貝の旨味といえばグルタミン酸、というイメージを持つ人は多いかもしれない。だがほたてがい 生のアミノ酸組成を見ると、少し違う顔が見えてくる。可食部100gあたりで最も多いアミノ酸はグリシン1800mgで、グルタミン酸は1700mgとわずかに少ない。差はたった100mgだが、この並びを見る限り、ほたての上品な味わいの正体をグルタミン酸だけに求めるのは、数字の上ではやや言い過ぎということになる。グリシンはほたての主要な旨み(呈味)成分のひとつとされており、ほたてのアミノ酸組成の中でグルタミン酸をわずかに上回っている点は、味わいを考えるうえで見逃せない手がかりといえる。

貝の旨味は一枚岩ではない

もっとも、貝の旨味成分はアミノ酸だけで語れるものではない。うま味には、こんぶに多いグルタミン酸、かつお節に多いイノシン酸など複数の成分が関わるとされる。ほたてのアミノ酸内訳がグリシン優位だったように、貝の味わいは複数の成分が重なり合って生まれている。今回のデータではアミノ酸以外の呈味成分の含有量は示されていないため、貝を食べたときに感じるコクの部分については、はっきりしたことは言えない。

あさり・しじみにも共通する特徴

あさり 生しじみ 生は、ほたてと並ぶ代表的な貝類だが、突出する栄養素の顔ぶれは少し異なる。しじみはビタミンB12が可食部100gあたり68µg、あさりも44.8µgと多く、ほたても11µgを含む。ビタミンB12はアミノ酸や核酸の代謝に関わり、赤血球の形成を助ける水溶性ビタミンとされる。加熱に比較的強い一方で汁に溶け出しやすいため、みそ汁や酒蒸しのように汁ごと食べる料理は理にかなっている。しじみはさらにを可食部100gあたり8.3mgと多く含む。あさりはヨウ素を可食部100gあたり56µg含む。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わるとされる。

下ごしらえと安全の要点

砂抜きの塩水濃度は、あさりでは3%が目安とされる一方、しじみなど他の貝は0.5%の塩水が基準になる。冷凍する場合は、この砂抜きを済ませてから行うことが必須とされる。砂抜き後のあさりは密閉容器で冷蔵なら2〜3日、水気をふき取って冷凍すれば3週間ほど保存できる。ほたてがいを殻つきで選ぶ・扱う際は、黒いウロの部分に貝毒があるため必ず取り除く必要がある。殻に艶があり、ワタが黒ずんでおらず、貝柱が大きいものを選ぶとよいとされる。

毎日の食卓への取り入れ方

ほたては1個(殻つき)で約200g、しじみは10個(殻つき)で約50g、あさりは10個(殻つき)で約80gが目安になる。しじみやあさりは具だくさんのみそ汁に、ほたては貝柱を酒蒸しやバター焼きにすると、汁ごと・身ごと成分を無駄なく味わえる。合わせる酒には清酒 普通酒もよく合う。清酒は可食部100gあたりぶどう糖2.5gを含む醸造酒で、ぶどう糖は脳など特定の組織の主要なエネルギー源となる単糖とされる。貝の旨味と酒の香りが響き合う組み合わせは、多くの人が経験的に知る取り合わせでもある。

ほたての味わいにグリシンが関わっていることを知ってから改めて味わうと、いつもの一皿が少し違って見えてくる。アミノ酸以外の呈味成分をはじめ、今回のデータに現れていない成分についても情報が加われば、貝の旨味の全体像はさらにはっきりするはずだ。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:e-ヘルスネット「鉄」(厚生労働省)