グラフ畳み込みネットワークと対照学習による状況依存型料理レシピ推薦システムの構築
J-STAGE 収録論文(日本)
本研究では,状況依存型料理レシピ推薦システムの構築を目的として,グラフ畳み込みネットワーク(GCN)と対照学習を組み合わせた手法を提案する.本研究では料理レシピを対象とし,提案手法は,料理の栄養成分,食材の共起関係,および視覚的特徴を統合的に考慮し,ユーザーの状況に応じた推薦を実現する.評価実験では,提案手法と従来の人気ベース推薦を比較し,特定の状況下で提案手法の優位性が示された.本研究は,状況依存型の料理レシピ推薦を通じて,ユーザーの健康的な食生活支援に寄与することを目指している.
掲載日: 2025年01月31日
/ 収集: 2026年05月26日 20:00
矯正施設における残菜調査に基づく食事摂取量の実態把握と評価
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】矯正施設で実施された残菜調査をもとに,給与された食事から残菜を除いた被収容者の食事摂取量の実態を把握・評価することを目的とした。 【方法】全国6箇所の矯正施設で実施された5日間の残菜調査結果から残菜率を算出し,施設,性別,年代,食事区分,料理区分別に比較した。残菜率と献立表に基づく給与量から,被収容者のエネルギーおよび栄養素,食品群別摂取量を推定し,国民健康・栄養調査結果,矯正施設被収容者食料給与規程,日本人の食事摂取基準(以下,DRI)と比較した。 【結果】残菜率は女性や10~20歳代,牛乳・乳製品で高く,特に女性では主食の残菜率も高かった。エネルギーおよびたんぱく質摂取量はDRIの推奨量より多く,男性で脂肪エネルギー比率は目標量より低い可能性を示し,炭水化物エネルギー比率は高かった。食物繊維摂取量はDRIの目標量より高値を示し,食塩は目標量を超えていた。ビタミンA,C,カルシウム摂取量はDRIの推奨量,ビタミンDは目安量より少なかった。穀類摂取量は国民健康・栄養調査結果より多く,果物類や魚介類,卵類,乳類摂取量は少なかった。 【結論】女性および若年者で残菜率が高かった。果物類や魚介類,卵類等の提供頻度の少なさが,ビタミン類の摂取量に影響していると考えられる。牛乳・乳製品の摂取の促進に加え,男性のエネルギー産生栄養素バランスの見直しや,さらに食塩を抑えた食事の提供が望まれる。
掲載日: 2026年05月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
諸外国における国の栄養調査での健康食品の調査状況の比較
J-STAGE 収録論文(日本)
本資料では, 諸外国における健康食品の定義および制度を整理し, 諸外国における国の栄養調査での健康食品の調査実施状況や活用目的を比較検討することで, 今後の日本において健康食品の調査を検討するに当たっての基礎的知見を得ることを目的とした。米国, カナダ, 英国, フランス, ドイツ, オーストラリア, ニュージーランド, 中国, 台湾, 韓国の10か国を対象とし, 各国の公的機関の報告書やウェブサイト等から情報を収集した。その結果, 健康食品の定義や分類, 対象となる成分の種類, 規制の仕組みには国ごとに差異が見られ, こうした制度的背景が国の栄養調査の設計にも影響していると考えられた。また, 多くの国では, 健康食品由来の栄養素摂取量データが栄養政策やリスク評価などに活用されていた。本資料は, 今後, 日本における健康食品の調査の検討に向けた基礎的知見を提供するとともに, 栄養政策および食の安全性の確保に寄与するものと考える。
掲載日: 2026年02月28日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
健康寿命延伸に資する食品成分の新たな機能性に関する基礎研究
J-STAGE 収録論文(日本)
