この研究は、ベトナムの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Processing Techniques and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
ふりかけのようなご飯用の乾燥調味料には、海藻、ごま、乾燥魚介がよく使われます。海藻はミネラルや食物繊維、多糖類、海らしい風味をもたらしますが、褐藻をそのまま食品に混ぜ込むと、繊維質の食感が扱いにくいという問題があります。また、海の香りやうま味は残しつつ、強すぎる生臭さは抑える必要があります。
ベトナムでは褐藻の一種であるサルガッサム(ホンダワラ類)が市販原料として手に入りますが、ふりかけのような加工調味料に直接使う方法は、成分を抽出して利用する方法に比べて開発が進んでいません。研究チームは、乳酸発酵させた市販のサルガッサム原料を乾燥魚介系ふりかけに配合できるか、そして配合比率を体系的に調べる実験計画によって、好ましさの評価が高い配合を見つけられるかを検討しました。
原料の下処理と発酵、乾燥方法の選択
ベトナム・ニャチャン沿岸産の天日干しサルガッサムを6時間水で戻して洗い、1.5%の重曹液で90〜100℃、2時間処理したのち、1〜2ミリの細片にしました。これを2種類の乳酸菌(Companilactobacillus farciminisとLactiplantibacillus pentosus)を含む種菌2.15%、砂糖5.0%とともに30℃で86時間発酵させました。発酵後の原料はpH4.56で、酸性化が進んだことを示す値でした。著者らによれば、発酵後の原料は褐色から濃褐色で柔らかく、発酵海藻らしい香りがあり、強い生臭さはなかったとされています。ただし、発酵前後の成分や香り成分は比較測定されておらず、論文は発酵による変化の大きさは評価していないと述べています。
次に、発酵させた原料の乾燥方法として、60℃の熱風乾燥、20℃の低温乾燥、マイナス50℃の凍結乾燥の3つを比べました。熱風乾燥では黒っぽく硬い塊になり、低温乾燥でも硬く固まりました。一方、40時間の凍結乾燥では水分4.51%で、サクサクとしてほぐれやすく、固まらない状態になりました。研究チームは、ふりかけの粒として均一に混ぜやすいという扱いやすさの観点から凍結乾燥を選びました。論文は、この比較では栄養成分や香り成分がどれだけ残るかは調べていないことも明記しています。
配合の最適化と主な結果
配合の検討には「混合計画」と呼ばれる実験計画法が使われました。これは、ある材料を増やすと他の材料の割合が必ず減るという配合の性質を踏まえて、材料の比率と評価との関係を調べる方法です。砂糖3%と食塩2%を固定し、残りの95%を発酵サルガッサム、乾燥した紅藻(ノリ類)、乾燥マグロ、干しエビ、炒りごま、緑豆、ニンジンの7種類に割り振りました。それぞれの材料について5ポイント幅の範囲を決め、18回分(重複を除くと15通り)の配合を試しました。評価には、ふりかけに慣れた30人の評価者が、1(非常に嫌い)から9(非常に好き)の9段階で全体的な好ましさを採点しました。
全体の好ましさの平均は配合によって6.1から8.3まで差がありました。配合比率から評価を予測する統計モデルは、試した範囲内でデータによく当てはまりました。調べた範囲では、炒りごまと乾燥マグロのモデル上の係数が最も大きくなりました。一方、ニンジン、干しエビ、発酵サルガッサムを試験範囲の上限まで入れた配合は評価が低めでした。
最終的に選ばれた配合は、発酵サルガッサム30%、紅藻10%、乾燥マグロ10%、干しエビ5%、炒りごま25%、緑豆10%、ニンジン5%、砂糖3%、食塩2%でした。この配合の予測評価は8.43で、実際の評価は8.30でした。製品の成分は、水分4.64%、たんぱく質28.50%、灰分(ミネラルなどの燃え残り)15.30%、脂質15.00%と報告されています。
この研究が示すこと
この研究は、発酵、乾燥方法の選択、配合の最適化を順に組み合わせることで、市販のサルガッサム原料をふりかけ状の調味料に仕上げられることを試作段階で示しました。著者らは、選ばれた配合が複数の材料で設定範囲の端に位置していたため、これは試した範囲内で最も好ましい領域を示すものであり、どんな条件にも当てはまる最適解ではないと述べています。
また、選ばれた配合は試験した18回分の一つであり、独立した別の製造ロットでの確認はまだ行われていません。評価も30人による予備的な好ましさの試験にとどまります。栄養成分の保持、保存中の安定性、包括的な安全性、健康への影響、市場での受け入れについては確かめられていないと、論文は明記しています。現地で入手できる市販の褐藻原料を、抽出用途だけでなく調味料として直接生かすための、出発点となる配合と工程条件を示した研究といえます。
著者:Bùi Thị Thu Hiền(Vietnam Academy of Fishery Sciences)、Diem Thi Pham(Vietnam Academy of Fishery Sciences, Bac Ninh)、Du-Hae An(Vietnam Academy of Fishery Sciences, Bac Ninh)、P. T. Duyen(Vietnam Academy of Fishery Sciences, Bac Ninh)、N. V. Nguyen(Vietnam Academy of Fishery Sciences, Bac Ninh)、Nguyen Khac Bat(Vietnam Academy of Fishery Sciences, Bac Ninh)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bùi Thị Thu Hiền, Diem Thi Pham, Du-Hae An, et al. Fermented Sargassum-Based Seafood Rice Seasoning: Prototype Development and Mix Design Optimization. Food Processing Techniques and Technology 2026-10-06. DOI: 10.21603/2074-9414-2026-3-2660. 原著ライセンス:CC BY.