揚げ物や炒め物で油を高温で繰り返し使うと、油が酸化して過酸化物や有害なアルデヒドなど、体に負担をかける可能性のある物質が生じることが知られています。こうした酸化産物は体内の酸化ストレスを高め、肝臓や腎臓などさまざまな臓器に影響を及ぼす一因になるとされています。今回紹介する研究は、加熱で酸化させたヒマワリ油に、香辛料由来の成分として知られる「クルクミン」をナノ粒子化した「クルクミンナノエマルション(CNE)」と、精製処理をしていない「バージンココナッツオイル(VCO)」を組み合わせて加えることで、油そのものの劣化や、それを摂取したラットへの影響がどう変化するかを調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームはまず、微小な粒子として安定して分散するように設計されたクルクミンナノエマルション(CNE)を作製しました。このCNEは、粒子サイズが非常に小さく、クルクミンを高い効率で内部に取り込み、安定性にも優れていたと報告されています。
次に、加熱によって酸化ストレスを受けたヒマワリ油(HSO)に、VCOを20%(重量比)、CNEを200ppm加え、油の酸化の進み具合を示す指標(過酸化物価、p-アニシジン価、総極性化合物量、有害なアルデヒド類)を測定しました。その結果、VCOとCNEを併用した場合、それぞれを単独で加えた場合や、酸化防止剤として使われるTBHQを加えた場合と比べても、これらの酸化指標がより大きく改善されたことが示されています。
続いて、64匹の雄のウィスターラットを用いた動物実験が行われました。ラットにさまざまな種類の油を含む餌を2か月間与え、血液中の生化学的な指標、酸化ストレスや炎症に関わる指標、そして肝臓と腎臓の組織を顕微鏡で調べる病理学的検査が行われました。あわせて、炎症に関わるNF-κBという経路と、抗酸化反応に関わるNrf2という経路について、免疫組織化学的な手法で活性の様子も調べられています。
結果として、加熱酸化させたヒマワリ油(HSO)を与えたラットでは、肝臓と腎臓に明らかな障害が認められ、血中脂質バランスの乱れ、酸化ストレスの上昇、炎症反応の亢進が見られたと報告されています。これに対し、HSOにVCOとCNEを組み合わせて与えた群では、これらの変化が大きく改善され、生化学的な指標はほぼ正常値に近いレベルまで回復し、組織の損傷も軽減されたとされています。メカニズムとしては、炎症に関わるNF-κB経路の働きが強く抑えられる一方、抗酸化反応に関わるNrf2経路が活性化していたことが確認されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、酸化した油に含まれる有害な酸化産物と、それによる体への影響を、実験室内での油の分析と、ラットを用いた動物実験の両面から検討したものです。今回の結果は特定の実験条件(加熱の程度、添加量、投与期間など)のもとで得られたものであり、ヒトにそのまま当てはまるかどうかは、この要旨からは判断できません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意しておくとよいでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、加熱で酸化したヒマワリ油に、クルクミンナノエマルションとバージンココナッツオイルを組み合わせて加えることで、油自体の酸化の進行が抑えられるとともに、ラットにおける肝臓・腎臓への影響や酸化ストレス、炎症反応が軽減される可能性が示唆されています。研究チームは、この組み合わせが、加熱した食用油による毒性を減らし、より安全な油の加工・利用につながる自然由来のアプローチになりうると述べています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:クルクミンナノエマルションとバージンココナッツオイルの相乗的保護効果:ヒマワリ油の熱酸化とラットにおける肝腎毒性に対して(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)