この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Geography and sustainability

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

温室(ビニールハウスなどの施設)を使う農業は、温度や湿度といった環境を細かく制御することで、野菜や果物を一年を通して安定的に供給する役割を担っています。一方で、その環境への影響と経済的なコスト、そして差し引きで得られる便益を一体として評価した研究は、これまで多くありませんでした。

この研究チームは、中国の温室農業について、環境面と経済面の実態を体系的に評価することを目的としました。

何を、どのように調べたか

著者らは、中国の主要な9つの農業地帯を対象に、土壌の採取と分析、農家へのアンケート調査、統計資料という複数の情報源を組み合わせたデータを用いています。この資料をもとに、温室での栽培と露地(屋外の畑)での栽培を比較し、収量、生産コスト、土壌の状態、そして炭素排出の強さ(生産量あたりの排出量)を評価しました。取り上げられた作物はトマト、ネクタリン、ブドウです。

報告された主な結果

収量については、温室栽培は露地栽培の1.04〜1.77倍だったと報告されています。ただし総生産コストも露地の2.19〜3.41倍に達しており、収量の増加幅を上回る負担がかかっていました。

土壌にも共通した変化がみられました。中国の温室土壌では酸性化と養分の蓄積が広く確認され、温室のpHは露地の対照区より0.25〜3.05単位低い値でした。有機物含量の増加はわずかで30 g/kg未満にとどまる一方、リンとカリウムは温室土壌で富化していたとされています。

炭素排出の強さは、トマト、ネクタリン、ブドウのいずれでも温室栽培のほうが露地栽培より2.40〜6.72倍高いという結果でした。最も高かったのはネクタリンの温室で、主な要因はプラスチックマルチへの強い依存であり、これだけで総排出量の64.39%以上を占めていました。トマトとブドウの温室では農薬の使用とプラスチックフィルムの消費という二つの負荷が重なり、この両者で排出量の80%以上を占めていたと報告されています。

この研究が示すこと

著者らの評価は、温室農業が確かに収量を高める一方で、コスト、土壌の酸性化と養分の偏り、そして生産量あたりの炭素排出という面で露地栽培より大きな負担を伴っていることを、実測データに基づいて示しました。とくに、排出の大部分がプラスチック資材や農薬といった特定の投入物に集中している点は、どこに改善の余地があるかを具体的に指し示しています。

論文は、この結果を、中国の温室農業を効率重視かつ環境に配慮した形へ転換していくための実証的な基礎資料、そして意思決定の参考として位置づけています。

著者:Yan Sun(School of Public Administration, Hohai University, Nanjing 211100, China)、Zhanbin Luo(School of Public Administration, Hohai University, Nanjing 211100, China)、Jing Ma(School of Public Administration, Hohai University, Nanjing 211100, China)、Yingnan Zhang(School of Public Affairs, Zhejiang University, Hangzhou 310058, China)、Fu Chen(School of Public Administration, Hohai University, Nanjing 211100, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yan Sun, Zhanbin Luo, Jing Ma, et al. Assessing environmental and economic costs-benefits of greenhouse agriculture in China. Geography and sustainability 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.geosus.2026.100547. 原著ライセンス:CC BY.