海の魚がマイクロプラスチックを取り込んでいる、という話を耳にしたことがある人は多いかもしれません。では、そうした環境が実際に子どもの体にどう関わっているのでしょうか。インドネシア・ジェンベル県の沿岸地域プゲル郡で行われたある研究が、発育阻害(スタンティング)がみられる幼児を対象に、母乳と便の中のマイクロプラスチックを調べました。
研究の背景
海洋中のマイクロプラスチックは魚などの海産物を汚染しており、それを食べることで人の健康に影響が及ぶ可能性が指摘されています。研究チームは、このような経路が幼児の発育阻害に関わっているのではないかという問題意識から、沿岸地域に暮らす幼児の食事や排せつ物を調べることにしました。
研究でわかったこと
この研究は横断的な観察研究で、発育阻害がみられる幼児10人を対象者として選び、質問票によるマイクロプラスチック汚染に関する聞き取り調査を行いました。あわせて母乳と幼児の便のサンプルを採取し、密度分離、メンブレンろ過、顕微鏡観察といった方法で検査したうえで、結果を記述的に分析しています。
その結果、母乳と幼児の便のサンプルすべてからマイクロプラスチックが検出されました。検出された形状は繊維状のものが最も多く(母乳で5mLあたり平均4.8個、便で5gあたり平均19.9個)、次いでフィラメント状のもの(母乳で5mLあたり平均3.7個、便で5gあたり平均6.8個)が確認されています。
汚染の背景として考えられる要因としては、使い捨てプラスチックごみの処理が十分でないこと、加工された海産物を食べる習慣があること、熱い食品をプラスチック容器に入れて食べること、ボトル入りの飲料水を利用することなどが挙げられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究では母乳からもマイクロプラスチックが検出されましたが、研究チームは「だからといって母乳育児をやめることが正しい解決策ではない」と述べています。むしろ、使い捨てプラスチックの使用を減らし、プラスチックごみを持続可能な形で処理することで、環境中のマイクロプラスチックそのものを減らし、幼児が曝露する機会を防ぐことが重要だとしています。
この調査は10人という限られた人数を対象にした症例研究であり、特定の地域の状況を記述したものです。マイクロプラスチックの検出と発育阻害との因果関係を直接証明したものではなく、一つの研究として今回の結果が得られたと理解するのが適切でしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、インドネシアの沿岸地域に暮らす幼児の母乳と便のすべてのサンプルからマイクロプラスチックが検出され、使い捨てプラスチックの利用や海産物の加工消費などが汚染要因として考えられると報告されています。研究チームは母乳育児の継続を前提としたうえで、プラスチックごみの削減や適切な処理が幼児のマイクロプラスチック曝露を防ぐうえで重要だとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:母乳と糞便中のマイクロプラスチック:インドネシア・ジェンベル県プゲル郡における発育阻害幼児の症例研究(環境保健ジャーナル・2026年07月)