妊娠中に何を食べるかは、母親自身の体調だけでなく生まれてくる赤ちゃんの成長にも関わると考えられています。ただし、これまでの研究の多くは特定の栄養素や「健康的な食事指数」への当てはまりを見るもので、実際に妊婦がどのような食べ方の組み合わせをしているのかを、データからそのまま浮かび上がらせるような研究は限られていました。ドイツ・ライプツィヒ大学の研究グループが、ドイツ児童青少年健康センター(DZKJ)ライプツィヒ・ドレスデン拠点などの所属研究者とともに、妊婦の食事の「型」を統計的に分類し、それが母親の状態や新生児の体格とどう結びついているかを調べた研究を、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション誌に発表しました。
この研究は、2011年から2025年にかけてドイツで実施されている「LIFE Child」という長期追跡コホート研究のデータを用いています。妊娠24週または36週の時点で食物摂取頻度調査票(FFQ)に回答した1404人の妊婦を対象とし、そのうち1196人については出生児のデータも収集されました。FFQでは直近4週間の食品摂取頻度を「食べない」から「1日4回以上」までの選択肢で尋ね、個々の食品項目についてまず階層的クラスタリングという統計手法で似た者同士をグループ化しました。その結果、パン系の食事、魚、主食類、肉、スナック、乳製品、加工食品、健康的な朝食、野菜+という9つの食品クラスターが抽出されています。
浮かび上がった4つの食事パターン
次に、この9つの食品クラスターの摂取頻度をもとに再度クラスタリングを行い、妊婦全体を4つの食事パターンに分類しました。バランス型(C1、576人)、伝統的パン食型(C2、320人)、超加工食品多め型(高UPF、C3、179人)、野菜豊富型(C4、329人)です。伝統的パン食型はパン系の食事や魚、主食の摂取頻度が高く、高UPF型は超加工食品やスナック、乳製品、加工食品の摂取が目立ち、野菜豊富型は野菜、果物、ナッツ、種子、植物油の摂取頻度が高いという特徴が見られました。バランス型は特定の食品群に偏らない摂取プロフィールでした。なお超加工食品は、NOVA分類という国際的な食品分類法において「食品由来の成分や添加物を主体とした工業的な調合品で、そのままの食材をほとんど含まない」ものと定義づけられているものです。
この4パターンと母親の特徴を比べたところ、高UPF型の女性は他のグループより年齢が若く、社会経済的地位(SES)のスコアが最も低く、妊娠前BMIと妊娠中の体重増加量が最も高いという傾向が示されました。一方、野菜豊富型の女性は年齢が高めでSESスコアが最も高く、妊娠前BMIは最も低いという結果でした。伝統的パン食型は経産婦(すでに子どもがいる女性)の割合が最も高い傾向も見られています。
新生児の体格との関連
新生児については、野菜豊富型の母親から生まれた子どもは出生時の在胎週数が他のパターンより長い傾向が見られ、また出生時の身長(在胎週数で補正した標準偏差スコア)は伝統的パン食型と比べて有意に高いという結果でした。研究チームは母親の年齢や教育歴で調整した分析も行っており、在胎週数との関連は調整後に弱まったものの、身長の高さについては伝統的パン食型やバランス型と比べて統計的に意味のある差として残ったとしています。一方、出生体重そのものについてはパターン間で明確な差は見られませんでした。また、高UPF型の母親では在胎週数に対して体重が適正範囲に収まる新生児(AGA)の割合が他のパターンより低い傾向がありましたが、この違いは統計的に有意ではなかったと報告されています。
この研究を読むうえでの注意点
著者らは複数の限界を挙げています。まず食事の評価は妊娠中の1時点のFFQのみに基づいており、妊娠経過に伴う食事の変化や妊娠前の食習慣までは捉えきれていない可能性があります。また、母親の年齢や教育歴以外にも、ストレスや睡眠といった測定されていない生活習慣要因が結果に影響している可能性(残余交絡)は排除できないとしています。対象がドイツの女性に限られるため、異なる食文化や社会経済的背景を持つ集団への一般化には注意が必要である点も述べられています。加えて、この研究では非常に多くの統計的検定を探索的に行っており、多重比較の補正は行っていないため、個々のp値よりも関連の方向性や一貫性を重視して解釈すべきだとしています。コホート研究という観察データの性質上、食事パターンと出生時の指標との間に因果関係があるとは言えない点にも注意が必要です。
この研究では、ドイツ以外の国のコホート研究についても言及されており、オーストラリアのENDIA研究やイタリアのMAMI-MEDコホート、ノルウェーやデンマークの研究などでも、加工食品の多い食事パターンや野菜中心の食事パターンと似た関連が報告されているとされています。ただし本研究の要旨・本文には日本の研究機関や日本の食習慣についての言及は見当たりませんでした。
まとめ
今回の研究は、妊婦の食事を統計的にグループ分けする手法によって、超加工食品の多い食事パターンが母親の年齢の若さや社会経済的地位の低さ、妊娠前BMIの高さ、体重増加量の多さと関連し、野菜豊富な食事パターンがその逆の傾向と関連していたことを示しました。新生児の体格に関する関連は概して効果の大きさが小さく、慎重な解釈が必要だと著者らは述べています。あくまで一つのコホート研究による観察結果であり、因果関係を証明するものではないため、今後独立した集団での確認が必要とされています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Tahnee Zacher, Rebecca Opel, Carolin Sobek, et al. From mother’s plate to newborn’s health: dietary patterns and pregnancy outcomes—a cohort study. ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション (2026). DOI: 10.1038/s41430-026-01817-z. 原著ライセンス: cc-by.