脂肪浮腫(リポエデマ)は、脚などに左右対称的に脂肪が過剰に蓄積し、痛みや押した際の圧痛、体を動かしにくさなどを伴う慢性的な脂肪組織の病気です。食事の工夫によって症状が和らぐ可能性が指摘されてきましたが、なぜそうした変化が起こるのか、体の中でどのようなことが起きているのかは、これまで十分にわかっていませんでした。今回紹介する研究では、この『なぜ』の部分に焦点を当て、食事の効果と体内の酸化ストレス・抗酸化のバランス(酸化還元バランス)との関係を調べています。

研究でわかったこと

この研究では、脂肪浮腫のある女性24人と、脂肪浮腫はないものの過体重・肥満のある女性24人を対象に、エネルギー(カロリー)を制限した低炭水化物・高脂肪の地中海式食事を7か月間続けてもらいました。介入の前後で、体内の酸化ストレスや抗酸化能を示すいくつかの指標を測定し、体脂肪の状態、炎症マーカー、痛みの強さとの関連が分析されました。

介入前の時点では、脂肪浮腫のある女性は、ない女性と比べて、タンパク質の酸化損傷を示す『タンパク質カルボニル』という指標が低く、総抗酸化能は高いという特徴が見られました。それ以外の酸化ストレス・炎症関連の指標には、両グループ間で目立った違いはなかったと報告されています。

7か月間の食事介入後は、両グループとも体重や体脂肪が有意に減少したとされています。特に脂肪浮腫のある女性では、脂質の酸化(過酸化)やタンパク質カルボニル濃度の低下、抗酸化状態の改善に加え、痛みの強さが著しく軽減したことが報告されています。さらに、痛みの軽減は、酸化ストレスの指標であるTBARS(脂質過酸化物の量を示す指標)の減少と独立して関連していた一方で、炎症マーカーの変化は痛みの改善と独立した関連は見られなかったとされています。これらの結果から、体内の酸化還元バランスの改善が、脂肪浮腫における痛みの緩和に関わっている可能性が示唆されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、低炭水化物・高脂肪の地中海式食事が、脂肪浮腫の症状管理における薬に頼らない選択肢の一つとなりうる可能性を示すものとして位置づけられています。ただし、本研究は特定の集団(女性48人)を対象とした一つの試験であり、ここで得られた関連性がすべての人に当てはまるかどうかや、長期的な効果については、要旨の範囲では言及されていません。食事によって症状が『治る』『予防できる』と断定するものではなく、あくまで体内の酸化還元バランスの変化と痛みの軽減との関連が観察されたという段階の知見である点に留意して読む必要があります。

まとめ

今回の研究では、低炭水化物・高脂肪の地中海式食事を7か月間続けた脂肪浮腫のある女性において、体重や体脂肪の減少とともに、酸化ストレスの指標の改善や痛みの軽減が見られたことが報告されています。そして、この痛みの軽減が酸化ストレス指標の変化と独立して関連していたことから、酸化還元バランスの改善が脂肪浮腫の症状管理に関与している可能性が示唆されています。今後さらなる研究によって、こうした関連の詳細や食事療法の位置づけが明らかになっていくことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:低炭水化物地中海式食事は脂肪浮腫女性の疼痛と体組成を改善する:酸化還元バランスの役割(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)