日本関連:この研究は海外機関を中心とする国際共同研究で、日本の研究機関に所属する共著者が参加しています。参加国はスリランカ、アイルランド、日本です。

掲載誌:Journal of Data Science and Intelligent Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ターメリック(ウコン)の粉末は料理や伝統的な用途で広く使われる香辛料ですが、より安価な材料を混ぜてかさ増しする「混ぜ物」が問題になっています。著者らによると、合成色素や重金属を含む混入物はよく研究されてきた一方、米粉のような食品由来の混入物は色や成分がターメリックに近く見分けにくいため、研究が比較的少ないといいます。また、従来の精密な化学分析は時間と手間がかかり、小規模な加工現場や流通の場で手早く確認する用途には向かないとされています。

そこで研究チームは、粉末の色を数値で測るだけで米粉の混入割合を推定できる人工知能(AI)ツールを開発し、ウェブ上で使えるようにすることを目指しました。あわせて、ヨウ素を使った化学的な検査、人の目による官能評価、顕微鏡観察も行い、混入を見分ける手がかりとして結果を照らし合わせています。著者らは、スリランカ産ターメリックを対象にしたこうした機械学習研究や、混入割合を推定するウェブツールはこれまでなかったと位置づけています。

どのように調べたか

研究チームは、スリランカ・キャンディ地区で栽培・収穫したターメリックの根茎を洗浄、薄切り、天日乾燥、粉砕、ふるい分けして純粋な粉末を作りました。これに米粉を重量比で0.1%から50%までの段階、および米粉のみ(100%)の割合で混ぜ、混入割合の異なる試料をそろえました。

各試料の色は色彩計で測定しました。色は「L*(明るさ)」「a*(赤みの強さ)」「b*(黄色みの強さ)」という三つの数値で表す方式で記録され、試料ごとに100回の読み取りが行われました。この三つの数値を入力として、ニューラルネットワーク、k近傍法、決定木、サポートベクター回帰、ランダムフォレストという5種類の機械学習の手法で混入割合を予測させ、最も成績のよい手法をウェブアプリに組み込みました。ランダムフォレストは、多数の「条件分岐による判定」を組み合わせて平均をとる手法です。

比較のための検査として、米粉に含まれるでんぷんがヨウ素と反応して色づく性質を利用し、その発色の強さを吸光度として測る検査を行いました。また、訓練を受けていない30人のパネルに、3つの試料のうち1つだけ違うものを選んでもらう「三点識別法」で、色の違いが人の目で分かるかを調べました。さらに、光学顕微鏡で米粉の粒が見えるかどうかも観察しました。

主な結果

色の測定では、米粉が増えるにつれて明るさを示すL*が徐々に上がり、赤みを示すa*は徐々に下がりました。黄色みを示すb*は比較的安定していましたが、米粉100%では大きく低下しました。

5種類の手法のうち、ランダムフォレストが最も良い成績を示し、予測の当てはまりの良さを表す決定係数は学習用データで0.98、評価用データで0.97と報告されています。研究チームはこのモデルを、色の三つの数値を入力すると混入割合を予測するウェブアプリとして実装しました。

ヨウ素を使った検査では、米粉の割合が高いほど吸光度が上がり、論文は米粉濃度との間に強い正の関係(相関係数0.9866)があったと報告しています。ただし、混入割合が低い範囲では値がほぼ横ばいで、統計的にはっきり差が出たのは高い混入割合でした。著者らはこの検査が実験室規模で米粉混入の検出に適していると結論づけています。

人の目による評価では、米粉が5%以上混ざると色の違いが統計的に識別でき、10%以上では30人全員が正しく見分けました。一方、2.5%以下では正確には見分けられませんでした。顕微鏡観察では、低い混入割合では米粉の粒はわずかしか見えず判別が難しかったものの、20%では半透明の米粉粒が目立って増え、混入が明確に確認できたとしています。

この研究が示すこと

この研究は、色彩計で得られる簡単な色の数値と機械学習を組み合わせることで、ターメリック粉末への米粉の混入割合を推定するツールを作れることを示しました。人の目では見分けにくい少量の混入もある中で、色の数値に基づく手早く手軽な判定の手段を提示した点に、著者らは食品の品質確保への貢献を見いだしています。

原著論文の著者・所属:Manhari Palliyaguruge(Department of Food Science and Technology, University of Peradeniya, Sri Lanka)、Thilina Abekoon(Water Resources Management and Soft Computing Research Laboratory, Sri Lanka)、Hirushan Sajindra(Faculty of Engineering and Design, Atlantic Technological University, Ireland)、Rasanjali Samarakoon(Department of Food Science and Technology, University of Peradeniya, Sri Lanka)、Namal Rathnayake(Advanced Institute for Marine Ecosystem Change, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, Japan)、Upaka Rathnayake(Faculty of Engineering and Design, Atlantic Technological University, Ireland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Manhari Palliyaguruge, Thilina Abekoon, Hirushan Sajindra, et al. Ensuring Turmeric Authenticity: A Web-Based AI Approach for Detecting Rice Flour Adulteration. Journal of Data Science and Intelligent Systems 2026-08-14. DOI: 10.47852/bonviewjdsis62027803. 原著ライセンス:CC BY.