著者の所属・活動拠点の国は、ケニアです。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
生後6か月から23か月の乳児にとって、さまざまな種類の食品を食べることは、健やかな成長に欠かせない要素とされています。ケニア東部のキトゥイ郡は、乾燥・半乾燥地帯に位置します。雨が不安定で、食料不安や乳幼児の栄養不良が課題になっている地域です。
この地域には、ミレットやソルガムなどの穀物、ササゲや緑豆などの豆類、キャッサバやサツマイモなどのいも類、そしてクモソウ(スパイダープラント)、アフリカンナイトシェード、ヒユナといった葉物野菜など、土地に根付いた「在来食品」があります。在来食品は地域の気候に適応しやすいとされています。一方で、乳児の食事にはあまり取り入れられていないことも指摘されてきました。
著者らは、乳児の食事にどれだけ多様な食品群が含まれているかを調べました。あわせて、食事を決める立場にある母親が在来食品をどう受け止めているか、その受け止め方が乳児の食事とどう関係しているかを明らかにしようとしました。
何を調べたか
研究チームは2024年7月から10月にかけて、キトゥイ郡中央部の郡立病院で母子保健クリニックに通う母親と、生後6〜23か月の乳児402組を対象に調査を行いました。調査は母親への対面インタビューの形で実施されました。
食事の多様性は、乳児が前日の昼と夜に食べたものを母親に尋ね、7つの食品群のうちいくつを食べたかを数えて点数化しました。7つの食品群は、穀物・いも類、豆類・ナッツ類、乳製品、肉・魚類、卵、ビタミンAの多い果物・野菜、その他の果物・野菜です。4群以上を食べていれば、最低限の多様性を満たすと判断されます。
在来食品については、次の5つの点が食事に取り入れるかどうかに影響するかを母親に尋ねました。乳児が好んで食べるか、費用が高いか、栄養があり健康に良いと思うか、手に入りやすいか、調理が簡単か、の5点です。そのうえで、これらの受け止め方と食事の多様性との関連を統計的に分析しました。
主な結果
乳児の食事の多様性スコアは、7点満点で平均2.47と低いものでした。前日24時間に4つを超える食品群を食べていた乳児は30.3%にとどまったと報告されています。すべての乳児が穀物・いも類を食べていた一方、豆類などを食べていたのは36.1%、乳製品は7.0%、肉・魚類は1.2%でした。ビタミンAの多い果物・野菜は3.7%、その他の果物・野菜は5.0%で、卵を食べた乳児はいませんでした。
在来食品について、乳児が好んで食べると答えた母親は36.6%でした。栄養があり健康に良いと考えていた母親は59.2%でした。一方、94.5%が在来食品は高価だと答え、手に入りやすいと答えたのは4.7%、調理が簡単と答えたのは17.4%にとどまりました。
分析の結果、食事の多様性は、乳児が在来食品を受け入れるかどうか、栄養面の利点の受け止め方、入手のしやすさ、調理のしやすさと統計的に有意に関連していました。さらに食品群ごとの分析では、在来食品を乳児の食事に取り入れるかどうかに関わる要因が報告されています。乳児の受け入れは豆類や野菜で、費用は豆類・野菜・果物・動物性食品で関わっていました。栄養面の受け止め方は果物や動物性食品で、入手のしやすさは穀物・いも類・野菜・果物で、調理のしやすさは果物で関わっていました。
この研究が示すこと
在来食品が身近な地域であっても、乳児の食事は主に穀物やいも類に偏っていることが、この研究で示されました。母親の選択には、子どもの好み、費用、栄養についての考え、入手のしやすさ、調理の手間が関わっていることもうかがえます。
著者らはこの結果をもとに、二つの方向の取り組みが在来食品の利用を後押しし得ると述べています。一つは、母親向けの栄養教育、離乳食のレシピ紹介、調理実習といった取り組みです。もう一つは、良質な種子や水の確保手段の提供など、生産と入手しやすさを高める施策です。
ただし、この研究はある一時点の状況を調べた調査であり、示されたのは関連であって因果関係ではありません。また、対象はクリニックに通う母子に限られています。それでも、乳児の食事の多様性を考えるうえで、食品があるかどうかだけでなく、母親が日々の暮らしの中で食品をどう受け止めているかが重要な手がかりになることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Jane Mbijiwe(School of Food and Nutrition Sciences, Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology)、Dickens Omondi(School of Health Sciences, Jaramogi Oginga Odinga University of Science and Technology)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jane Mbijiwe, Dickens Omondi. Dietary diversity and maternal perspectives of indigenous food consumption among infants in Kitui county, Kenya. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-08. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1738169. 原著ライセンス:CC BY.