大豆油や菜種油などを搾ったあとに残る「油糧粕(ゆりょうかす)」は、タンパク質や食物繊維、ミネラルを豊富に含む副産物です。しかし、そのままでは消化を妨げる成分(抗栄養因子)が含まれているため、飼料や食品としての高付加価値な利用が制限されてきました。中国・江蘇大学食品科学工程学院などの研究グループは、微生物を使ってこの油糧粕を発酵させる「固体発酵(こたいはっこう)」技術について、これまでの知見を整理した総説を発表しました。
どんな微生物がどんな役割を担うのか
この総説では、油糧粕の発酵に使われる代表的な微生物とその働きが整理されています。Bacillus属(バチルス属)の細菌は、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)や抗菌性のペプチドを作り出す性質があり、粕に含まれる大きなタンパク質を分解しつつ、雑菌の繁殖を抑える役割を担うとされています。Lactobacillus属(乳酸菌)は酸や香気成分を生み出すことで、発酵物の風味を良くし、安全性を高める働きがあるとまとめられています。一方、Aspergillus属(こうじかび)のなかまは、セルラーゼやフィターゼといった酵素を持ち、細胞壁を分解したり、ミネラルの吸収を妨げるフィチン酸を分解したりする役割を果たすと説明されています。
発酵のやり方を工夫することで何が変わるのか
単一の菌だけでなく、複数の菌を組み合わせる「混合発酵」によって、それぞれの菌が持つ機能を補い合わせる工夫も紹介されています。さらに、酵素と菌を組み合わせて相乗効果を狙う手法や、発酵の段階を分けて進める「段階的発酵」、物理的な刺激(物理場)を補助的に用いる方法なども取り上げられ、これらが発酵の効率や、できあがる製品の栄養的な質の向上につながる可能性があるとされています。
発酵させた油糧粕は何に使えるのか
発酵によって処理された油糧粕は、まず良質なタンパク質を含む飼料としての利用が期待されるとされています。それに加えて、発酵の過程で生まれる機能性ペプチドや活性多糖には、抗酸化作用や免疫を調整する働きを持つものが含まれる可能性があり、機能性食品やバイオメディシン(生物医学)分野への応用の可能性も指摘されています。ただし、これらはあくまで報告・示唆されている段階であり、効果が確立されたものと断定はされていません。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この論文は、これまでに発表された研究をまとめた総説(レビュー)であり、著者ら自身の新しい実験データを示すものではありません。著者らは今後の課題として、より高性能な菌株の選び方、発酵の進み具合をリアルタイムで把握するインテリジェントな工程監視、そして活性成分を環境負荷の少ない方法で取り出す「グリーンな調製法」の確立が必要だと述べています。つまり、油糧粕の発酵活用にはまだ発展途上の部分が多く、実用化に向けてはさらなる研究の積み重ねが必要とされています。
まとめ
油の搾りかすという廃棄されがちな副産物も、適切な微生物と発酵の工夫を組み合わせることで、飼料や機能性食品の原料として活用できる可能性が示されています。今回の総説は、そうした技術の現在地と今後の課題を整理したものであり、特定の効果を保証するものではない点に留意しつつ、今後の技術発展が注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Jingyu Wei, Chenchen Yao, Musfira Akram, et al. Advances in Solid-State Fermentation Technology for Oilseed Meal: Strain Selection, Fermentation Strategies, and High-Value Applications. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15183177. 原著ライセンス: cc-by.