カラギーナンという成分をご存じでしょうか。海藻から抽出される多糖類で、ゲル化(とろみを固める)作用や増粘作用、粘性を高める性質を持つことから、食品、医薬品、化粧品など幅広い産業で利用されている成分です。この身近な素材が、実際にどのように海藻から取り出されているのか、またその方法によって出来上がる製品の質がどう変わるのかは、あまり知られていません。今回紹介する研究は、カラギーナンの原料となる海藻「キリンサイ(Kappaphycus alvarezii)」を対象に、抽出方法の違いが収量と品質に与える影響を比較したものです。

研究でわかったこと

この研究では、スリランカのジャフナで45日間栽培された、褐色の形態を持つキリンサイを海藻原料として用いています。精製カラギーナンを取り出す方法として、従来から使われてきたCa(OH)2(水酸化カルシウム)をオートクレーブ処理する方法に加え、6%(w/v)濃度のCa(OH)2、6%(w/v)のKOH(水酸化カリウム)、6%(w/v)のNaOH(水酸化ナトリウム)という、合計4種類の抽出方法が比較されました。評価には、カラギーナンの収量のほか、赤外線を使った成分の分析(FTIR)、ゲルの強さ、水を保持する能力、そして色合い(明るさ・赤み・黄み)を示す数値が用いられています。

その結果、ジャフナで栽培されたキリンサイからは25%を超えるカラギーナンが得られ、なかでもKOHを用いた方法では37.20%という、他の3つの方法よりも統計的に有意に高い収量が記録されたと報告されています。また、FTIRによる分析では、4つの抽出方法で得られたカラギーナンはいずれも市販のカラギーナン試料と似た特徴を示した一方、845 cm⁻¹、925〜930 cm⁻¹、1220〜1260 cm⁻¹という特定の波長帯にわずかな違いが見られ、これは抽出方法によってカッパ型・イオタ型・ラムダ型と呼ばれる異なるタイプのカラギーナン成分の割合が異なることを示唆していると説明されています。

ゲルの強さについては、KOH法が最も高い数値(1745.86 g/cm²)を示した一方、従来のオートクレーブ法は最も低い数値(706.26 g/cm²)にとどまったとされています。水を保持する能力については、従来法とKOH処理を行った試料が最も高い値(それぞれ98.59%、97.42%)を示し、あわせて赤み・黄みを示す色数値も最も高かったと報告されています。一方で、明るさを示す数値については、4つの抽出方法の間で統計的に有意な差は見られなかったとのことです。これらの結果から、この研究では、6%KOHによる処理が、収量と物理化学的な性質の両面において他の方法より優れた精製カラギーナンを生み出すと結論づけられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、スリランカ・ジャフナで栽培された特定のキリンサイを用い、実験室レベルで4種類の抽出方法を比較した一つの研究です。ここで得られた収量やゲル強度などの数値は、使用した海藻の産地や生育条件、実験の条件に基づくものであり、他の産地や条件でも同様の結果が得られるとは限りません。また、この研究はカラギーナンという素材そのものの製造方法に関する比較であり、カラギーナンを含む食品の健康への影響について述べたものではない点にも留意が必要です。

まとめ

この研究では、スリランカ・ジャフナ産のキリンサイを用いて4種類のカラギーナン抽出方法を比較した結果、6%KOHによる処理が最も高い収量とゲル強度を示し、水保持能や色調とあわせて総合的に優れた抽出方法である可能性が示されました。研究チームは、この6%KOH法がスリランカ国内での高品質なカラギーナン生産の発展に役立つ可能性を指摘しています。今後、他の産地や条件での検証が積み重ねられることで、より確かな知見につながっていくことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:国内産キリンサイ(Kappaphycus alvarezii(Doty))からの精製カラギーナン抽出の最適化:収率と物理化学的品質の比較分析(セイロン・ジャーナル・オブ・サイエンス・2026年08月)