この研究は、ヨルダン、エジプトの研究機関の研究論文です。

掲載誌:PLoS ONE

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ビタミンDは、体内でカルシウムのバランスを保つうえで重要な栄養素です。カルシウムは骨や歯の健康、筋肉の収縮といった働きに欠かせません。論文によると、ビタミンDが不足した状態は、筋力の低下や骨折リスクの増加、心血管疾患や自己免疫疾患などと関連づけられて報告されてきました。

著者らは、中東・北アフリカ地域でビタミンDの不足・欠乏の割合が高いことが複数の先行研究で報告されている点に注目しています。たとえばヨルダンの成人を対象にした研究では85%以上が欠乏または不足にあたり、エジプトでも成人の多くと子どもの約70%に同様の状態がみられたと紹介されています。こうした背景を踏まえ、研究チームは、エジプトとヨルダンに住む人々がどの程度ビタミンDのサプリメントを使っているのか、またどのような要因が利用と結びついているのかを調べました。あわせて、血中ビタミンDを十分な水準に保つために人々が実際にとっている行動や、情報をどこから得ているのかについても確認しています。

何を、どのように調べたか

研究は、ある一時点の状況を尋ねる「横断的」な質問紙調査として行われました。参加者自身が回答する形式で、オンラインのフォームが用いられています。調査期間は2024年4月15日から10月30日までで、対象はエジプトまたはヨルダンに住む18歳を超える成人です。参加者は公共の場やソーシャルメディアを通じて募られ、回答前にオンラインで同意を得たうえ、個人が特定される情報は集めない匿名の形がとられました。研究はヨルダン科学技術大学の施設内審査委員会の承認を受けています。

質問票は、年齢・性別・国籍・学歴・就労状況・医療保険の有無といった基本情報、健康状態やビタミンDサプリメントの使用と血中濃度検査の経験、そしてビタミンDの水準を保つための行動や情報源という三つの部分で構成されました。2名の専門家が内容と質問のわかりやすさを確認し、両国で予備調査を行ったうえで質問が修正されています。分析では、複数の要因を同時に考慮して「サプリメントを使っているかどうか」を予測する多変量ロジスティック回帰が用いられました。これは、年齢や性別などが互いに影響し合う可能性を織り込みながら、それぞれの要因と利用の結びつきを見る方法です。最終的な回答者は1,181人で、エジプトが47.6%、ヨルダンが52.4%を占めました。

報告された主な結果

著者らの報告によれば、全体の36.7%がビタミンDのサプリメントを使用していました。内訳はヨルダンで45.2%、エジプトで27.2%と差がみられています。

全体を対象とした解析では、サプリメントの利用と結びついていたのは、女性であること、収入が高いこと、慢性疾患があること、ビタミンDの血中濃度検査を受けたことがあること、そして欠乏の症状を知っていることでした。なかでも検査経験との結びつきが際立っており、オッズ比は9.38(95%信頼区間6.66〜13.20)と報告されています。ここでいうオッズ比とは、ある条件にあてはまる人があてはまらない人と比べてどれだけ利用しやすいかを表す比のことです。ただし、この調査は一時点の関連を示すものであり、どちらが原因でどちらが結果かを示すものではありません。

国ごとに分けた解析では違いも現れました。エジプトでは年齢と収入が利用と関連し、60歳超の層と比べて50歳未満の層では利用が少ない傾向が報告されています。また中所得層と比べ、高所得層では利用が多く、低所得層では少ないという結果でした。一方ヨルダンでは、女性であること、退職していること、慢性疾患があること、検査を受けたこと、症状を知っていることが利用の多さと結びつき、修士・博士といった高い学位を持つことは利用の少なさと関連していました。

ビタミンDに関する情報源としては、両国とも最も多かったのがインターネット(エジプト86.5%、ヨルダン82.4%)で、次いで学校や大学のカリキュラム、医療従事者が続きました。テレビや新聞、友人・家族を情報源とする割合は、ヨルダンよりエジプトで高いという差も報告されています。また、ビタミンDの水準を高めるための行動としては、日光に当たること(84.6%)、ビタミンDを多く含む食品をとること(79.6%)、血中濃度を確認すること(49.5%)、サプリメントを使うこと(36.7%)が挙げられました。このうち血中濃度の確認とサプリメント利用は、エジプトよりヨルダンで多くみられています。

著者らは研究の限界として、横断的な設計のため関連の向きまではわからないこと、自己申告に基づくため、望ましく見せようとする傾向や記憶違いの影響を受けうることを挙げています。

この研究が伝えていること

この調査が描き出したのは、ビタミンDの不足が広く報告されている地域で、人々がサプリメントとどう向き合っているかという実像です。利用は3人に1人程度にとどまり、しかもその広がりは国によって、また性別・収入・健康状態・検査経験といった条件によって偏っていました。

とりわけ、血中濃度の検査を受けたことがあるかどうかが利用と強く結びついていた点は、検査という入り口へのアクセスが、その後の行動と分かちがたく結びついている様子を示しています。著者らは、検査結果や症状に基づいてサプリメントを使うことは、過剰摂取による高カルシウム血症や腎結石といった合併症を避けるうえで重要だとも述べています。情報源としてインターネットが最も多く使われていたという結果とあわせて考えると、人々がどこから知識を得て、どのように判断しているかを把握することの意味が浮かび上がってきます。

著者:TaqiAldeen Khabour(Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Jordan University of Science and Technology, Irbid, Jordan)、Omar F. Khabour(Department of Medical Laboratory Science, Faculty of Applied Medical Laboratory, Jordan University of Science and Technology, Irbid, Jordan)、Salwa F. M. Hassanein(Department of Food Science and Technology, Ain Shams University, Cairo, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):TaqiAldeen Khabour, Omar F. Khabour, Salwa F. M. Hassanein. Vitamin D supplement use in Egypt and Jordan and associated factors: A survey-based study. PLoS ONE 2026-08-28. DOI: 10.1371/journal.pone.0357029. 原著ライセンス:CC BY.