著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Current Treatment Options in Gastroenterology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
再発性急性膵炎に特化した栄養の指針が乏しい
急性膵炎は、膵臓に急に炎症が起こる病気で、消化器の病気による入院の主な原因の一つです。著者らによると、最初の急性膵炎の後、30%近くの患者で再発がみられます。このうち、症状や画像上の異常がいったん治まる期間をはさんで2回以上発作を起こし、慢性膵炎の所見がない状態は「再発性急性膵炎」と呼ばれます。
再発性急性膵炎は、膵炎が進行していく過程の中で独自の段階と位置づけられています。しかし、この段階に特化した栄養管理の推奨はほとんどありません。一方で、炎症を繰り返すと慢性膵炎へ進むリスクが高まります。そのため、低栄養や、膵臓が消化酵素を十分に出せなくなる「膵外分泌不全」、膵臓の障害による糖尿病(3c型糖尿病)に注意し続ける必要があります。
この総説は、急性膵炎と慢性膵炎の研究データを主な根拠として使い、再発性急性膵炎の患者で考慮すべき点を示しています。目的は、膵炎の経過全体を通じて栄養面の合併症に対応する臨床医に、実践的な指針を提供することです。
栄養状態を正しく評価する難しさ
著者らはまず、膵炎の炎症そのものが、通常の栄養評価の手がかりを狂わせると指摘しています。急性膵炎では体液が腹部などにたまりやすく、紹介された研究では、入院後48時間でたまった量の中央値が3.2リットルでした。体重から必要な栄養量を見積もる際には、体液の分を考慮しないと与えすぎにつながるおそれがあります。
血液検査でも注意が必要です。炎症に伴う全身の反応(急性期反応)によって、ビタミンや微量栄養素の値が変化します。このため、炎症の指標であるCRPを参考に値を解釈するか、急性期が過ぎるまで評価を待つよう勧めています。脂肪の吸収が悪い患者では必須脂肪酸が欠乏するリスクもあり、膵外分泌不全の患者全員に検査を行うよう推奨する学会の指針も紹介されています。
糖尿病の見逃しにも触れています。膵炎の症状で食事量が減っている間は高血糖が表に出にくく、ヘモグロビンA1cも初期には実態を反映しない場合があります。そのため、診断には医師が疑いを強く持つことが必要だとしています。
発作中の食事と栄養補給について報告された知見
軽症から中等症の急性膵炎について、著者らは現在の指針を紹介しています。それによると、24〜48時間以内に口からの食事を早めに始めることが勧められています。透明な流動食から段階的に固形食へ進める従来のやり方は、もはや推奨されていません。食事開始の遅れは、壊死した膵組織への処置が必要になるリスクが2.5倍高いことと関連していたと報告されています。また、膵臓を休ませる目的で脂肪を厳しく制限する考え方は時代遅れとされています。代わりに、少量ずつ回数を分けて適度に摂ることが勧められています。経口摂取が5〜7日を超えても不十分な場合は、栄養補助食品や、管を使った栄養補給の検討に進むべきだとしています。
重症の場合は、静脈から栄養を入れる方法よりも、管で腸に栄養を送る「経腸栄養」のほうが安全で効果的だとまとめています。経腸栄養は24〜72時間以内に早期に始めることが推奨されています。管の先端を胃に置く方法は、小腸まで入れる方法に比べて劣らないとされています。栄養剤は食物繊維を含まない標準的なもので良いとし、免疫を高める配合の栄養剤は現時点では推奨されないとしています。また、下痢が起きても、すぐに吸収不良のせいと決めつけず、薬剤や感染症など他の原因を確かめる重要性を強調しています。
再発予防と膵外分泌不全への対応
食事のパターンと再発との関係は、主に観察研究に基づいています。加工食品や赤身肉の多い食事は重症度の高さと、植物中心の食事は低さと関連していました。ある前向きの調査では、食事パターンの質が低い人ほど、再発、体重減少、消化器症状の持続と関連していました。ただし、因果関係を確かめた研究は少なく、食事への介入によって再発や慢性膵炎への進行を止められるかどうかは分かっていないとしています。高トリグリセリド血症(血中の中性脂肪が高い状態)が原因の場合には、中性脂肪を500mg/dL未満に保つこと、そして飲酒を避けることの重要性が述べられています。
膵外分泌不全は急性膵炎後によくみられる後遺症で、1年後も20〜35%程度の患者で続くと紹介されています。ただし、入院中は症状が膵炎そのものと重なるため、診断は難しいとされます。著者らは、リスクの高い患者や栄養目標を達成できない患者には、診断の確定を待たずに膵酵素補充療法を始める現実的な方法を提案しています。そのうえで、退院後に客観的な検査で膵機能を再評価し、回復していれば治療を中止するとしています。
この総説が示すこと
この総説は、急性膵炎の発作中には早めに栄養を確保することが安全とされ、過度な食事制限は勧められなくなっていることを整理しています。一方で、再発性急性膵炎の患者が退院後に長期的にどのような食事をとるべきかについては、根拠がまだ乏しいことを明らかにしています。現時点では、急性膵炎や慢性膵炎、関連する病気のデータを手がかりに、患者ごとに評価と調整を続けることが求められる、というのが著者らのまとめです。
著者:Carol Rees Parrish(GI Nutrition Support Specialist, Charlottesville, VA, 22911, USA)、Mitchell L. Ramsey(Division of Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition, College of Medicine, The Ohio State University Wexner Medical Center, 453 West 10th Avenue, Columbus, OH, 43210, United States of America)、Kristen M. Roberts(Division of Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition, College of Medicine, The Ohio State University Wexner Medical Center, 453 West 10th Avenue, Columbus, OH, 43210, United States of America)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carol Rees Parrish, Mitchell L. Ramsey, Kristen M. Roberts. Nutritional Management of Recurrent Acute Pancreatitis: Navigating Evidence, Uncertainty, and Clinical Decision-Making. Current Treatment Options in Gastroenterology 2026-10-13. DOI: 10.1007/s11938-026-00507-w. 原著ライセンス:CC BY.