著者の所属・活動拠点の国は、ペルー、チリです。
掲載誌:Journal of Functional Morphology and Kinesiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
糖質制限というと減量目的のイメージが強いですが、日常的に筋力トレーニングをしている人が長期間にわたって低炭水化物の食事を続けた場合、体組成や筋力にどんな違いが見られるのでしょうか。これまでの研究の多くは、数週間程度の短期的なケトジェニックダイエット(極端な糖質制限食)を対象にしたものが中心で、日常生活の中で無理なく続けられている『習慣的な』低炭水化物摂取が体にどう関わっているのかは、あまりよくわかっていませんでした。今回紹介する研究は、この点に着目し、レクリエーションレベルで筋力トレーニングを行っている男性を対象に、習慣的な炭水化物摂取量の違いと体組成・筋力との関連を調べたものです。
どんな方法で調べたのか
研究チームは、18〜35歳のレクリエーションレベルの筋力トレーニング経験者である男性53人を対象に、横断的な分析を行いました。参加者にはあらかじめ、少なくとも3か月間は今の食事パターンを続けていることが条件とされ、連続しない3日分の24時間食事記録(食べたものを振り返って記録する調査)をもとに、日常の炭水化物摂取量が推定されました。この結果から、参加者は体重1kgあたり1日3g未満の『低炭水化物摂取群』(28人)と、3〜5gの『通常炭水化物摂取群』(25人)に分けられています。
体組成は、RossとKerrによる人体計測モデルおよびMartinの式という方法を用いて、脂肪量や筋肉量などが推定されました。さらに、握力と膝伸展筋力について、最大等尺性筋力(力を出しながらも関節を動かさない状態での最大筋力)が測定されています。統計解析では、年齢・身長・相対的なエネルギー摂取量で調整した上でグループ間の差が比較され、さらにたんぱく質摂取量の影響も別途確認する追加解析(感度分析)が行われました。
研究でわかったこと
年齢・身長・エネルギー摂取量で調整した基本の解析では、低炭水化物摂取群は通常摂取群に比べて、脂肪量や体脂肪率が有意に低いという結果が示されました。具体的には、脂肪量で約2.3〜2.4kg、体脂肪率で約4〜4.6ポイントほど低い値が報告されています。一方、筋肉量、握力、膝伸展筋力の絶対値については、調整後には両群のあいだに統計的な差は見られませんでした。
ところが、たんぱく質摂取量の影響も加味した追加の感度分析を行うと、様相が変わりました。脂肪量や体脂肪率に関する先ほどの差は弱まり、統計的に有意ではなくなった一方で、今度は低炭水化物摂取群のほうが握力や膝伸展筋力(絶対値・相対値とも)が低いという関連が新たに見えてきたのです。なお、この段階でも筋肉量そのものについては、両群のあいだに明確な関連は確認されませんでした。
研究チームは、この結果について、炭水化物摂取量そのものだけでなく、たんぱく質摂取量を含めた食事全体の構成が、体脂肪や筋力との関連の見え方に影響している可能性があると述べています。
この研究をどう読むか
この研究は横断的な分析、つまりある一時点での集団を比較したものであり、低炭水化物摂取が体脂肪を減らした、あるいは筋力を下げたという因果関係を証明するものではありません。あくまで、ある時点における食事パターンと体の状態との『関連』を示したものである点には注意が必要です。また、対象はペルーの研究チームによって集められた、レクリエーションレベルで筋力トレーニングを行う男性53人という限られた集団であり、女性や競技レベルのアスリート、トレーニング経験のない人にそのまま当てはまるかどうかはわかりません。食事内容の把握も自己申告による24時間食事記録に基づいており、日々の食生活を完全に反映しているとは限らない点も踏まえて読む必要があります。
まとめ
この研究では、習慣的に炭水化物摂取量が少ない筋力トレーニング経験者の男性は、体脂肪が少ない傾向が見られた一方で、たんぱく質摂取量を考慮に入れると、握力や膝の伸展筋力がむしろ低いという関連も浮かび上がりました。炭水化物とたんぱく質は互いに影響し合う栄養素であるため、片方だけを見て食事の良し悪しを判断するのは難しいことを示す結果とも言えます。あくまで一つの横断研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえつつ、日常的な食事のバランスと運動パフォーマンスの関係を考える材料として捉えるとよいでしょう。
原著論文の著者・所属:Sergio Añasco Saca(Grupo de Investigación en Nutrición, Metabolismo y Ejercicio, Facultad de Ciencias de la Salud, Carrera de Nutrición y Dietética, Universidad Científica del Sur, Lima 15067, Peru)、Lilia Soifer Velásquez(Grupo de Investigación en Nutrición, Metabolismo y Ejercicio, Facultad de Ciencias de la Salud, Carrera de Nutrición y Dietética, Universidad Científica del Sur, Lima 15067, Peru)、Alexander Imán(Departamento de Ciencia y Tecnología de Alimentos, Facultad de Industrias Alimentarias, Universidad Nacional de la Amazonía Peruana, Iquitos 16001, Peru)、Michelle Lozada‐Urbano(Programa Académico en Nutrición y Dietética, Universidad Privada Norbert Wiener, Lima 15046, Peru)、Delsi Mariela Huaita(Dirección General de Investigaciones, Universidad Inca Garcilaso de la Vega, Lima 15084, Peru)、Antonio Castillo-Paredes(Grupo AFySE, Investigación en Actividad Física y Salud Escolar, Escuela de Pedagogía en Educación Física, Facultad de Educación, Universidad de Las Américas, Santiago 8370040, Chile)、José Antonio Pino Arango(Dirección General de Investigaciones, Universidad Inca Garcilaso de la Vega, Lima 15084, Peru)、José Jairo Narrea Vargas(Grupo de Investigación en Nutrición, Metabolismo y Ejercicio, Facultad de Ciencias de la Salud, Carrera de Nutrición y Dietética, Universidad Científica del Sur, Lima 15067, Peru)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Sergio Añasco Saca, Lilia Soifer Velásquez, Alexander Imán, et al. Differences Between Habitual Low and Normal Carbohydrate Intake in Body Composition and Maximal Isometric Strength in Resistance-Trained Men. ジャーナル・オブ・ファンクショナル・モルフォロジー・アンド・キネシオロジー (2026). DOI: 10.3390/jfmk11030351. 原著ライセンス: cc-by.