毎日の食事の「パターン」が、体のどこに・どれだけ脂肪がつくかと関係しているとしたら、どうでしょう。特定の食品ではなく、食事全体の組み合わせ方が体組成に影響を与えうるという研究が、健康志向の人たちの間で注目を集めています。
研究でわかってきたこと
ニュージーランドのオークランドに暮らす65〜74歳の地域住民367名を対象とした横断研究(ある時点のデータをまとめて分析する研究)では、食事の質を評価するスコア「2018年WCRF/AIRCスコア」と体脂肪の複数の指標との関係が調べられました。このスコアは、世界がん研究基金(WCRF)とアメリカがん研究所(AICR)が2018年に公表した食事指針にもとづくもので、野菜・果物・全粒穀物の摂取量、加工食品や赤肉の制限など、食事全体の質を総合的に点数化するものです。
研究では、このスコアが高いほど、BMI(体格指数)・ウエスト周囲径・ウエスト・ヒップ比・体脂肪率・内臓脂肪率・アンドロイド/ガイノイド比(上半身と下半身の脂肪バランスの指標)のすべてにおいて、値が低い傾向にあることが示唆されています。つまり、食事全体の質が高いほど、体のさまざまな部位の脂肪量が少ない可能性が示されたのです。
また、主成分分析という統計手法を用いて導き出された「経験的食事パターン」(参加者の実際の食べ方から統計的に浮かび上がった食事のまとまり)も、これらの体脂肪指標と関連していたと報告されています。なお、これは横断研究であるため、食事パターンが体脂肪の変化を直接引き起こすとは言えませんが、食事全体の質と体組成の関連性を考えるうえで興味深い知見と言えるでしょう。
注目の食品と実測データ
今回の研究で評価されたWCRF/AIRCスコアが重視するのは、特定の「スーパーフード」ではなく、食事全体のバランスです。野菜・果物・全粒穀物を豊富に摂り、超加工食品や赤肉の摂りすぎを控えるという方向性は、日本の食生活にも十分取り入れられる考え方です。
たとえば、日本の食卓でなじみ深い野菜や豆類、魚介類、海藻類などは、こうした食事の質を高める食品群として位置づけられます。残念ながら今回の研究で取り上げられた個別食品の成分データは当サイトのデータベースに現時点では格納されていないため、具体的な栄養成分値の紹介はできませんが、バランスのよい食事の「組み合わせ方」そのものに意義があるという研究の視点は、日常の食選びを見直すヒントになりそうです。
日々の食事に取り入れるヒント
研究が示す食事パターンの考え方を、日常生活にどう落とし込めるでしょうか。以下のような工夫から始めてみてはいかがでしょう。
- 「食事の多様性」を意識する:一日に食べる食品の種類を増やすことは、特定の栄養素の過不足を補い合うためにも有効とされています。主食・主菜・副菜を組み合わせる和食の考え方は、こうした視点と相性がよいと言えます。
- 野菜・豆類・海藻を毎食意識して取る:食事の中に植物性食品を組み込む習慣は、食事の質スコアを高めるうえで基本的なアプローチとされています。
- 加工食品の頻度を見直す:袋菓子・インスタント食品・ファストフードなどの超加工食品(工業的に高度に加工された食品)の摂取頻度を意識的に落とし、素材に近い食品を選ぶ機会を増やすことが、食事の質改善につながる可能性が示唆されています。
- 赤肉は量と頻度を意識する:牛肉・豚肉・羊肉などの赤肉は、完全に避けるのではなく、週の摂取量を意識しながら魚や大豆食品と上手にローテーションさせるとよいでしょう。
- 食事全体を俯瞰する習慣:一食単位ではなく、一日・一週間のトータルで食事のバランスを見渡す習慣が、長期的な食事の質向上に役立つとされています。
今回紹介した研究は高齢者を対象としたものですが、食事の質と体組成との関連は、若い世代においても重要なテーマです。日々の食事を振り返り、「何を食べるか」だけでなく「どんな組み合わせで食べるか」にも目を向けてみることが、健康的な体づくりへの第一歩となるかもしれません。特定の食品を極端に増やしたり減らしたりするよりも、食事全体のパターンを少しずつ整えていくことが、持続可能な食習慣につながると考えられています。
バランスのよい食生活に「正解」は一つではありません。研究の知見を参考にしながら、自分の生活スタイルに合った食事パターンを、無理なく積み重ねていくことが大切です。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Both empirical dietary patterns and the 2018 World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research Score are associated with adiposity in older adults in New Zealand(栄養学・食事療法アカデミー誌(2026-05-21))