筆者は健康寿命の延伸に寄与する食品成分の新たな機能性について動物モデルと培養細胞を用いて探索を行い, 次に示す成分が有用な生理機能を有することを明らかにしてきた。1) 麹菌と乳酸菌による多段階発酵技術による発酵米ぬか (FRB) を開発し, FRBが血圧低下, インスリン抵抗性の改善, 潰瘍性大腸炎の発症抑制, 抗ロコモティブシンドローム効果を有することを疾病モデル動物で明らかにした。また, FRBの活性成分としてトリプタミンを同定した。2) ビタミンKに関して, 抗炎症, テストステロン産生増強, インスリン分泌増強, 胆汁酸合成遺伝子の発現調節といった新たな作用を明らかにした。3) ビオチンについては, 高血圧症の改善, 糖新生律速酵素の発現調節, テストステロン産生増強といった作用をもつことを明らかにした。これらの成果は, 栄養素や食品成分が生活習慣病の予防と改善を通じて, 健康寿命の延伸に貢献する可能性を示すものであり, 今後, これらの知見を基盤とした製品開発への応用が期待される。
掲載日: 2026年02月28日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
いわゆる「健康食品」の健康被害報告制度
J-STAGE 収録論文(日本)
いわゆる「健康食品」は, 主に健康の維持増進や不足した栄養素の補給等を目的とした摂取が想定されている。一方, 利用にあたっては一定のリスクの存在も無視できない。いわゆる「健康食品」の摂取に伴う健康被害を未然防止または拡大防止するためには, 規制当局側がその予兆を迅速に察知することが重要である。そのための規制制度の基盤として, いわゆる「健康食品」の摂取に伴う健康被害の報告制度は必要不可欠と言える。一方, いわゆる「健康食品」による健康被害は, 必ずしも重篤な症例の発生に限らず, 軽症のため報告に至らない場合も少なくない。このため, 健康被害の発生状況の一部は潜在化しやすいが, 現在まで健康被害報告制度の継続的な改訂により, その実効性は着実に高められてきている。また, 現行制度では, 保健所が地域における健康被害の把握と初動対応の中心的な役割を担っており, その公衆衛生活動は制度を支える基盤となっている。しかしながら, 消費者におけるこれらの保健所の役割に関する認知は必ずしも十分ではなく, その結果として健康被害情報が迅速に関係者間で共有されにくい状況も見られる。そこで, 健康被害の拡大防止を目的に保健所の役割と社会的認知の重要性を述べたい。
掲載日: 2025年12月25日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
メタン発酵バイオガス発電で発生する液体肥料の利用促進を目的とした飼料作物栽培試験
J-STAGE 収録論文(日本)
本報告では、小規模な村落における地域課題に対する資源循環の構築を促進するため、牛ふん等を用いたメタン発酵バイオガス発電施設から得られる消化液(以下、「液肥」という。)を用いた農作物栽培試験を実施した。山形県のバイオガス発電所から提供された液肥(肥育牛排泄物及び食品残渣等が主原料)を利用し、福島県の試験圃場及び営農地に施肥を行い、液肥の農作物栽培に対する有効性を評価した。また、営農者への液肥利用の理解促進にも努めた。メタン発酵によって生成される液肥には、窒素、リン酸、カリ等の重要な栄養素が含まれており、安価で利用できるため、地域の農畜産業の生産性向上と環境負荷の軽減が期待される。液肥を地域内で適切に活用することで、地域内の資源循環を促進し、持続可能な農畜産業の実現や再生可能エネルギーの創出に向けた方策を示すことを目指した。
掲載日: 2025年12月17日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
食品廃棄物を燃料とした高炉スラグ-堆積物微生物燃料電池のカソード層水の液肥としての利活用
J-STAGE 収録論文(日本)
脱炭素社会の実現に向けては,バイオマスの利活用が不可欠である.著者らは,その中でも利用率の低い食品廃棄物に着目し,食品廃棄物を高炉スラグ-堆積物微生物燃料電池(SS-SMFC)の燃料として利用する研究を行ってきた.SS-SMFCのカソード層水にはアンモニウムイオンや食品廃棄物の分解に由来する溶存有機物などが含まれており,液肥としての利用可能性が高いと考えられる.そこで本研究では,小松菜の栽培試験を通じて,交換したカソード層水の液肥としての利活用の可能性を検討することを目的とした.実験結果から,肥料成分を含むカソード層水の供給により,土壌中の三大栄養素(窒素、リン、カリウム)の含有量が増加し,それに伴って小松菜の生育が約1.4倍促進された.以上のことから,カソード層水は液肥として利用できる可能性が高いことが明らかとなった.本システムは,エネルギー問題のみならず,肥料の問題の解決にも寄与することが期待される.
