著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
米と一緒に炊きにくい穀物をどう扱うか
ハダカオオムギ(青稞)は、殻が実から簡単に外れる大麦の一種です。中国の青海・チベット高原などで古くから主食として食べられてきました。たんぱく質や食物繊維が多く、水溶性食物繊維のβ-グルカンや、ポリフェノール、フラボノイドといった成分も含んでいます。一方で、果皮が硬くでんぷんの粒が密に詰まっているため、炊くのに時間がかかります。白米と一緒に炊くと、米が炊き上がってもハダカオオムギは十分に糊化しない、という問題があります。糊化とは、でんぷんが水と熱で柔らかく変化することです。
この問題への対策として、あらかじめでんぷんを部分的に糊化させておく「予備糊化」という加工があります。ただしハダカオオムギの有用成分には、水に溶けやすいものや熱に弱いものが多く、加工の途中で失われるおそれがあります。研究チームは、予備糊化ハダカオオムギ米の製造工程のうち、水を含ませる工程と乾燥工程に注目しました。食感や風味を良くしつつ成分をできるだけ残せる条件を探すことが、この研究の目的です。
水の含ませ方と乾燥条件を比べる
材料には康定産の黒いハダカオオムギが使われました。著者らはまず、水に浸した粒が時間とともにどれだけ吸水するかを測りました。吸水は最初の1〜3時間で速く進み、4時間を過ぎると緩やかになりました。この結果から、浸す時間の上限は4時間とされました。
次に、水の含ませ方が比較されました。一つは、吸水の推移に合わせて必要な量の水を与え、それを二段階で行う「浸潤」という方法です。もう一つは、粒を水に完全に沈める従来の「浸漬」です。二段階の浸潤では、一段目と二段目の時間をそれぞれ1〜4時間の範囲で変えました。評価には、炊いたときの糊化の程度、専門的な背景を持つ10人のパネルによる官能評価(色・香り・味・噛みごたえ・粘弾性)、機器で測る硬さなどの食感を用いました。
さらに、最も良かった浸潤条件をもとに、熱風乾燥の温度を80〜160℃の5段階、時間を温度ごとに3段階変えて比較しました。比較した項目は、ポリフェノール、フラボノイド、β-グルカン、還元糖の含有量、電子舌・電子鼻による味と香りの分析、DPPHやABTSを使ったラジカル消去能(試験管内で抗酸化力を見る指標)です。
二段階浸潤4時間と低めの温度での乾燥が良好
論文によると、二段階目の浸潤を4時間行った条件で、硬さと噛みごたえが最も小さくなりました。噛みごたえは、一段階目の浸潤1時間の条件に比べて約59%低下しました。乾燥後の比較でも、この条件は糊化度82.61%、官能評価74点となりました。従来の浸漬(79.27%、68.4点)や、処理していない原料(70.37%、62.6点)を上回っています。成分の保持でも浸漬より優れており、ポリフェノール130.73mg/100g、フラボノイド50.01mg/100g、β-グルカン2.96%が残りました。著者らは、浸潤のほうが水に溶ける成分の流出を抑えられたと報告しています。
乾燥条件については、80〜100℃で90〜120分乾燥した場合に、官能評価と食感が最も良くなりました。この条件では成分も最も多く残り、ポリフェノール128.46mg/100g、フラボノイド45mg/100g、β-グルカン3.1%でした。還元糖は80℃・120分で482.84mg/100gでした。DPPHとABTSのラジカル消去能もこの条件で最も高くなりました。一方、120℃以上で乾燥すると、これらの成分が大きく減り、抗酸化力も低下したと報告されています。
加工条件の目安を示した研究
研究チームは、二段階浸潤を4時間行い、その後80〜100℃で90〜120分乾燥する組み合わせが、加工の効率と、食味・栄養成分の保持をうまく両立させると結論づけています。この研究は、ハダカオオムギを米と一緒に手軽に炊ける形に加工する際に、水の与え方と乾燥温度が仕上がりと成分の残り方を大きく左右することを示しました。そのうえで、具体的な条件の目安を提示しています。
原著論文の著者・所属:Wenwen Lv(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Yi Zhang(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Maoling Tan(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Yanan Cao(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Yuanhang Ren(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Jian Li(Ganzi Academy of Agricultural Sciences, Kangding 626000, China)、Lianxin Peng(Key Laboratory of Coarse Cereal Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Sichuan Province Engineering Technology Research Center of Coarse Cereal Industrialization, School of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wenwen Lv, Yi Zhang, Maoling Tan, et al. Optimization of Infiltration and Drying Processes for Pre-Gelatinized Hulless Barley Rice: Effects on Quality, Texture, and Bioactive Compound Retention. Foods 2026-09-29. DOI: 10.3390/foods15193480. 原著ライセンス:CC BY.