赤ちゃんへの授乳やミルクの与え方が、その後の食習慣や発育にどうつながるのかは、育児に関わる誰もが気になるテーマです。授乳中の親子のやり取りを観察して数値化する「Nursing Child Assessment Feeding Scale(NCAFS)」という評価尺度は、臨床や研究の現場で長年使われてきました。しかし、この尺度のスコアが実際に乳児の食べ方や食事内容、成長と関係しているのかどうかは、これまで十分に調べられていませんでした。今回、健康な乳児を対象にした前向きコホート研究で、この関連性が検証されました。
どのように調べたのか
研究チームは、健康な乳児227人を対象に、生後0.5か月・2か月・4か月の時点でNCAFSによる評価を実施しました。NCAFSとは別に、授乳やミルクを与える場面を観察して母親の授乳行動と乳児の食べる様子も記録し、あわせて母親向けの授乳スタイル質問票(Infant Feeding Styles Questionnaire)、乳児の食行動を尋ねるBaby Eating Behavior Questionnaire、幼児向けのChildren's Eating Behavior Questionnaire-Toddler、食事に関する質問票も用いました。さらに、赤ちゃんの吸啜(きゅうてつ、乳を吸う動作)の様子や身体計測値も取得しています。これらのデータは各評価時点で同時に測定するとともに、生後12か月の時点でも追跡調査されました。得られたデータは、繰り返し測定を扱う統計モデル(混合モデル)で分析されています。
何がわかったのか
結果として、NCAFSのスコアと母親の授乳行動、乳児の食行動、食事内容、成長との間に見られた関連の多くは、統計的に意味のある差とはいえない「ほぼ無相関」なものでした。ただしその中でも、いくつかの限定的な関連が示されています。同じ時点での関連としては、別の授乳場面を待っている間に母親がよく声かけをしていることは、母親の「合図への敏感さ」や「認知的成長を促す関わり」のスコアの高さと結びついていました。また授乳中の声かけの多さは、「社会情緒的な成長を促す関わり」や「認知的成長を促す関わり」のスコアの高さとも関連していました。吸啜時間が短いことは乳児の「合図の分かりやすさ」のスコアの高さと、授乳時間が長いことは母親の関わりのスコアや乳児の「養育者への反応性」のスコアの高さと関連が見られました。さらに、哺乳びんでの授乳の強さ(頻度や量の程度)が低いことは、母親の「社会情緒的な成長を促す関わり」のスコアの高さと結びついていました。一方、時間を追った関連としては、母親の「合図への敏感さ」のスコアが高いほど、その後の体重と身長のバランスを示す指標(体重身長比のzスコア)の月ごとの変化が小さい傾向が、また母親の「社会情緒的な成長を促す関わり」のスコアが高いほど、その後の母乳による授乳の強さが大きい傾向が見られました。
この研究をどう読むか
著者らが結論づけているように、今回の分析で確認された関連の多くは無相関であり、NCAFSのスコアが乳児の食行動や食事内容、成長を広く予測するとは言えない結果でした。見られた関連も、授乳中の社会的なやり取りの多さや吸啜時間の短さ、授乳時間の長さ、哺乳びん授乳の強さの低さといった一部の項目に限られており、因果関係を示すものでもありません。この研究は227人という一つのコホートを対象にした前向き研究であり、結果がすべての乳児や家庭環境に当てはまると確定づけるものではない点に注意が必要です。
まとめ
今回の前向きコホート研究では、授乳場面を観察するNCAFSのスコアと、母親の授乳行動、乳児の食行動、食事、成長との関連の多くが「ほぼ無相関」であったことが報告されました。授乳中の声かけの多さや吸啜時間、授乳時間、哺乳びん授乳の強さなど一部の項目でのみ限定的な関連が示唆されており、今後さらなる研究の蓄積が待たれるところです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Cin Cin Tan, Julie Sturza, Alison K. Ventura, et al. Primarily Null Associations Between the Nursing Child Assessment Feeding Scale and Maternal Feeding Behaviors, Infant Eating Behaviors, Diet, and Growth: A Prospective Cohort Study. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18152532. 原著ライセンス: cc-by.