掲載日: 2025年12月17日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果:高齢者の食事と栄養
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果をもとに,高齢者の食事と栄養に関する研究の動向を整理し,今後の研究への期待を考察する。 【方法】1941年~2022年(1巻~80巻)に栄養学雑誌に掲載された論文のうち,採択された「日本の食事」に関する論文全412件を対象に,高齢者(原則65歳以上)のみを対象とした論文を抽出した。 【結果】採択論文全21件の掲載年は,1960年代:2件,1970年代:6件,1980年代:2件,2000年代:5件,2010年代:5件,2020年代:1件であった。研究デザインは観察研究(横断研究のみ)が10件,介入研究が11件であった。曝露要因は,栄養素レベルが9件,食品レベルが12件,料理・食事レベルが7件であった。アウトカムは様々であったが,主に脳卒中や骨折等の要介護状態の原因疾患の予防や,加齢に伴う身体機能の低下を防ぐ観点から研究が行われていた。 【結論】「日本の食事」に関する高齢者研究の多くは,わが国が「高齢化社会」に突入した1970年代以降の研究であった。栄養学雑誌80年の歴史の中で,栄養素の代謝や,脳卒中等の疾患予防に着目した研究から,高齢化の進展に伴い,地域高齢者の介護予防や施設入所高齢者の栄養ケアを目的とした研究にシフトしていく様子が伺えた。健康長寿社会の実現にむけて,今後も実践栄養学による研究成果の蓄積・発信が望まれる。
掲載日: 2025年11月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果の概要
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】日本栄養学学術連合が東京栄養サミット2021で掲げた栄養不良の二重負荷解決に貢献するため,栄養学雑誌に掲載の日本の食事に関する研究成果を整理することを目的とした。 【方法】栄養学雑誌1巻(1941年)から80巻(2022年)に掲載の2,323件の論文を対象に,基準に基づいてスクリーニングを実施し,採択論文の概要を整理した。 【結果】412件の論文が採択され,研究デザインは横断研究236件,介入研究169件が多く,対象者のライフステージは青年期241件,壮年期148件が多かった。日本の食事の食物の階層構造は,栄養素レベル202件,食品レベル223件,料理レベル17件,食事レベル67件(重複含む)に整理された。アウトカムの健康・栄養状態の評価指標は,血液検査値136件,体格・発育指標110件,尿・便測定値70件,自己申告68件であった。 【結論】日本の食事に関する研究は,当初,限られた研究者による栄養素・食品レベルの消化・吸収に関する研究から始まり,その後,時代の健康・栄養課題に応じた研究へと発展してきた。戦後の深刻な栄養不足を克服し,長寿国となった日本の経験と知見は,今後,特にアジア諸国の栄養改善への貢献が期待される。さらに,わが国が直面する栄養不良の二重負荷に対しては,料理レベル・食事レベルの研究の進展が,国内にとどまらず,世界の栄養不良の二重負荷解決にも寄与する可能性がある。
掲載日: 2025年11月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果:大学生の食事と栄養
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】大学生の食事は,自身で決定する機会が多くなるため,生涯にわたる健康の維持・増進に向けて重要といえる。本研究は,「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果のうち,大学生の食事と栄養に関する研究の動向を整理することとした。 【方法】1941~2022年(1巻~80巻)に栄養学雑誌で発表された論文から,「日本の食事」に関する研究レビューの採択論文412件のうち,大学生を対象としている論文を抽出した。 【結果】102件の論文が抽出された。掲載年別では,1940年代7件,1950年代7件,1960年代10件,1970年代10件,1980年代11件,1990年代17件,2000年代23件,2010年代14件,2020年代3件であり,研究デザインは,横断研究59件,縦断研究3件,介入研究42件であった。「日本の食事」は,栄養素レベル,食品レベルでアウトカムとの関連をみた研究がほとんどであった。健康・栄養状態のアウトカムは,血液検査値や自覚症状,身長・体重,尿・便測定値などがみられた。 【結論】「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果のうち,大学生の食事と栄養に関する研究の動向を整理した結果,栄養素レベル,食品レベルが多い一方,料理・食事レベルの研究は少ないため,料理・食事レベルの更なるエビデンスの蓄積や発信が期待される。
