日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Discover Soil.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
放置竹林の竹を苗づくりに生かす
ミミズ堆肥は、家畜ふんや植物残さなどの有機物をミミズに分解させて作る土壌改良資材です。養分の供給や土の物理性の改善に加え、いくつかの植物病害を抑える働きも報告されています。そのため、研究チームは、苗を育てる培土として使える可能性に注目しています。
日本では管理されなくなったモウソウチク林がおよそ16万7000ヘクタールに広がり、農地や周辺の森林への影響が問題になっています。竹は硬くて分解しにくいため、有機資材としての利用は限られてきました。著者らは以前、細かく粉砕した竹に窒素源として葛を加えたミミズ堆肥を作り、病害を抑える効果を確認していました。しかし、竹を細かく砕く作業や葛の採取に費用がかかることが課題でした。堆肥の窒素が少なく、育てた作物の葉の色が薄くなりやすいことも問題でした。
そこで研究チームは、竹を粗く砕くことで加工費を下げ、窒素源を葛から菜種油かすに替えることで窒素を増やそうと考えました。この改良版の堆肥が、製造費、養分、病害を抑える力の点でどうなるかを調べました。
三種類の竹ミミズ堆肥を比べる
比較したのは三種類のミミズ堆肥です。一つ目は粗く砕いた竹(平均粒径約1.6ミリ)と菜種油かすから作った改良版です。二つ目は細かく砕いた竹(平均約0.6ミリ)と菜種油かすから作ったもの、三つ目は細かく砕いた竹と葛から作った従来版です。それぞれの材料を予備発酵させたあとにミミズを加え、約3か月かけて堆肥にしました。
調べた項目は、月1トン規模で生産する場合の1トンあたり製造費の試算、水に溶け出す養分の量と炭素と窒素の比率、そして苗立枯病を抑える力です。苗立枯病は、土の中の病原体に侵されて芽生えたばかりの苗が倒れたり枯れたりする病気です。試験では市販の育苗培土に各堆肥を2割混ぜ、二つの組み合わせで調べました。一つはシソとピシウム・ミリオチルム、もう一つはキュウリとグロビスポランギウム・アルティマムで、いずれも苗立枯病を起こす病原体です。あわせて、葉の緑の濃さを示すSPAD値も測りました。SPAD値は葉の葉緑素の量を相対的に表す指標で、値が低いと窒素不足が疑われます。
費用は最も安く、病気を抑える効果も最も安定
製造費の試算では、粗い竹と菜種油かすの堆肥が1トンあたり26万7200円(約1670ドル)で最も安くなりました。同じ材料でも竹を細かく砕くと約3万3000円高くなりました。細かい竹と葛の従来版は34万9600円と最も高くなりました。
苗立枯病の試験では、三種類とも少なくとも一部の試験回で、堆肥を加えない培土より発病を減らしました。効果の安定性には差がありました。シソの試験では、粗い竹の堆肥は3回の試験すべてで発病を有意に減らしました。細かい竹を使った二種類は、3回のうち2回で効果を示しました。キュウリの試験では、粗い竹の堆肥が4回中3回、細かい竹と菜種油かすの堆肥が4回中2回、従来版が4回中1回で効果を示しました。なお、培養できる細菌やカビの数などの一般的な微生物の指標には、処理による差は見られませんでした。そのため、抑える効果の違いがなぜ生じたのかは、この研究では説明できていません。
一方で課題も見つかりました。粗い竹の堆肥と従来版を混ぜた培土では、シソでもキュウリでもSPAD値が市販培土だけの場合より低くなりました。細かい竹と菜種油かすの堆肥は、両者よりSPAD値が高く、キュウリでは市販培土と差がありませんでした。同じ量の菜種油かすを加えても、粗い竹の堆肥は細かい竹の堆肥より全窒素量が少なくなりました。
費用と苗の生育状態のバランス
著者らは、竹を粗く砕くと製造費を下げられる一方、苗の葉の緑の濃さが低くなりやすいとみています。費用と苗の状態の間にはトレードオフがあると考えられます。また、粗い竹の堆肥は葉の色が薄くなっても病気を抑える効果を保っていたことから、窒素の供給と病気を抑える力は分けて考える必要があると指摘しています。この研究は、簡単な加工と入手しやすい材料で、病気を抑える竹のミミズ堆肥をより安く作れることを示しました。ただし実際に育苗に使うには、窒素の供給を整えることが残された課題であることも明らかにしました。
著者:Ruka Kawasumi(Graduate School of Agriculture, Osaka Metropolitan University, Sakai, Osaka, 599-8531, Japan)、Motoaki Tojo(Graduate School of Agriculture, Osaka Metropolitan University, Sakai, Osaka, 599-8531, Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ruka Kawasumi, Motoaki Tojo. Coarsely ground bamboo and rapeseed oilcake produce a lower-cost vermicompost with damping-off suppressiveness. Discover Soil. 2026-10-01. DOI: 10.1007/s44378-026-00335-5. 原著ライセンス:CC BY.