著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、スイスです。
掲載誌:Innovative Food Science & Emerging Technologies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
研究チームが注目したのは、電気の力で空気の流れを生み出す「電気流体力学(EHD)」という仕組みです。電極に高い電圧をかけると空気中にイオンが生じ、それが動くことで周りの空気も流れ、風が起こります。これを「イオン風」と呼びます。著者らによると、EHD装置は少ないエネルギーで局所的に風を送ることができ、その過程で副産物としてオゾンも発生します。
そこで研究チームは、EHD装置を、空気の流れとオゾンを組み合わせた処理として新鮮なイチゴに使うことを検討しました。ねらいは、イチゴの置かれた空間で熱の伝わり方を高めることと、イチゴを消毒することです。
どのように調べたか
実験には実験室規模のEHD装置が使われました。電極の間隔を3cmと4cmの2通り、かける電圧を15kVと19kVの2通りとし、装置の働きを調べています。
そのうえで、電圧19kV・電極間隔3cmの条件でイチゴに1時間の処理を行い、4℃で12日間冷蔵保存しました。保存期間を通じて、微生物の状態、重さの減り具合、色、酸性度を示すpH、糖分などの溶けた成分の量を示す全可溶性固形分(TSS)を調べました。
主な結果
論文の報告では、電圧19kV・電極間隔3cmの条件で、装置は秒速1.18mの風と0.042ppmのオゾンを生み出し、推定される放電のエネルギー消費量は4.51Whでした。オゾン濃度は、電圧を高くするほど、また電極の間隔を狭くするほど一貫して高くなり、放電電流の変化に沿っていたといいます。
この条件で処理したイチゴでは、微生物の総量が処理後に0.44 log減少しました。logは微生物の数を10倍単位で表す尺度で、1 logの減少は数が10分の1になることに相当します。
一方、pH、TSS、色については、処理による有意な影響は見られませんでした。また、重さの減少は、処理しなかった対照群より処理した群のほうが少なかったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、EHDによる送風とその場でのオゾン発生を、一つの低電力なハイブリッド技術としてまとめられると結論づけています。新鮮なイチゴを対象に、穏やかな微生物制御、熱伝達の向上、品質の保持を同時に担う手法の実現可能性を、実験室規模の装置で検討した研究です。
原著論文の著者・所属:Eda Coskun(Food Quality and Design, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)、Thijs Defraeye(Empa, Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology, Laboratory for Biomimetic Membranes and Textiles, Lerchenfeldstrasse 5, CH-9014 St. Gallen, Switzerland; Food Quality and Design, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)、Judith C.A. Ham(Laboratory of Food Processing Engineering, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)、Taylor Person(Food Quality and Design, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)、Maarten A.I. Schutyser(Laboratory of Food Processing Engineering, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)、Deniz Turan(Food Quality and Design, Wageningen University & Research, P.O. Box 17, 6700 AA Wageningen, the Netherlands)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eda Coskun, Thijs Defraeye, Judith C.A. Ham, et al. Feasibility of ionic wind for heat-transfer enhancement and mild decontamination of strawberries. Innovative Food Science & Emerging Technologies 2026-10-02. DOI: 10.1016/j.ifset.2026.104831. 原著ライセンス:CC BY.