著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。
掲載誌:Algal Research
ライセンス: CC BY-NC 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
海藻は食物繊維や抗酸化成分など、体によいとされる物質を含むことで知られていますが、実際にそれらの成分を海藻から取り出す際には、どのような方法を使うかによって得られる量が大きく変わることがあります。オーストラリア産の海藻であるChaetomorpha linumについては、これまでこうした抽出成分の研究例が知られておらず、どの抽出技術がより多くの有用成分を回収できるのかも報告されていませんでした。今回紹介する研究は、この海藻を対象に、抽出方法の違いが得られる成分の量にどう影響するかを比較したものです。研究はカーティン大学(オーストラリア)の研究者らによって行われました。
研究チームは、マイクロ波を使う方法(MAE)、超音波を使う方法(UAE)、酵素を使う方法(EAE)、そして従来型の溶媒抽出法(CSE)という4つの抽出技術を比較しました。それぞれの方法で得られた抽出物について、多糖類の総量(TPS)、フェノール化合物の総量(TPC)、フラボノイドの総量(TFC)、そして抗酸化活性(DPPH法、ABTS法、ORAC法という3種類の測定方法で評価)を調べています。
抽出方法によって得意な成分が異なる
まず、抽出できた物質全体の量(抽出収率)を比べると、酵素を使ったEAEが28.9%と最も高く、次いで超音波を使ったUAEが26.1%、マイクロ波を使ったMAEが23.5%、従来法のCSEが17.5%という順でした。
ただし、成分の種類ごとに得意な方法は異なっていました。多糖類の量に着目すると、EAEが他の方法より統計的に有意に多く回収できており、UAEとMAEの間には差が見られませんでした。一方、フェノール化合物とフラボノイドについては、UAEとMAEの両方が他の方法より有意に多く抽出できていました。抗酸化活性についても、DPPH法とORAC法による評価ではUAEとMAEが高い値を示し、ABTS法による評価ではUAEが他の方法より有意に高い活性を示したと報告されています。
これらの結果から、研究チームは、フェノール化合物やフラボノイドを多く取り出したい場合にはUAEやMAEが適した方法であり、多糖類を多く取り出したい場合にはEAEがより効果的であると結論づけています。
この研究を読むうえでの注意点
この研究は、Chaetomorpha linumという特定の海藻を対象に、4つの抽出技術を実験室内で比較したものです。抽出物に含まれる成分量や抗酸化活性の測定値を比較したものであり、これらの抽出物を摂取した場合の健康への効果を示したものではない点に注意が必要です。また、今回の結果はこの海藻種における条件下での比較であり、他の海藻種や異なる条件でも同様の傾向になるとは限りません。一つの研究であり、結論が確定したわけではないことを踏まえて読む必要があります。
まとめ
今回の研究では、オーストラリア産の海藻Chaetomorpha linumから多糖類やフェノール化合物、フラボノイドといった成分を取り出す際に、抽出方法によって得られる量や種類に違いがあることが示されました。フェノール化合物やフラボノイドの回収には超音波やマイクロ波を使う方法が、多糖類の回収には酵素を使う方法が有効であることが報告されています。海藻の有用成分をどう効率よく取り出すかという実用的な課題に対して、具体的な比較データを提供する研究といえます。
著者:S. Nadanasabapathy(School of Molecular and Life Sciences, Faculty of Science and Engineering, Curtin University, Kent Street, Bentley, WA, 6102, Australia)、Ravi Fotedar(School of Molecular and Life Sciences, Faculty of Science and Engineering, Curtin University, Kent Street, Bentley, WA, 6102, Australia)、Dale Tilbrook(School of Molecular and Life Sciences, Faculty of Science and Engineering, Curtin University, Kent Street, Bentley, WA, 6102, Australia)、Ranil Coorey(School of Molecular and Life Sciences, Faculty of Science and Engineering, Curtin University, Kent Street, Bentley, WA, 6102, Australia)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):S. Nadanasabapathy, Ravi Fotedar, Dale Tilbrook, et al. Comparing various techniques for maximising the yield of bioactive compounds and antioxidants from Chaetomorpha linum (O.F. Müller) Kützing (1845). アルガル・リサーチ (2026). DOI: 10.1016/j.algal.2026.104873. 原著ライセンス: cc-by-nc.