この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ブラジルのセラード地域に自生する果実アラチクム(Annona crassiflora)は、生物活性成分に富む一方で傷みやすい原料です。研究チームは、こうした果実を扱いやすい粉末に加工する手法として噴霧乾燥に着目しました。噴霧乾燥とは、液体を細かい霧にして熱風の中へ送り、水分を飛ばして粉末を得る乾燥方法です。

論文によれば、噴霧乾燥で得られる粉末の品質、生物活性成分の安定性、消化管での放出のされ方は、加工条件やキャリア素材(乾燥を助け粉末の形を保つために加える担体成分)の選択、供給液の調製方法に左右されます。そこで著者らは、アラチクム果汁の噴霧乾燥について、マルトデキストリンとホエイタンパク質濃縮物(WPC)をキャリア素材に用いた条件を評価しました。

何をどう調べたか

著者らは、少ない試験回数で複数の条件を効率よく比べるための実験計画法である田口法のL9計画を適用しました。検討した因子は、入口空気温度(100、125、150℃)、マルトデキストリン濃度(15%、30%、45%)、WPC濃度(0.5%、5%、10%)の3つです。あわせて、供給液の調製を機械撹拌で行うか、プローブ式超音波処理で行うかを「ノイズ因子」(結果のばらつきをもたらす可能性のある要因として、あえて計画に組み込む条件)として含めました。

得られた粉末については、加工特性、色、生物活性成分の含有量、抗酸化に関する応答、さらに試験管内で消化過程を模した in vitro 消化における放出とバイオアクセシビリティ(消化後に消化液中へ遊離し、体に取り込まれうる状態になった割合)が調べられました。

主な報告結果

論文の報告では、すべての粉末が低い水分含量(3.99%〜6.87%)と低い水分活性(0.160〜0.214)を示し、溶解性は71.52%〜82.18%と高い値でした。

条件のうち、125℃・マルトデキストリン30%・WPC10%で作られたT5は、粉末回収率(30.75%)、総フェノール含量(1925.94 mg GAE/100 g)、総カロテノイド含量(64.78 mg/100 g)、アスコルビン酸含量(7.09 g/100 g)のいずれでも最も高い値を示したと報告されています。一方、ABTSラジカル消去活性が最も高かったのはT3(96.16%)でした。

in vitro 消化の後では、T5において総フェノール化合物のバイオアクセシビリティが95.65%、ABTS応答が88.55%、アスコルビン酸が95.98%と高い値を示したことが報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、田口法にもとづく工程評価、供給液の調製方法に対する頑健性、そしてマルトデキストリンとWPCを組み合わせたキャリアという要素をあわせることが、加工上の安定性を備えたアラチクム果汁粉末を作るうえで有効な戦略であると結論づけています。

傷みやすい在来果実を扱いやすい形に変える工程を、限られた試験回数で体系的に見定めた点に、この研究の意味があります。

著者:Jhenifer Cristina Carvalho Santos(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)、Amanda Aparecida de Lima Santos(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)、Gabriela Fonsêca Leal(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)、Matheus de Souza Cruz(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)、Marcelo Angelo Cirillo(Department of Exact Sciences Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)、Cassiano Rodrigues de Oliveira(Department of Food Science Federal University of Viçosa (UFV) Rio Paranaíba Minas Gerais Brazil)、Letícia Fernandes de Oliveira(Centro Oeste Campus Federal University of São João del‐Rei Divinópolis Minas Gerais Brazil)、Jefferson Luiz Gomes Corrêa(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Minas Gerais Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jhenifer Cristina Carvalho Santos, Amanda Aparecida de Lima Santos, Gabriela Fonsêca Leal, et al. A Taguchi Approach Applied to Spray Drying of Araticum Juice Using Whey Protein–Maltodextrin Mixtures and Assessment of In Vitro Gastrointestinal Release and Bioaccessibility. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71421. 原著ライセンス:CC BY.