掲載日: 2025年11月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果:子どもの食事と栄養
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】「日本の食事」に関する栄養学雑誌80年の研究成果のうち,子どもを対象とした研究の動向を整理し,今後の展望について考察することを目的とした。 【方法】1941年(1巻)~2022年(80巻)に栄養学雑誌に掲載された「日本の食事」に関する研究レビューの採択論文412件のうち,子ども(0歳~18歳未満)を研究対象としている論文を抽出した。 【結果】71件の論文が抽出された。対象者の発達段階別にみると,乳児期7件,幼児期20件,学童期35件,青年前期(中学生)17件,青年中期(高校生)11件(複数の期に該当する研究を含む)であった。学校給食に関する研究は8件みられた。アウトカム指標には,栄養素等・食品群別摂取量の他,健康・栄養状態の指標としては,乳・幼児期は身体発育(身長,体重)が多かった。学童期も同様に主なアウトカムは身体発育・体格(肥満の有無を含む)であり,栄養不良や不定愁訴等の自覚症状等もみられた。青年前期・中期では,肥満度等の体格に加え,疲労感,貧血の有無や骨密度も用いられていた。 【結論】子どもを対象とした研究動向として,健康・栄養状態のアウトカムの多くは身体発育,体格(肥満度)であり,発達段階が進むにつれ,貧血,不定愁訴等の自覚症状等を用いた研究もみられた。子どもの健康課題である肥満傾向や思春期女子のやせなどを含め,今後も子どもを対象とした研究のさらなるエビデンスの蓄積や発信が期待される。
掲載日: 2025年11月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
栄養プロファイリングを用いた低価格で栄養価の高い生鮮食品の検討
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】健康格差の縮小には食品の価格に加えて栄養価にも配慮した食環境づくりが重要である。本研究は栄養プロファイルモデルを用いて,低価格かつ栄養価の高い生鮮食品の可視化を目的として実施した。 【方法】食品の栄養素は日本食品標準成分表(八訂)から,推奨すべき栄養素はたんぱく質,食物繊維,ビタミンA,C,E,カルシウム,鉄,カリウム,マグネシウムの9つ,制限すべき栄養素は飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)の2つとした。食品の価格は,小売物価統計調査2022年のデータを用いた。両データに含まれる食品のうち,生鮮食品62食品を対象とした。栄養価の評価にはNRF(Nutrient Rich Foods)モデルを参考にし,食品 100 kcalあたりの価格と栄養価の関連性を検討した。 【結果】食品群ごとの比較では,野菜・いも類が果実類,肉・魚介・卵類と比較して低価格で栄養価が高かった。野菜・いも類の中ではかぼちゃ,じゃがいも,キャベツなど,果実類ではオレンジ,みかん,柿など,肉・魚介・卵類ではいわし,あじなどが低価格で栄養価が高かった。 【結論】本研究では生鮮食品について,低価格かつ栄養価の高い食品の可視化ができた。定期的な食品価格の更新は必要であるが,食品選択時や栄養教育での活用が,経済格差に配慮した食環境整備の一助となると示唆された。
掲載日: 2025年11月15日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
野菜摂取増加を目的とした栄養教育介入の波及効果:栄養素・食品群・食事構成を対象とした二次解析
J-STAGE 収録論文(日本)
