著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

モリーユ(アミガサタケ属のきのこ)は価値の高い食用きのこで、商品価値には収量だけでなく、タンパク質やアミノ酸などの栄養成分も関わります。栽培種のモリーユでは、菌が土に広がった後、「外部栄養袋」と呼ばれる栄養源の袋を土の上に置いて子実体(いわゆるきのこの本体)の形成を支えるのが一般的です。この袋の中身は栽培者が調整できるため、収穫される子実体の成分に影響しうる要素と考えられています。

研究チームが対象としたのは栽培種のモリーユ(Morchella sextelata)です。この種では、かさと柄でタンパク質やアミノ酸などの含有量が大きく異なることが知られています。著者らは、タンパク質に富む大豆ミールを栄養袋へ段階的に追加したとき、かさと柄のタンパク質やアミノ酸の組成がどう変わるか、また遺伝子やタンパク質のレベルでどのような変化が伴うかを調べました。

何をどう調べたか

基本の栄養袋は、小麦、トウモロコシの芯、大豆ミール(5%)などから成ります。研究チームは、この基本配合の乾燥重量600グラムに対して、大豆ミールを0%(対照)、1%、2%、4%、8%、10%の割合で追加しました。この割合は追加分を示すもので、最終的な配合に占める大豆ミール全体の割合ではありません。

成熟した子実体をかさと柄に分け、それぞれのタンパク質量と18種類のアミノ酸量を測定しました。タンパク質量は、試料に含まれる窒素量から換算して推定した値です。さらに、国連食糧農業機関(FAO)の基準パターンと比べてアミノ酸の構成を評価する指標も算出しました。このうち「必須アミノ酸指数」は、タンパク質1グラムあたりの必須アミノ酸(体内で十分に合成できず、食事から摂る必要があるアミノ酸)の釣り合いを、基準と比べて総合的に表す指標です。

加えて、対照、2%、4%、8%の4区については、どの遺伝子がどれだけ働いているかを網羅的に調べるトランスクリプトーム解析と、どのタンパク質がどれだけ存在するかを網羅的に調べるプロテオーム解析を行い、両者の結果を統合して分析しました。

主な結果

タンパク質量は、大豆ミールを増やすほど単純に増えたわけではありませんでした。かさでは、対照の乾燥重量1キログラムあたり303.13グラムから、8%追加で384.39グラム(26.8%増)に達し、10%では355.03グラムに下がりました。柄では1〜4%追加で対照との有意な差はなく、8%で最も高い354.52グラム(対照より20.2%増)となり、10%では再び低下しました。両部位とも、今回の条件では8%で最高値を示しました。

かさでは、アミノ酸の総量、必須アミノ酸量、非必須アミノ酸量がいずれも8%で最も高くなり、対照に比べてそれぞれ17.0%、15.6%、17.9%多くなりました。同じ追加量で比べると、これらの量は常にかさの方が柄より多いという結果でした。

一方で、量が増えることと、アミノ酸の構成のバランスがよくなることは一致しませんでした。かさの必須アミノ酸指数は対照で最も高く、タンパク質や必須アミノ酸の量が最多だった8%区が最高になったわけではありません。柄では、大豆ミールを追加したすべての区で対照より指数が高くなりました。量とバランスの関係は部位によって異なっていたことになります。

分子レベルでは、かさの方が働きの変わった遺伝子が多く、柄の方が量の変わったタンパク質が多いという対照的な傾向が見られました。柄の2%区と8%区では、量が減ったタンパク質が過半数を占めました。統合解析では、これらの変化が炭素やアミノ酸の代謝、タンパク質の合成、タンパク質の品質管理、エネルギー代謝、RNAの加工といった働きと関連づけられました。著者らは、こうした関連は少ない試料数に基づく探索的なもので、因果関係を示すものではないとしています。

研究が示すこと

この研究は、収穫前に栄養袋へ加える大豆ミールの量によって、モリーユのタンパク質やアミノ酸の量が変わりうることを示しました。ただし、その反応は追加量に比例せず、かさと柄で異なり、遺伝子とタンパク質という分子の層によっても異なっていました。

特に、成分の量が増えることと、アミノ酸構成のバランスがよくなることは別の問題として区別する必要がある、という点が研究から読み取れる重要なポイントです。

原著論文の著者・所属:Yihong Yue(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Qian Wang(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Yuchen Zhang(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Tingting Xiao(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Haibo Hao(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Zongjun Tong(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Wei Li(Amway (China) Botanical Research and Development Center, Wuxi, Jiangsu, China)、Jingjing Huang(Amway (China) Botanical Research and Development Center, Wuxi, Jiangsu, China)、Jinjing Zhang(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)、Hui Chen(National Engineering Research Center of Edible Fungi, Key Laboratory of Edible Fungi Resources and Utilization (South), Ministry of Agriculture, Institute of Edible Fungi, Shanghai Academy of Agricultural Sciences, Shanghai, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yihong Yue, Qian Wang, Yuchen Zhang, et al. Preharvest soybean meal supplementation alters tissue-specific protein and amino acid composition in Morchella sextelata: integrated transcriptomic and proteomic analysis. Frontiers in Nutrition 2026-10-19. DOI: 10.3389/fnut.2026.1979592. 原著ライセンス:CC BY.