著者の所属・活動拠点の国は、フランスです。
掲載誌:Poultry Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:自発的な食べ方で肝臓の脂肪蓄積はどこまで進むか
フォアグラは主に、マガモ系とバリケン(ノバリケン)を掛け合わせた雑種「ラバダック」から作られます。ラバダックは肝臓に脂肪をためやすい代謝の特徴を持っています。この性質を利用するため、現在は大量の飼料を1日2回、10〜11日間にわたって強制的に食べさせる「強制給餌」が行われています。論文によると、こうして得られる肝臓は通常500〜700グラムになり、総脂質の割合は60%近くに達します。
強制給餌とは別に、アヒルの食行動そのものに働きかける方法も模索されています。その候補の一つが「分割給餌」です。絶食の時間と、短時間の食事の時間を交互に繰り返す方法で、哺乳類や鳥類では、絶食後に食べる量が増えたり、エネルギーをためる代謝が活発になったりすることが報告されています。今回の研究では、1回1時間の食事中は量を制限せず自由に食べさせました。
研究チームはすでに、この方法をラバダックで試していました。今回はその続きとして、強制給餌のプログラム全体に相当する期間にわたって分割給餌を続け、二つの点を調べました。一つは、食べる量の変化と、普段より多く食べる「過食」が続くかどうか。もう一つは、肝臓への脂肪や糖のたまり方と、その背景にある代謝の変化です。
どのように調べたか
実験にはラバダックを使い、生後59日から分割給餌を始めました。最初の5日間は慣らし期間で、1日1回、朝に1時間だけ自由に食べられるようにし、残りの23時間は絶食としました。その後の「肥育期」では、朝と夜の1時間ずつ、12時間おきに計21回の食事を与えました。分割給餌が終わると、24時間いつでも食べられる自由摂食に戻しました。
研究チームは食事ごとに1羽あたりの摂食量を記録しました。あわせて、体重、肝臓の重さ、皮下脂肪や腹部脂肪の重さ、肝臓の色、肝臓に含まれるグリコーゲン(ブドウ糖を貯蔵する形)・脂質・中性脂肪(トリグリセリド)の量を測っています。さらに血液中の成分と、糖や脂質の合成・分解・輸送に関わる肝臓の遺伝子の働き具合も調べました。測定は、絶食明けの時点、奇数回目の食事の6時間後、自由摂食に戻した後の各時点で行いました。
主な結果:過食は短期間で収まり、肝臓の脂質も元の水準へ
慣らし期間のあいだに、1回の食事で食べる量は1羽平均約155グラムから約316グラムへと約2倍に増えました。肥育期の初日は1日の摂食量が約585グラムとなり、慣らし期間最終日の約259グラムの2.25倍に達しました。ところが3回目の食事では約58グラムまで急減し、実験中で最も少ない量になりました。その後は、夜の食事で多く、朝の食事で少なく食べるパターンが続きました。1日の摂食量が300グラムを超えていたのは肥育期の4日目までです。夜の食事での摂食量は、自由摂食に戻したときの1日平均(約212グラム)と統計的な差がありませんでした。
肝臓の中身も、摂食量と同じように一時的な変化を示しました。3回目の食事の6時間後には、肝臓に占める総脂質の割合が絶食明けの約5.5%から約7.7%に、中性脂肪は約1.0%から約3.7%(約3.8倍)に上がりました。しかしその後は徐々に下がり、絶食明けと同程度の水準に戻りました。研究チームのまとめでも、肝臓の重さは初期に増えた後、次第に減少しています。皮下脂肪や腹部脂肪の重さには、時点による差が見られませんでした。
一方、グリコーゲンは肥育期を通じて高い水準を保ち、自由摂食に戻した後の約6.1%より高い時点が複数ありました。肝臓の色は明るくなる傾向を示しましたが、強制給餌で報告されている値と比べると変化はずっと小さいものでした。脂肪酸の合成など脂質づくりに関わる遺伝子群は、絶食明けから3回目の食事後にかけて働きが強まりました。これらの遺伝子の働きは肝臓の重さや中性脂肪量と正の相関を示しており、研究チームは肝臓の脂質・糖の増加がこうした遺伝子の働きの高まりと関連していたと報告しています。血糖値は、絶食中でも食後でも比較的安定していました。
この研究が示すこと
著者らは、この分割給餌の方法では食事を重ねても肝臓に脂質が蓄積し続けることはなく、その主な理由は過食が一時的にしか続かなかったことにあると結論づけています。従来の強制給餌の代わりとして成り立つにはほど遠い、というのが著者らの評価です。そのうえで、断続的な食事のもとでアヒルが食べる量をどう調整し、肝臓の代謝がどう変わるのかについて、新しい知見をもたらしたとしています。
なお著者ら自身も、限界をいくつか挙げています。1時間の食事中の食べ方そのものは観察していないこと、食事時の気温が比較的高かったこと、強制給餌用のでんぷんが多い飼料ではなく通常の育成用飼料を使ったこと、時点によっては調べた個体数が少なかったこと、などです。
原著論文の著者・所属:Laura-Lou Zwick(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Romain Szczepaniak(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Kevin Coustaut(AVIPOLE, INRAE, Benquet, 40280, France)、Tsogzolmaa Galbadrakh(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Marie Lasserre(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Yan Fericelli(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Karine Ricaud(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Sandra Biasutti(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Karine Gontier(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Jérôme Roy(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Stéphane Panserat(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France)、Marianne Houssier(Université de Pau et des Pays de L'Adour, INRAE, NUMEA, Mont de Marsan, 40000, France. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Laura-Lou Zwick, Romain Szczepaniak, Kevin Coustaut, et al. Adaptive responses to fractionated feeding: transient hyperphagia and reversible hepatic lipid deposition in mule ducks. Poultry Science 2026-09-16. DOI: 10.1016/j.psj.2026.107790. 原著ライセンス:CC BY.