〔目的〕野菜摂取増加を目的とした栄養教育プログラムが、勤労者における食品群別摂取量、食事構成(主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の回数)、および栄養素摂取量に与える波及効果を検証することを目的に、先行研究の一次データを用いた二次解析を行った。 〔方法〕勤労成人285名を対照群、介入I群、介入II群の3群に分け、対照群には野菜飲料の提供と自己モニタリング装置を設置した。介入I群にはeラーニングによる動機づけを、介入II群にはさらにグループ形式のスマートフォンアプリによる自己モニタリングを導入した。介入前後で食品群別摂取量、主食・主菜・副菜を組み合せた食事の摂取頻度、栄養素摂取量を食物摂取頻度調査、Webアンケートにて把握し、群内および群間比較を行った。 〔結果〕介入I・II群では野菜摂取量と主食・主菜・副菜を組み合せた食事の回数が有意に増加し、カリウム、ビタミンC、食物繊維等の摂取量も増加していた。特に介入II群における増加が顕著であった。一方、野菜に直接関連しない栄養素や食品群の摂取量に大きな変化はみられなかった。 〔結論〕本介入は、野菜摂取量および関連栄養素の摂取量の改善に有効であり、食事構成にも良い影響を与えたが、野菜に関連しない食品群および栄養素への波及効果は限定的であった。野菜摂取の促進と、主食・主菜・副菜がそろう食事の実施を統合した食育の展開が、今後の課題として示唆された。
掲載日: 2025年10月29日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
日本における全粒穀物摂取,とくに玄米摂取の現状と課題:公衆衛生学的および医療経済学的視点からの考察
J-STAGE 収録論文(日本)
全粒穀物は,外皮や胚芽に豊富な栄養素を含み,精製穀物よりも高い栄養価を有することから,非感染性疾患の予防に寄与する食品として国際的に注目されている。世界保健機関や国連食糧農業機関は,全粒穀物を健康的かつ持続可能な食事の一部として推奨しており,複数の国では食事ガイドラインに明記されている。一方,日本では全粒穀物の明確な定義や摂取推奨がなく,摂取量も他国と比べて極めて低い。本稿では,全粒穀物摂取の公衆衛生学的および医療経済学的意義に関する国際的知見を整理したうえで,日本における代表的な全粒穀物である玄米に焦点を当て,その摂取状況と課題を検討した。玄米摂取は2型糖尿病リスクの低下と関連しているが,日本での摂取頻度は低く,味,調理の手間,入手の難しさなどが普及の障壁となっている。また,白米の一部を玄米に置き換えることで,2型糖尿病の予防や医療費の抑制につながる可能性がある。栄養・健康教育の強化,食品事業者との連携,学校給食や職域での導入など,多面的な取り組みにより玄米をはじめとする全粒穀物の摂取を促進することが,長期的に国民の健康増進と社会保障費の抑制に資すると考えられる。
掲載日: 2025年10月09日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
食生活リテラシーの向上に影響している食知識の検討
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】1年間の縦断研究から食知識と食生活リテラシーの関連を検討し,食生活リテラシーの向上に影響を与える食知識の内容を明らかにすることを目的とした。 【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターを対象にweb調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査(2018年)と追跡調査(2019年)に回答した解析対象者は男性1,200人,女性1,131人であった。高泉らが開発した食生活リテラシー尺度と食知識(栄養素の知識,食品の知識,料理区分の知識)を調査した。2018年の各食知識得点(独立変数)と2019年の食生活リテラシー得点(従属変数)との関連を明らかにするために,基本属性と2018年の食生活リテラシー得点を調整変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。 【結果】男女共に,2018年の各食知識得点と2019年の食生活リテラシー得点に有意な正の関連( p <0.001)が認められた(男性:栄養素の知識得点;β=0.17,食品の知識得点;β=0.17,料理区分の知識得点;β=0.16,女性:栄養素の知識得点;β=0.21,食品の知識得点;β=0.20,料理区分の知識得点;β=0.16)。 【結論】食知識得点が1年後の食生活リテラシー得点に及ぼす影響度は強くはなかったが,栄養素・食品・料理区分の各食知識がいずれも食生活リテラシーを高める要因であることが示唆された。
掲載日: 2025年09月04日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
地域在住高齢者における口腔体操の行動変容段階に応じた食事摂取状況と身体・口腔機能の特徴
