著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Gastronomy
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
ニンジンジュースを作ると、原料の重さのおよそ30〜50%が搾りかす(ポマス)として残ります。搾りかすには食物繊維やカロテノイドが多く含まれますが、価値の低い廃棄物として扱われることが一般的です。論文によると、米国では年間約28.9億ポンドのニンジンが生産され、その85%がカリフォルニア州で栽培されています。国内で生じる搾りかすは推定約1.5億ポンドにのぼります。
研究チームは、この搾りかすを、大量に消費される牛肉パティの材料として活用する方法を検討しました。これまでの研究では、搾りかすを乾燥させずに生のまま使う場合と、凍結乾燥させて使う場合の性能を、ビーフパティで直接比べた例はありませんでした。乾燥には多くのエネルギーが必要なため、その工程が本当に必要かどうかを確かめることも重要です。そこで研究チームは、二つの形の搾りかすをパティに加え、成分、色、食感、加熱後の仕上がりを比較しました。あわせて、消費者がこれらのパティをどう評価するか、好き嫌いを左右する要因は何かも調べました。
何を調べたか
試作したパティは5種類です。比較の基準として、赤身80%・脂肪20%(80/20)と赤身90%・脂肪10%(90/10)の牛肉だけのパティを用意しました。残りの3種類は搾りかすを加えたもので、80/20のパティに凍結乾燥した搾りかすを重量比3%加えたもの、80/20と90/10のそれぞれに生の搾りかすを16.09%加えたものです。生の搾りかすの量は、乾燥させた搾りかす3%と固形分(水分を除いた中身)が同じになるように決められました。
研究チームは、加熱前後の水分や脂肪などの成分、生のパティの表面の色、食感、調理歩留まりを測定しました。調理歩留まりとは、焼いたあとに元の重さのどれだけが残るかを示す割合です。消費者評価は2週間の間隔をあけた2回のセッションで行われ、パティだけを試食する形式には122人、バンズに挟んで試食する形式には100人が参加しました。外観、香り、総合的な好ましさ、牛肉らしい風味、ジューシーさなどを、「非常に嫌い」から「非常に好き」までの9段階で評価する方式です。試食は、搾りかすを使っていることを知らせずに行われました。
主な結果
生の搾りかすを加えたパティは、同じ脂肪割合の牛肉だけのパティに比べて、加熱前後とも水分が多く、調理歩留まりも高くなりました。論文では、水分と歩留まりのいずれも対照より3〜8ポイント高かったと報告されています。一方、凍結乾燥した搾りかすを加えたパティは、80/20の対照と水分に有意な差がなく、こうした効果は再現されませんでした。研究チームは、乾燥後に混ぜ込む際の吸水では、搾りかすが本来持つ保水性が十分に戻らなかった可能性を挙げています。ただし、この解釈そのものは今回の研究で直接検証されていません。また、どちらの形の搾りかすも、加熱中に脂肪が失われるのを抑える働きは示しませんでした。加熱による脂肪の減少は、搾りかすの有無に関係なく、80/20で約10%、90/10で約6.5%でした。
消費者評価では、どちらの試食形式でも牛肉だけのパティが最も高く評価され、なかでも80/20の対照が最も好まれました。80/20に搾りかすを加えた2種類はその中間で、おおむね好意的に受け止められました。90/10に生の搾りかすを加えたパティは最も評価が低い結果でした。それでも、すべてのパティが総合的な好ましさで尺度の中間点前後かそれ以上の評価を得ており、はっきり拒否されたものはありませんでした。好ましさを下げた主な要因は、牛肉の風味が足りないと感じられたことでした。なお、ジューシーさは対照を含むすべてのパティで理想より不足していると評価されました。
参加者を事前の考え方で分けると、環境への関心が強く、アップサイクル食品(廃棄されるはずの素材を活用した食品)を食べたいと答えたグループでも、搾りかす入りのパティを特に高く評価したわけではありませんでした。一方、実際の評価の傾向で参加者を分けると、搾りかす入りのパティを牛肉だけのパティより高く評価するグループが見つかりました。その人数は、パティ単体の試食で20人、バンズに挟んだ試食で27人で、参加者のおよそ5分の1から4分の1にあたります。
研究が示す意味
著者らは、ニンジンの搾りかすをビーフパティに加えることは、食品加工で出る副産物を活用する有望な方法だとまとめています。特に、通常の脂肪割合(80/20)で生の搾りかすを使う方法が有望だとしています。乾燥工程を省いても水分や歩留まりの面で良い結果が得られたことから、著者らは機能面とエネルギー面の両方で生の形が望ましいと述べています。また、搾りかす入りパティを好む層は、環境に関する考え方からではなく、実際に味わったときの評価から見えてきました。このことから著者らは、こうした層に届くかどうかは環境面の訴えよりも製品そのものの出来にかかっていると指摘しています。
一方で、著者らはこの研究を比較・探索的な製品開発研究と位置づけています。各配合のパティは1回分ずつしか製造されておらず、保存性や脂質の酸化は評価されていません。搾りかすの配合量もそれぞれ1段階だけでした。消費者評価では試食形式とセッションの順序を切り分けられていないほか、参加者は米国西部の大学関係者が中心で、女性や若い世代に偏っていたことも、結果を一般化する際の注意点として挙げられています。
原著論文の著者・所属:Griffin Prough(Food Science and Nutrition Department, California Polytechnic State University, San Luis Obispo, CA 93407, USA)、Daniel DeGeorge(Food Science and Nutrition Department, California Polytechnic State University, San Luis Obispo, CA 93407, USA)、Karissa Chu(Food Science and Nutrition Department, California Polytechnic State University, San Luis Obispo, CA 93407, USA)、Jeff Garza(Garza Consulting, Grand Rapids, MI 49501, USA)、Ruta Lesniauskas(Garza Consulting, Evanston, IL 60201, USA)、Amy Lammert(Food Science and Nutrition Department, California Polytechnic State University, San Luis Obispo, CA 93407, USA)、Samir Amin(Food Science and Nutrition Department, California Polytechnic State University, San Luis Obispo, CA 93407, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Griffin Prough, Daniel DeGeorge, Karissa Chu, et al. Functionality of Upcycled Carrot Pomace as a Nutritional and Sustainable Additive in the Development of Beef Patties. Gastronomy 2026-10-30. DOI: 10.3390/gastronomy4040024. 原著ライセンス:CC BY.