「食事の質と心の健康は関係している」という話を耳にしたことがある人は多いかもしれません。しかし、実際に集団を対象に調べると、どの程度の割合の人がメンタルヘルスの不調を抱えていて、どのような要因と関連しているのでしょうか。今回紹介するのは、イラン・ロレスタン州に暮らす妊娠可能年齢の女性を対象に、うつ病・不安・ストレスの症状の頻度と、それらに関連する要因を調べた横断研究です。女性は妊娠・出産などライフイベントの影響も受けやすく、メンタルヘルスは公衆衛生上の重要な課題とされています。この研究は、そうした背景から生まれたものです。

どのように調べたのか

研究の対象は、20歳から50歳までのイラン人女性376名です。研究チームは、一般的な生活状況を尋ねる質問票に加えて、食事の内容を調べる食物摂取頻度調査票、身体活動量を評価する国際標準の質問票(IPAQ短縮版)、そしてうつ・不安・ストレスの症状を測定するための質問票(DASS-42)を用いました。また、体重や身長についてもデジタル体重計と身長計を使って実際に測定しています。そのうえで、メンタルヘルスの症状と、経済状況や食事の多様性、体格などの要因との関連を、統計的な手法(二項ロジスティック回帰分析)を用いて検討しました。

研究でわかったこと

まず頻度についてですが、調査対象となった女性のうち、うつ症状が47.6%、不安症状が52.4%、ストレス症状が38.3%に認められたと報告されています。半数前後の女性に何らかの症状がみられたことになり、この地域の女性においてメンタルヘルスの課題が広くみられることが示唆されています。

次に、これらの症状と関連する要因についてです。他の要因の影響を調整した分析では、経済的な豊かさを示す指標(ウェルスインデックス)が高いことと、食事の多様性が高いことが、うつ症状のリスクの低さと関連していたとされています。また、同居する世帯人数が多いことはより高い不安症状のリスクと、食事の多様性が高いことはより低い不安症状のリスクと関連していたと報告されています。さらに、体格が「過体重」に該当することはより高いストレス症状のリスクと、食事の多様性が高いことはより低いストレス症状のリスクと関連していたとされています。整理すると、うつ・不安・ストレスのいずれについても、食事の多様性が高いことは症状のリスクの低さと関連しているという結果が共通してみられた点が、この研究の注目すべきポイントといえます。

この研究を読むうえでの注意点

この研究はある時点での状況を調べた横断研究であり、「食事の多様性が高いから症状が少ない」のか、「症状が少ないから食生活が整いやすい」のか、原因と結果の向きを明らかにするものではありません。論文の著者らも、この関係をより深く理解するためには、より大規模な人数を対象とした、時間の経過を追う前向きコホート研究が必要だと述べています。あくまで一つの地域・集団を対象にした一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点に留意して読む必要があります。

まとめ

今回紹介した研究では、イランの妊娠可能年齢の女性を対象とした調査で、うつ・不安・ストレスの症状がそれぞれ半数前後という高い割合でみられたことが報告されました。そのうえで、経済状況や世帯人数、体格に加え、食事の多様性の高さが、これらの症状の少なさと関連する要因として挙げられています。食と心の健康の関係を考えるうえで一つの手がかりを与える研究ですが、著者ら自身が述べているとおり、さらなる研究による検証が待たれる段階にあるといえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:イラン・ロレスタン州の妊娠可能年齢女性におけるうつ病・不安・ストレスの有病率と関連要因:横断研究(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)