは両者の対応関係についての報告であり、どちらかが他方を引き起こすと示されたわけではありません。
このずれの中身を明らかにするため、研究チームは、自己評価は高いのに実際の食事パターンの遵守は低いという「不一致な層」に注目し、その特徴を比べました。すると、この層では健康的な自己アイデンティティと調理スキル(料理をする実際の技能)が、いずれも明確に低いという傾向が見られました。そしてこのパターンは、若い回答者と男性の回答者において最も顕著に表れていました。
この結果が示していること
著者らは、こうした認識と行動のずれは、単なる思い込みや認知の偏りとして片づけられるものではないと述べています。むしろそれは、健康的な食べ手としての自己像がまだ十分に自分の中に根づいていないことと、実際に料理をするといった具体的な技能が限られていることが重なった、特定の組み合わせとして現れている——それがこの調査から読み取れる姿です。
自分の食生活を正確に見積もれないという現象の背景に、心理的な土台があることを示した点が、この研究の報告する新しい手がかりだといえます。
著者:Tommaso Fantechi(Department of Agriculture, Food, Environment and Forestry, University of Florence, Florence, Italy)、Elena Radicioni(Department of Agriculture, Food, Environment and Forestry, University of Florence, Florence, Italy)、Giovanna Piracci(Department of Land, Environment, Agriculture and Forestry, University of Padua, Padova, Italy)、Francesca Gerini(Department of Agriculture, Food, Environment and Forestry, University of Florence, Florence, Italy)、Caterina Contini(Department of Agriculture, Food, Environment and Forestry, University of Florence, Florence, Italy)、Leonardo Casini(Department of Agriculture, Food, Environment and Forestry, University of Florence, Florence, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tommaso Fantechi, Elena Radicioni, Giovanna Piracci, et al. Seeing oneself as a healthy eater: psychological factors underlying the perception of healthy eating and its alignment with actual diet quality. Agricultural and Food Economics 2026-09-11. DOI: 10.1186/s40100-026-00509-3. 原著ライセンス:CC BY.