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】地域在住高齢者の口腔機能維持には日々の生活習慣が影響しており,行動変容段階に応じた支援が求められる。本研究では,口腔体操の実施に対する行動変容段階別に食事摂取状況や口腔機能などの特徴を明らかにし,今後の栄養教育支援に活かすことを目的とした。 【活動内容】65歳以上の高齢者84名に対し,口腔体操の実施に対する行動変容段階を3段階(無関心期・関心期,準備期,実行期・維持期)に分類し,基本属性に加えてオーラルフレイル(OF)の認知度,舌圧とOFの質問票を調査した。食物摂取頻度調査により食品群・栄養素等摂取量を評価し,各群の特徴を行動変容段階別に比較した。 【活動成果】実行期・維持期では,無関心期・関心期に比べて年齢が高く( p =0.035),実行期・維持期および準備期では,無関心期・関心期よりもOFの認知割合が高かった( p <0.001)。また,食品群では豆類( p =0.002)や海藻類( p =0.003),魚介類( p =0.004)など,エネルギー調整栄養素ではたんぱく質( p =0.045),食物繊維総量( p =0.021)などにおいて無関心期・関心期の摂取量が少なかった。これらの結果から,口腔体操の実施に対する行動変容段階と食事摂取状況は関連することが明らかになった。 【今後の課題】今後は行動変容段階の低い高齢者に対する介入を行い,口腔体操の実施と食事摂取状況の変化を断続的に評価する必要がある。
掲載日: 2025年09月04日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
にぎりずしの栄養素と機能性成分
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】日本の代表的なすしと言えばにぎりずしである。本研究では、マグロやサーモンなどの魚介類を主に用いて調理される、一般的なにぎりずし一人前の栄養と機能性を確認する目的で、各種成分を定量した。 【方法】東京都内でにぎりずし10貫(個)を一人前として提供している3店から、標準的なランチメニューを1種類ずつ、計3種類を選び、同時提供されるガリ、味噌汁、および醤油を除いて湿重量を測定後、(株)日本食品機能分析研にて、熱量、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量、DHA、EPA、酢酸、および各種アミノ酸等について分析結果を得た。【結果・考察】にぎりずし一人前の熱量は473±32.8(平均値±SD;以下同)kcalであった。タンパク質は25.4±1.4g、脂質は11.9±2.3g、炭水化物は66.4±3.9gであった。これらからエネルギー産生栄養素バランス(PFCバランス)はタンパク質が21.4%、脂質が22.6%、炭水化物が56.0%と計算された。DHAは519.3±120.2mg、EPAは623.1±166.1mg であった。酢酸は0.5±0.1gで、食塩相当量は2.9±0.4gであった。アミノ酸のうち食欲抑制効果が期待できるヒスチジンは875±201mgであった。以上より、にぎりずしは、低熱量で高タンパク質だが、脂質と炭水化物に関しては適切な割合と評価された。またDHAとEPAの合計では1日あたりの摂取量目安(1,000mg/日)を一人前で上回った。にぎりずしの栄養と食欲抑制作用や脂質代謝促進作用等の機能性について総合的に考察を加え、調理法や食べ方の観点からも議論したい。
掲載日: 2025年08月30日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
酒粕の有効利用を目指した貯蔵粕の微生物活動と機能性成分の探求
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】先行研究より、酒粕は、日本の伝統技術である造酒工程における副産物である原材料およびその代謝物に由来する成分を豊富に含み、健康機能を有することが知られている。一方、酒粕は用途や入手可能な期間が限られ、また、若い世代を中心とした食嗜好の変化により、近年、廃棄が問題視されている。そこで、本研究では長期間の貯蔵が可能で、独特の風味をもつ熟成粕と粕中の微生物に着目し、貯蔵によるアミノカルボニル反応や微生物の活動による栄養素や機能性成分の変化について報告した。引き続き、酒粕特有の成分や風味を生かした調理方法を検討し、酒粕の利用拡大を目指すことを目的とした。 【方法】試料は、江戸時代から継承される伝統的な自然発酵の手法を用いて醸造を行っている兵庫県内の酒造業者より提供を受け、兵庫県産の山田錦を使用した清酒造りで生じたものである。これまでに、酒粕および常温で50, 100, 200日保存した粕および別試料の3年粕について報告を行ったが、さらに貯蔵期間を延伸した1000日粕を加えた6種について比較した。