著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:European Journal of Nutrition & Food Safety
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品では、乳酸菌の一種である乳酸球菌(ラクトコッカス属の細菌)が重要な役割を担っています。乳を酸性にする働き、風味をつくる働き、タンパク質を分解する働き、食感や製品の安定性への関わりなどがあるためです。
研究チームは、インドの寒冷砂漠地域に伝わる発酵食品に、こうした働きを持つ乳酸球菌が含まれている可能性に注目しました。著者らによると、その菌株の性質は、発酵の出発点として加える菌(スターターカルチャー)に使えるかを判断できるほどには調べられていませんでした。そこで本研究では、この地域の発酵食品から分離した乳酸球菌について、発酵に関わる性質を評価しました。
何を調べたか
評価の対象は、酸をつくる力、バターのような香りのもとになる香気成分ジアセチルの生成、タンパク質を分解する力、菌が体の外につくる多糖類(菌体外多糖、EPS)の生成、ほかの微生物の増殖を抑える働きの5点です。
酸をつくる力は、脱脂乳の中で菌を育て、pHや酸の量(滴定酸度)を測るなどして調べました。ジアセチルの生成はクレアチン試験という呈色反応で確かめ、タンパク質分解の程度はo-フタルアルデヒド法という方法で測っています。多糖類の生成は、菌の周りの膜状の構造を染めて観察する方法で調べました。ほかの微生物を抑える働きは、寒天培地に開けた穴に試料を入れ、指標となる菌の増殖が抑えられるかを見る方法で調べました。
主な結果
論文によると、脱脂乳で6時間培養した後のpHは菌株によって4.60から5.43、酸の量は乳酸換算で0.32%から0.76%でした。酸をつくる力には菌株ごとに大きな差がありました。
ジアセチルの生成については、4株が強い陽性、別の4株が中程度の陽性でした。乳が固まった時点で測ったタンパク質分解の指標は、アミノ酸のロイシンに換算した値で1ミリリットルあたり0.077から0.131ミリグラムでした。最も高い値を示したのはCDM107という株でした。
一方で、今回の実験条件では、どの乳酸球菌にも多糖類の生成は確認されませんでした。試験に用いた指標菌に対して増殖を抑える働きも、どの菌株でも検出されませんでした。
研究が示すこと
著者らは、同じ地域の発酵食品から得た乳酸球菌でも、酸をつくる力、風味をつくる力、タンパク質を分解する力が菌株ごとに大きく異なると報告しています。この結果は、スターターカルチャーの候補を選ぶ際には、菌の種類だけで判断せず、菌株ごとに性質を確かめることが大切だという考え方を支えるものだと論文はまとめています。
原著論文の著者・所属:Gitanjali B. Sathe(Department of Dairy Microbiology, ICAR- National Dairy Research Institute Karnal, Haryana-132001, India)、Surajit Mandal(Department of Dairy Microbiology, Faculty of Dairy Technology, Mohanpur Campus, BCKV Post Office, West Bengal- 741252, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gitanjali B. Sathe, Surajit Mandal. Evaluation of Technological Properties of Lactococci Isolated from Fermented Foods of Cold Desert Region of India. European Journal of Nutrition & Food Safety 2026-10-28. DOI: 10.9734/ejnfs/2026/v18i112184. 原著ライセンス:CC BY.