アレルギー疾患と聞くと、花粉やダニ、ハウスダストなど環境中の物質を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし近年、食事の内容がアレルギー疾患のリスクと関係しているのではないか、という研究が世界各地で進められています。食べ物に含まれる栄養素は、体内の酸化ストレスや炎症反応、免疫の働きに影響を与える可能性があると考えられているためです。とはいえ、どの栄養素がどのアレルギー疾患とどう関係するのかについては、これまでの研究結果が一貫しておらず、特にアジアの成人を対象にした知見は限られていました。今回紹介する論文は、韓国の大規模な国民健康調査のデータを用い、喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎という3つのアレルギー疾患と、28種類もの栄養素との関連を幅広く調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、韓国国民健康栄養調査(KNHANES)の2016年から2023年までのデータを用い、18歳以上の成人37,808人を対象に横断的な解析が行われました。喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎については、医師による診断歴を標準化された質問票で確認しています。食事の状況は24時間思い出し法という方法で聞き取られ、そこから1日あたりの28種類の栄養素の摂取量が算出されました。各栄養素の摂取量は必要に応じて変換・標準化したうえで、年齢や生活習慣などの要因を段階的に調整した統計モデル(調査の重み付けを考慮したロジスティック回帰)によって、それぞれのアレルギー疾患との関連が検討されています。また、28種類もの栄養素を同時に調べる際に生じやすい偽陽性(本当は関連がないのに、たまたま統計的に有意に見えてしまうこと)を防ぐため、多重検定の補正(FDR補正、q値<0.05)も行われました。
その結果、すべての調整要因を考慮した最終的なモデルにおいて、食物繊維・カリウム・マグネシウムの摂取量が多いほど、喘息のオッズ(かかりやすさの指標)が低い傾向が見られ、この関連は多重検定補正後も統計的に有意でした。摂取量が1標準偏差増えるごとのオッズ比はおよそ0.80から0.90の範囲だったと報告されています。一方、アレルギー性鼻炎については逆の傾向で、総脂質・ビタミンE・リボフラビン・カリウムの摂取量が多いほどオッズが高いという関連が見られ、こちらも多重検定補正後に有意でした(オッズ比はおよそ1.05から1.15)。なお、カリウムは喘息では摂取量が多いほどリスクが低い方向、アレルギー性鼻炎では逆に高い方向の関連が示されており、疾患によって同じ栄養素でも関連の向きが異なる結果となっています。アトピー性皮膚炎については、多重検定補正の基準を満たす栄養素は見つからなかったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点での食事の摂取量と、過去に医師から診断されたことがあるかどうかを同時に調べた横断研究です。そのため、「その栄養素をたくさん摂ったから、その後アレルギー疾患になった(あるいはならなかった)」という時間的な前後関係や因果関係までを証明するものではありません。論文の著者らも、これらの結果は今後の前向き研究(時間の経過を追って調べる研究)で優先的に検証すべき対象を絞り込むうえで参考になる、という位置づけで述べています。また、今回有意な関連が確認されたのは28種類の栄養素のうちの一部にとどまり、しかも関連の向きが疾患ごとに異なっていたことから、食事とアレルギー疾患の関係は一様ではなく、疾患ごとに個別に考える必要があることがうかがえます。一つの横断研究の結果であり、これをもって特定の栄養素の摂取がアレルギー疾患の予防や改善につながると結論づけられるものではない点に注意が必要です。
まとめ
今回紹介した研究では、韓国の成人約3万8千人のデータをもとに、28種類の栄養素と喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎との関連が幅広く調べられました。食物繊維・カリウム・マグネシウムの摂取量は喘息のオッズの低さと、総脂質・ビタミンE・リボフラビン・カリウムの摂取量はアレルギー性鼻炎のオッズの高さと、それぞれ関連していたことが示されましたが、アトピー性皮膚炎では明確な関連は見られませんでした。食事とアレルギー疾患の関係は疾患ごとに異なる可能性があり、今後さらに詳しい研究が期待される分野だといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:韓国成人における喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の栄養素全体との関連:KNHANES 2016–2023の横断解析(サイエンティフィック・リポーツ・2026年05月)