著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Food Chemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:皮の色だけでは分からない変化をとらえる
ジャガイモは低温で保管すると長持ちしやすくなります。一方で、低温によってイモの中の糖が増える「低温糖化(cold-induced sweetening)」が起こることがあります。論文の抄録によると、低温糖化は加工の際に有害な化合物ができやすくなる原因になります。
ただし、低温糖化が起きたジャガイモを、皮をむいていない状態の外側の色だけで見分けるのは難しいとされています。そこで研究チームは、イモを切ったり壊したりせずに低温糖化の程度を評価する方法として、ハイパースペクトルイメージングの活用を検討しました。ハイパースペクトルイメージングは、画像の各点について多数の波長の光の情報をまとめて記録する撮影技術です。なお、この紹介は論文の抄録の内容にもとづいています。
何を調べたか:保管温度と糖化の段階
研究チームは、ジャガイモを1℃、5℃、10℃の異なる温度で保管しました。さらに、リコンディショニングを行う条件と行わない条件を設けました。リコンディショニングは、一般に低温で保管したイモを比較的高い温度に移して一定期間置く処理を指します。そのうえで、イモの色と、イモに含まれる代謝物(体内の化学反応でできる物質)の変化を分析しました。
また、還元糖(糖の一種)の量の状況にもとづき、低温糖化の程度をCS0からCS3までの4段階に分類しました。そして、ハイパースペクトル画像の情報からこの段階を判定するために、「係数しきい値処理を組み合わせたエラスティックネット・ロジスティック回帰(ENLR-CT)」と呼ばれる統計的な分類モデルを用いました。これは、多くの波長の情報の中から判定に使う波長を絞り込みながら分類を行う手法です。
主な結果:低温で変化が進み、モデルは9割超を正しく分類
抄録によると、5℃以下の低温で保管すると、低温に関連する代謝物の量が増え、それに伴ってイモの果肉の褐変の度合いを表す指標も高くなりました。一方、リコンディショニングを行うと、これらは低下したと報告されています。
さらに、ENLR-CTモデルは、全体の波長のうち55.2%だけを使って、低温糖化の段階を92.6%の精度で分類できたと報告されています。
この研究が示すこと
研究チームは、この結果がハイパースペクトルイメージングによって、ジャガイモの品質を速く、しかも壊さずに監視できる可能性を示すものだとしています。外見だけでは判断しにくい保管中の内部の変化を、光の情報から段階に分けてとらえようとした点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Jong-Jin Park(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea; Department of Food Bioengineering, Jeju National University, Jeju 63243, Republic of Korea)、Hahyeong Yu(Department of Food Science and Technology, Chung-Ang University, Anseong 17546, Republic of Korea)、Gi-Un Seong(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Jeong-Seok Cho(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea; Department of Food Biotechnology, University of Science and Technology, Daejeon 34113, South Korea)、Gyuseok Lee(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Dae-Yong Yun(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Seul-Ki Park(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Jeong-Hee Choi(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Kee-Jai Park(Food Convergence Research Division, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea)、Jihyun Lee(Department of Food and Nutrition, College of Human Ecology, Seoul National University, Seoul 08826, Republic of Korea)、Jeong-Ho Lim(Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju-gun 55365, South Korea. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jong-Jin Park, Hahyeong Yu, Gi-Un Seong, et al. Assessment of cold-induced sweetening in stored potatoes using hyperspectral imaging and elastic-net logistic regression with coefficient thresholding. Food Chemistry 2026-09-08. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.151097. 原著ライセンス:CC BY.