魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、炎症を抑える働きを持つことで知られています。一方で、肥満とうつ病は互いに合併しやすいことが知られていますが、こうした「肥満とうつ病の併存」にオメガ3脂肪酸がどう関わっているのかは、これまではっきりしていませんでした。今回紹介する研究は、米国の成人を対象に、血液中のオメガ3脂肪酸の量と肥満・うつ病の併存との関連を調べたものです。

どのような研究か

研究チームは、米国の大規模健康調査であるNHANES(2003〜2004年および2011〜2014年)に参加した4,423人のデータを横断的に分析しました。血中の脂肪酸はガスクロマトグラフィーという方法で測定され、肥満は体格に関する基準で、うつ病は質問票(PHQ-9)または抗うつ薬の使用状況で評価されています。その上で、オメガ3脂肪酸の値が標準偏差1つ分増えるごとに、肥満とうつ病の併存リスクがどう変化するかを統計的に検討しました。さらに、どのような体内の仕組みが関わっている可能性があるかを探るため、ネットワーク薬理学という手法を用いた解析や、炎症に関する指標との相関分析も行われています。

研究でわかったこと

分析の結果、血中のオメガ3脂肪酸の値が高いほど、女性(オッズ比0.82、95%信頼区間0.69〜0.96)および高齢者(オッズ比0.79、95%信頼区間0.64〜0.97)において、中心性肥満とうつ病の併存リスクが低い傾向がみられました。

さらに脂肪酸の種類別にみると、DHAは中心性肥満(オッズ比0.83)、抑うつ症状(オッズ比0.88)、そして両者の併存(オッズ比0.85)のいずれについても、低いリスクとの関連が示されました。一方、EPAについては、これらとの明確な関連は認められなかったとされています。

また、ネットワーク薬理学による解析からは、DHAがTNFやIL-17といった、炎症に関わるシグナル経路に関与している可能性が示唆されました。この点は、単球とHDL(善玉コレステロール)の比率(相関係数−0.138)や、リンパ球とHDLの比率(相関係数−0.108)といった炎症関連の指標とDHAが逆相関を示していたことによっても裏付けられているとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、ある一時点でのデータを用いた横断研究であり、DHAの摂取や血中濃度が肥満やうつ病の併存を「防ぐ」「改善する」といった因果関係を証明するものではありません。あくまで血中濃度と併存リスクとの間に統計的な関連がみられた、という段階の知見です。論文の著者らも、こうした知見をふまえてさらなる介入試験(実際にDHAを摂取してもらい効果を確かめるような研究)が必要であると述べています。

まとめ

今回の研究では、血中のDHA濃度が高いことが、特に女性や高齢者において、肥満とうつ病の併存リスクの低さと関連していることが報告されました。背景には炎症を抑える経路が関わっている可能性が示唆されていますが、これはあくまで一つの研究による知見であり、結論が確定したわけではありません。今後、実際にDHAの摂取が肥満やうつ病の予防・改善に役立つかどうかを確かめる、さらなる研究の進展が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:米国成人における血清オメガ3脂肪酸と肥満併存うつ病:疫学とネットワーク薬理学の統合研究(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年08月)