この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
果物を加工すると、果皮や種子、搾りかすといった残渣が大量に生まれます。研究チームは、こうした食品廃棄物にどのような生物活性があるかを評価することは、食品分野で使える有用成分(生物活性化合物)の供給源を見つけるうえで欠かせないと述べています。
そこでこの研究では、アマゾン地域の農産加工業から出る4種類の果実残渣——アセロラの搾りかす、アサイーの種子、マンゴーの果皮、ププーニャ(ピーチパーム)の果皮——を比較し、天然の抗酸化剤および抗菌剤としての活用(バロリゼーション、つまり廃棄物を価値ある資源に変えること)の可能性を探ることを目的としています。
調べた方法
著者らは、それぞれの残渣から成分を取り出す(抽出する)ために、エタノールとメタノールを用いた動的マセレーション(溶媒に浸しながら攪拌して成分を溶け出させる方法)と、水および希硫酸を用いた加熱処理という方法を使いました。原料と溶媒の比率は1対10と1対20(重量/容量)の2通りを設定しています。
得られた抽出物については、総ポリフェノール量、総フラボノイド量、抗酸化活性を測定し、さらにHPLC‐DADという分析装置で主要なポリフェノール成分の内訳を調べました。抗菌性はブロス微量希釈法(液体培地で濃度を段階的に薄めて細菌の増殖を見る方法)で評価し、抗菌の可能性を示した抽出物についてはタマネギの根を用いるAllium cepa試験で細胞遺伝学的な安全性、すなわち染色体や細胞分裂への悪影響がないかを確かめました。
主な報告結果
報告によると、最も高い値を示したのはアサイー種子の抽出物でした。1対10の条件で得られたエタノール抽出物(ASE)とメタノール抽出物(ASM)の総ポリフェノール量は、それぞれ100グラムあたり2,252.20ミリグラムと2,240.00ミリグラム(ガロ酸相当量、GAE)で、比較した中で最も高かったとされています。総フラボノイド量はASMが最も高く100グラムあたり1,112.31ミリグラム、抗酸化活性はASEが最も高く100グラムあたり25,661.90マイクロモル(トロロックス相当量)でした。1対10のASEで最も多く含まれていたポリフェノールはカテキンで、100グラムあたり29.86±0.64ミリグラムと報告されています。
抗菌活性が認められたのはASEとASMだけで、黄色ブドウ球菌に対しては殺菌的な作用、プロテウス・ミラビリスと緑膿菌に対しては増殖を抑える静菌的な作用が見られました。一方、安全性の評価では違いが出ています。ASMには遺伝毒性と細胞分裂を抑える作用が認められたのに対し、ASEは殺菌作用を示す濃度において細胞遺伝学的な変化が最も少なかったと報告されています。
この結果が示すこと
著者らは、アサイー種子のエタノール抽出物(ASE)が、高付加価値な製品に向けた有用成分の再生可能な供給源として有望であり、持続可能な廃棄物管理にもつながると結論づけています。
注目したいのは、同じ原料でも抽出に使う溶媒によって結果が分かれた点です。成分が多く取れて抗菌性を示すことと、生物学的に安全であることは自動的に両立するわけではなく、著者らは、生物活性と安全性を兼ね備えた抽出方法を選ぶことの重要性をこの研究が示していると述べています。
著者:Lucas Figueiredo Silva(Laboratório de Higiene de Alimentos e Bioprocessos (LaHiBio), Faculdade de Nutrição (FANUT), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)、Yasmin lobato Salgado(Faculdade de Farmácia (FACFAR), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)、Yanka Braga Palheta(Faculdade de Farmácia (FACFAR), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)、Marta Chagas Monteiro(Faculdade de Farmácia (FACFAR), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)、Ingryd Rodrigues Martins(Laboratório de Higiene de Alimentos e Bioprocessos (LaHiBio), Faculdade de Nutrição (FANUT), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)、Johnatt Allan Rocha de Oliveira(Laboratório de Higiene de Alimentos e Bioprocessos (LaHiBio), Faculdade de Nutrição (FANUT), Instituto de Ciências da Saúde (ICS) Universidade Federal do Pará (UFPA) Belém Pará Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lucas Figueiredo Silva, Yasmin lobato Salgado, Yanka Braga Palheta, et al. Comparative Valorization of Amazonian Fruit Wastes Reveals Açaí Seeds as a Promising Source of Antibacterial and Antioxidant Compounds. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71477. 原著ライセンス:CC BY.