また、酒粕および200日粕に存在する細菌を単離・培養し、16SrRNA遺伝子解析より菌種を同定した。以上の結果を踏まえて、酒粕および貯蔵粕の調理品を検討した。 【結果・考察】遺伝子解析より両試料において、納豆菌を含む枯草菌の B. subtilis および発酵食品やワインに含まれる P. megaterium の2菌種が同定された。後者はビタミンB 12 の生産者であり、原料米では低含有であるビタミンB 12 が酒粕では豊富であることと一致する。酒粕を広く普及するための調理方法として、加熱することや、チーズや柑橘類といった副材料の使用により、特徴的な風味が緩和され、利用拡大に貢献できると考えた。
掲載日: 2025年08月30日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
中学校家庭科における献立作成を想定したWebアプリケーション教材の開発と授業実践
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】中学校では1日分の食事量を食品群別摂取量の目安を用いて確認する活動があるが,生徒たちが知っている料理に偏りがある,料理に必要な食品・重量を知らない,重量を合計するのに時間を要するなどの問題が挙げられる。そこで本研究は,生徒たちが試行錯誤しながら効率的に献立を作成できる教材を開発し,中学校家庭科にて授業実践した。 【方法】9種類の既存の教材について,表示されている項目や機能を分類し,開発する教材を検討した。その結果,6つの基礎食品群を評価基準としたWebアプリケーション教材を開発することにした。献立作成に使用する料理カードの表示項目は,料理に使用される食品の重量だけではなく,熱量や食物繊維量も含めた。操作方法は,料理カードを選択すると,6つの基礎食品群別に重量が自動集計され,棒グラフと表で表示されるようにした。開発した教材を用いて中学校にて授業実践し,教材に関するアンケート調査を行った。 【結果・考察】開発した教材を用いることで,生徒は20分で1食分の献立を考えることができ,使いやすさ,応答速度,料理カードの見やすさ・豊富さについて高い評価を得た。また,6つの基礎食品群別の重量のみならず,栄養素に着目して献立を作成した生徒がいること,視覚的に過不足を把握しやすい棒グラフを指標として献立を作成する生徒が多いことがわかった。自分の考えをより反映できるよう,分量の設定や提案機能の追加が回答された。分量の設定は目標量との数字合わせに主眼を置く可能性や,提案機能は考える力が失われるおそれがある点から,導入については授業計画や使用方法も含めた検討があると考えられる。
掲載日: 2025年08月30日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00
国内・国外雑穀を利用した製パンの食味官能比較分析に関する研究
J-STAGE 収録論文(日本)
【目的】雑穀には、ビタミンを始め、ミネラル、食物繊維、種類によってはポリフェノールなど、白米や小麦に比べて豊富な栄養素が多く含まれている。また、雑穀は低GI食品で、食後の血糖値抑制効果が知られており、雑穀を活用した食品であれば、炭水化物を忌避しがちな糖尿病患者にも安心して食べられるなど、飽食の時代こその利用価値が生まれている。そこで本研究では、国内産2種、国外産で国内ではあまり知られていない2種の雑穀について、製パンへ利用した場合の食味評価比較を行い、それぞれの特徴を種々の分析手法で解析した結果を報告する。【方法】雑穀には、国内産の代表として粟と稗(ひえ)、国内利用の少ない外国産としてテフ(Teff)とフォニオ(Fonio)を用いた。直交実験計画法にもとづき、副材料の組合せ16通りとした。予備製パンでアンケート調査結果にもとづきSD法による評価項目を12個抽出した。その後、本試験用に試作した製パン16種類について20歳代の男女合計20名を対象としてSD法により本調査を実施して各製パンのプロファイルデータを取得し、主成分分析、クラスター分析などにより特徴解析を行った。【結果・考察】男女間で評価の分かれる項目としては、しっとり感や主観的な満足感で女性が男性に比較して雑穀配合パンをプラスに評価していた。逆に、男性の側からマイナスの評価が多くなった点としては口腔内で水分を奪われる感覚があったことが統計的に明らかになった。また、主成分分析およびクラスター分析では、雑穀配合パンの特徴が抽出できた。本研究の実施にあたっては、官能評価試験において高知大学農林海洋科学部の学生諸氏に協力を得た。ここに記して深く謝意を表する。
掲載日: 2025年08月30日
/ 収集: 2026年05月26日 19:00