この研究は、ケニアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ソルソップ(トゲバンレイシ、学名Annona muricata)は白い果肉をもつ熱帯果実です。水分が多く傷みやすいため収穫後の損失が大きいとされ、研究チームは、乾燥させて保存性を高めた加工品である「フルーツレザー」に着目しました。フルーツレザーとは、果肉をすりつぶしたピューレを薄く広げて乾かし、シート状にした菓子のような食品です。
論文によれば、これまでのソルソップのフルーツレザー研究は主に果肉だけを使っており、皮と種は加工の副産物として捨てられてきました。しかし著者らが引用する先行研究では、皮や種のほうが食物繊維や脂質、ポリフェノールなどの機能性成分を多く含むと報告されています。そこで本研究は、果肉の一部を皮と種の粉末で置き換えた「果実まるごと」のフルーツレザーをつくり、その成分・機能性成分・味の受け入れられ方がどう変わるかを調べることを目的としました。
何をどのように調べたか
研究チームはケニアで購入した完熟果実から皮・種・果肉を分け、皮と種をそれぞれ乾かして粉末にしました。乾燥には、太陽光と補助的な熱源を組み合わせて天候に左右されにくくした「ハイブリッド太陽熱乾燥機」を用いています。
配合は4種類です。果肉100%の対照区に加え、果肉の乾燥重量ベースでの割合を90%、80%、70%に下げ、代わりに種粉末と皮粉末をそれぞれ5%ずつ、10%ずつ、15%ずつ加えた3つの試作品(T1〜T3)を作りました。これらを55〜62℃で乾燥させ、水分含量12.44〜13.11%のシートに仕上げています。得られた製品について、たんぱく質・脂質・食物繊維などの成分分析、pHと酸度、表面の色、総ポリフェノール量・総フラボノイド量・抗酸化活性の測定を行いました。さらに、大学の教職員と学生からなる45名のパネリストが、色・味・香り・食感・噛みごたえ・全体の好ましさを9段階で、購入意向を5段階で評価しました。
報告された主な結果
皮と種の粉末を増やすほど、栄養成分は明確に変化したと報告されています。粗たんぱく質は1.77から3.16 g/100 g、粗繊維は1.70から5.43 g/100 g、粗脂肪は0.64から1.94 g/100 gへと有意に増加しました。一方で炭水化物は82.45%から76.89%へ減少しています。著者らは、炭水化物が差し引き法で算出されるため、他の成分が増えたことによる相対的な減少という側面もあると説明しています。
機能性成分も増加しました。総ポリフェノール量は111.13から128.53 mg GAE/100 g、総フラボノイド量は78.63から99.93 mg QE/100 gに上昇しています。抗酸化活性の指標であるDPPHのIC₅₀値は202.08から121.11 µg/mLへ低下しました。IC₅₀とは、DPPHという試薬のラジカルの半分を消去するのに必要な試料の濃度のことで、少ない量で済むほど抗酸化力が高いことを意味します。つまりこの低下は、抗酸化活性が高まったことを示します。
見た目と味では傾向が分かれました。置換量が増えるにつれて明度は52.55から38.60へ下がり、褐変の度合いを示す褐変指数は75.05から233.50へ上昇しています。官能評価では、全体の好ましさはいずれの試作品も許容範囲にとどまりましたが、果肉の割合が最も高いものが最高点を得ました。購入意向については9.6〜31.3%の低下がみられ、果肉の少ないものほど低い評価となっています。
この研究が示すこと
著者らは、この研究が果肉だけでなく皮や種を含む果実全体を用いてフルーツレザーを作れることを示したものだと位置づけています。栄養面と機能性成分の面では改善がみられた一方、色は濃くなり、購入意向は下がるという明暗が同時に報告されました。
捨てられていた加工副産物を食品として活かす道筋と、それに伴う見た目や嗜好上のトレードオフ。その両方を具体的な数値とともに示した点が、この報告の内容です。
著者:Daniel Gakuha Wahome(Institute of Food Bioresources and Technology, Dedan Kimathi University of Technology, P.O. Box 657-10100, Nyeri, Kenya)、Daniel Njoroge(Institute of Food Bioresources and Technology, Dedan Kimathi University of Technology, P.O. Box 657-10100, Nyeri, Kenya)、Amos Kipkemoi Ronoh(Institute of Food Bioresources and Technology, Dedan Kimathi University of Technology, P.O. Box 657-10100, Nyeri, Kenya)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daniel Gakuha Wahome, Daniel Njoroge, Amos Kipkemoi Ronoh. Physicochemical, bioactive, and sensory properties of hybrid solar-dried soursop (Annona muricata) whole fruit leathers. Food Nutrition 2026-08-25. DOI: 10.1016/j.fnutr.2026.100083. 原著ライセンス:CC BY.