年齢を重ねると、歩く速さがゆっくりになったり、椅子から立ち上がって歩き出す動作に時間がかかったりすることがあります。こうした身体機能の変化は、健康的に年を重ねる(ヘルシーエイジング)うえで注目されているテーマの一つです。近年、薬に頼らない方法として、食品由来の機能性成分が身体機能を支える可能性について研究が進められています。
今回紹介するのは、東南アジアなどで使われてきた生姜科の植物「バンレー(Zingiber purpureum)」の根茎から得られる抽出物(BRE)に関する研究です。BREには「バングレン」と呼ばれるフェニルブテノイド二量体という成分が含まれており、運動をしたときのような作用(運動模倣作用)や神経の働きに関連する作用、さらに歯周病の原因菌に対する抑制作用が報告されているとのことです。ただし、実際に人を対象とした対照試験による検証はこれまで限られていたそうです。
研究でわかったこと
この研究では、地域で生活する高齢者90名を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われました。参加者はBREを1日150mg摂取するグループ、1日300mg摂取するグループ、そして有効成分を含まないプラセボ(偽薬)を摂取するグループに分けられ、6か月間継続して摂取しました。
主要な評価項目とされたのは、歩行速度と「Timed Up and Go(TUG)」というテストの結果でした。TUGは、椅子から立ち上がって少し歩き、また椅子に戻って座るまでの時間を測る、身体機能を評価する代表的な方法です。結果として、150mg・300mgのどちらの用量のBRE摂取群も、プラセボ群と比較して歩行速度とTUGの成績が有意に改善したと報告されています。
また、副次的・探索的な評価項目として、BRE摂取群ではエネルギー摂取量の増加、塩味を感じる感覚(塩味感受性)の改善、そして口腔内における歯周病原細菌の一種であるP. gingivalis(ジンジバリス菌)の発現量の低下も認められたとのことです。これらの結果から、著者らはBREの摂取が臨床的に意味のある改善をもたらす可能性を示唆していると述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまで一つの臨床試験の結果であり、これだけでBREの効果が確定したというわけではありません。要旨で示されている情報は、歩行速度・TUGといった身体機能の指標、エネルギー摂取量や塩味感受性、口腔内細菌に関する変化にとどまり、それ以外の効果については述べられていません。今後、さらに研究が積み重ねられることで、より詳しい実態が明らかになっていくことが期待されます。
まとめ
今回紹介した研究では、バンレー根茎抽出物を6か月間摂取した地域在住高齢者において、歩行速度やTUGテストの成績の改善、エネルギー摂取量の増加、塩味感受性の改善、口腔内の歯周病原細菌の発現低下が認められたと報告されています。身体機能と口腔内環境という異なる切り口から得られたこれらの結果は興味深いものですが、一つの研究であることを踏まえ、今後の研究の広がりにも注目していきたいところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:バンレー(Zingiber purpureum)根茎抽出物が地域在住高齢者の身体機能と口腔内細菌叢に及ぼす効果:二重盲検プラセボ対照試験(ジャーナル・オブ・ファンクショナル・フーズ・2026年07月)