この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
豆乳や植物性ミルクをつくる過程で大量に発生する「オカラ」は、栄養価が高いにもかかわらず廃棄されやすい副産物として知られています。近年では、こうした食品副産物を無駄にせず有効活用する手段として、パン種(サワードウ)発酵が注目されています。しかし、オーツミルクや米ミルクの製造から出るオカラを使ったサワードウについては、これまであまり詳しく調べられていませんでした。今回紹介する研究では、オーツと米、それぞれのオカラを使い、特別な菌を加えずに自然に発酵させる「バックスロッピング」という手法(発酵させた種の一部を継ぎ足しながら繰り返し培養する方法)を用いて、発酵中にどのような微生物が現れ、どのように変化していくのかが調べられました。
研究でわかったこと
高スループットシーケンシングという手法で微生物の種類と量を詳しく解析したところ、発酵の進み方は使う原料(オーツか米か)によって異なる、いわば「素材依存」の動態を示すことが報告されています。発酵を始めたばかりの段階では、オーツオカラではBacillus属の細菌が最も多く、一方で米オカラではStreptococcus属が優占していたとされています。
ところが、バックスロッピングを30日間続けると様子は一変し、両方の原料でLactobacillus属(乳酸菌の代表的な仲間)が主役になったことが示されています。その割合はオーツオカラで80.1%、米オカラで73.3%に達したと報告されています。次に多い細菌の顔ぶれは原料ごとに異なり、オーツオカラではWeissella属(7.0%)、米オカラではAcetobacter属(11.2%)が目立ったとされています。
酵母についても、原料によって異なる時間的な移り変わりが見られたとのことです。発酵初期にはオーツ・米いずれのオカラでもPichia属が大部分を占め(それぞれ96.6%、97.1%)、発酵が進むにつれてSaccharomyces属(いわゆる酵母パンでおなじみの菌の仲間)が優勢になり、最終的にオーツオカラで54.8%、米オカラでは83.5%に達したと報告されています。
栄養面では、これらのオカラサワードウはタンパク質や遊離アミノ酸(特にグルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン)を豊富に含むことが確認されたとのことです。脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、ステアリン酸が特徴的であり、また骨や筋肉、免疫の働きに関わるとされるカルシウム、亜鉛、セレンといったミネラルも一定量含まれていたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、オーツと米という2種類のオカラを対象に、自然発酵の過程で微生物叢がどう変化し、どのような栄養成分が含まれるようになるかを明らかにしたものです。あくまで一つの研究であり、ここで観察された微生物の変化や栄養成分の値がすべてのオカラや発酵条件に当てはまるとは限りません。また、健康への効果を検証したものではなく、報告されている栄養成分の存在をもって特定の健康効果が保証されるわけではない点にも留意が必要です。
まとめ
本研究は、これまであまり注目されてこなかったオーツと米のオカラを使ったサワードウ発酵において、原料ごとに異なる特徴的な微生物の移り変わりがあることを明らかにしました。あわせて、タンパク質や遊離アミノ酸、脂肪酸、ミネラルに富むという栄養面の特徴も示されており、食品副産物を活用した持続可能な素材としてのオカラサワードウの可能性を示唆する知見だと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):オーツおよび米オカラサワードウの自然発酵における微生物動態の解明(フーズ・2026年07月)
著者:Federica Meanti(Department for Sustainable Food Process (DiSTAS), Università Cattolica del Sacro Cuore, Via Stefano Leonida Bissolati 74, 26100 Cremona, Italy)、Paolo Bellassi(Department for Sustainable Food Process (DiSTAS), Università Cattolica del Sacro Cuore, Via Stefano Leonida Bissolati 74, 26100 Cremona, Italy)、Alessandra Fontana(Department for Sustainable Food Process (DiSTAS), Università Cattolica del Sacro Cuore, Via Stefano Leonida Bissolati 74, 26100 Cremona, Italy)、Margherita Dall’Asta(Department of Animal Science, Food and Nutrition (DiANA), Università Cattolica del Sacro Cuore, Via Emilia Parmense 84, 29122 Piacenza, Italy)、Annalisa Rebecchi(Department for Sustainable Food Process (DiSTAS), Università Cattolica del Sacro Cuore, Via Stefano Leonida Bissolati 74, 26100 Cremona, Italy)