この研究は、ヨルダン、イラク、サウジアラビア、カメルーン、チェコ、エジプトの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
食品由来の成分を組み合わせる研究
研究チームは、コーヒーに含まれるクロロゲン酸類と、乳由来のペプチドを組み合わせる反応を調べました。クロロゲン酸類はポリフェノールの一種で、ペプチドはアミノ酸がつながった分子です。研究の目的は、リンゴ果汁に含まれる酵素を利用して、これらの成分を結び付ける反応を進められるかを検討することでした。
着目したのは、リンゴの褐変にも関わるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)という酵素です。PPOはポリフェノールを酸化し、ペプチドなどと反応しやすい物質に変えます。著者らは、コーヒーとリンゴの成分を分析し、酵素の供給源として適したリンゴ品種や保存条件を調べたうえで、乳由来ペプチドとの反応を検討しました。
コーヒーの成分とリンゴの酵素を調べる
研究チームは、成分を分離して質量などから識別する分析法を使い、コーヒー生豆に含まれる主なクロロゲン酸関連成分を調べました。その結果、八つの主要な成分が確認され、中でも5-CQAと呼ばれるクロロゲン酸が最も多く検出されました。
リンゴは五つの品種の果汁を比較しました。クロロゲン酸の濃度が最も高かったのはボスコープでしたが、PPOの活性、つまり反応を進める働きが最も高かったのはブレーバーンでした。著者らは酵素活性を重視し、ペプチドとの反応にはブレーバーンの果汁を選びました。
保存条件の実験では、リンゴを異なる温度で一日保存してから搾汁し、その果汁をさらにマイナス20℃で保存しました。搾汁直後のPPO活性は、あらかじめマイナス20℃やマイナス80℃で凍結したリンゴの果汁で高く、果汁を二週間凍結保存した後も低下は小さかったと報告しています。著者らは、凍結によって細胞の膜が壊れ、酵素が果汁中に出やすくなった可能性を挙げています。
二つの反応条件でペプチドに変化
乳由来ペプチドにはBioZate1とグリコマクロペプチドの二種類を用いました。コーヒー生豆の熱水抽出液と混ぜ、pH9のアルカリ性にした条件と、リンゴ果汁を加えたpH4.7の条件で、それぞれ室温で24時間反応させました。
両条件で、反応液中に遊離しているクロロゲン酸類が減り、ペプチドの質量分析にも新しい信号が現れました。また、弱い相互作用で付着した成分を取り除くための処理後も、ペプチドに伴うクロロゲン酸類が検出されました。その量は、どちらのペプチドでもリンゴ果汁を用いた条件よりアルカリ性の条件で多く、アルカリ処理したBioZate1ではタンパク質1mg当たり14.95μg、グリコマクロペプチドでは10.14μgと報告されています。
食品由来の反応系として示されたこと
著者らは、これらの結果を、コーヒー由来のポリフェノールと乳由来ペプチドの結び付きや分子の変化を支持する証拠として位置付けています。ただし、遊離クロロゲン酸の減少には酸化や構造変化なども関わり、質量分析と成分分析だけでは、どこにどのような化学結合ができたかまでは確定できません。また、果汁中のPPOだけの寄与を、ほかの成分の作用から完全に分けた結果ではありません。
この研究は、コーヒー抽出液とリンゴ果汁を使った条件でも、乳由来ペプチドにポリフェノールとの相互作用を示す変化が生じることを報告しています。食品由来の酵素を利用した反応を検討するうえで、リンゴの品種や保存条件が重要であることも示しました。
著者:Bandar N. Hamadneh(Department of Human Nutrition and Dietetics, Faculty of Agriculture Ajloun National University Ajloun Jordan)、Entisar D. Mustafa(Food Science Department, College of Agriculture Tikrit University Tikrit Iraq)、Mohamed Alkafafy(Department of Biotechnology, College of Science Taif University Taif Saudi Arabia)、Ebtihal Khojah(Department of Food Science and Nutrition, College of Science Taif University Taif Saudi Arabia)、Bassem N. Samra(Department of Biology, College of Science Taif University Taif Saudi Arabia)、Daniel Eutyche Mbadjoun Wapet(National Advanced School of Engineering Universit'e de Yaound'e I Yaound'e Cameroon)、Mohamed Metwally Mahmoud(ENET Centre, CEET VSB—Technical University of Ostrava Ostrava Czech Republic)、Waleed Z. Badawy(Food Industry Technology Program, Faculty of Industrial and Energy Technology Borg Al Arab Technological University (BATU) Alexandria Egypt)、محمود خليل(Nutrition and Food Science Department, Faculty of Home Economics Menoufia University Shibin El Kom Egypt)、Mohamed Abdelbaset Salama(Agricultural Research Center Food Technology Research Institute Giza Egypt)、Mohamed Abdin(Agricultural Research Center Food Technology Research Institute Giza Egypt)、Mostafa Ali(Food Technology Department, Faculty of Agriculture Kafrelsheikh University Kafr Elsheikh Egypt)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bandar N. Hamadneh, Entisar D. Mustafa, Mohamed Alkafafy, et al. Conjugation of Coffee Phenolics With Milk Bioactive Peptides: Characterization of Coffee and Apple Phenolics and Evaluation of Polyphenol Oxidase as a Natural Biocatalyst. Food Science & Nutrition 2026-09-30. DOI: 10.1002/fsn3.72435. 原著ライセンス:CC BY.