この研究は、ノルウェーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Algal Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コンブ類は持続可能な食品・飼料の原料として有望とされていますが、著者らは、ヨウ素含量の高さが商業利用や製品への配合を進める際の規制・加工上の大きな課題として残っていると指摘しています。そこで、ヨウ素の少ないコンブを養殖用に選抜するという方向が考えられます。

ただし、そこには懸念があります。論文によれば、コンブ類においてヨウ素は抗酸化物質としてはたらいており、ヨウ素の少ない個体を選ぶとストレスに弱くなる可能性があるというのです。臭素も同様の機能をもつ可能性があり、この二つのハロゲン(ヨウ素・臭素のような元素のグループ)のはたらきの中心にあるのが、バナジウムを必要とする酵素「バナジウム依存性ハロペルオキシダーゼ(vHPO)」だと説明されています。著者らはこの点を確かめるため、強い光というストレス条件のもとでコンブの応答を調べました。

何を調べたか

研究チームは、サトウコンブ(Saccharina latissima)を対象に、光の強さを高めた条件にさらしました。用いたのは、大きく育った「胞子体」の段階と、顕微鏡でしか見えない微小な「配偶体」の段階の両方です。コンブは生涯のなかでこの二つの姿をとるため、段階ごとの応答を比べられる設計になっています。

胞子体については、成長と元素組成(ヨウ素・臭素・バナジウムの含量)という生理的な応答を測定しました。あわせて、胞子体と配偶体の両方について、どの遺伝子がどれだけはたらいているかを網羅的にみる「トランスクリプトーム」解析を行い、遺伝子発現の応答を調べています。

主な報告結果

著者らは、断定できるものではないと留保しつつも、得られた結果はヨウ素・臭素・vHPOのいずれもサトウコンブの強光応答の中心ではないことを示すものだと報告しています。代わりに、ほかのさまざまな抗酸化システムの遺伝子の発現が高まっており、そのうちいくつかは胞子体と配偶体の両方で共通して上昇していました。

さらに、胞子体の個体どうしを比べると、光を強めたときの成長の反応にも、ヨウ素・臭素・バナジウムの含量にも、はっきりした違いがみられました。著者らは、この個体差があることから、強い光へのストレス耐性を損なわずにこれらの形質を育種によって選抜することが可能だろうと述べています。

この研究が示すこと

ヨウ素が少ないコンブを選ぶと強光ストレスに弱くなるのではないか、という懸念に対して、この研究は、強い光への応答を支えているのは主にほかの抗酸化のしくみだという見方を提示しました。個体ごとに含量や成長反応が異なるという報告も、選抜の手がかりが集団のなかに存在することを意味します。

抄録の範囲で著者ら自身も結果は決定的ではないと書き添えており、そこは慎重に受け止める必要があります。それでも、コンブを食品や飼料として利用するうえでの課題を、元素のはたらきと遺伝子の応答の両面からとらえ直す一歩として位置づけられる研究です。

著者:Åshild Ergon(Dept. of Plant Sciences, Faculty of Biosciences, Norwegian University of Life Sciences, Postboks 5003, 1432, Ås, Norway)、Mallikarjuna Rao Kovi(Dept. of Plant Sciences, Faculty of Biosciences, Norwegian University of Life Sciences, Postboks 5003, 1432, Ås, Norway)、Franz Goecke(Dept. of Plant Sciences, Faculty of Biosciences, Norwegian University of Life Sciences, Postboks 5003, 1432, Ås, Norway)、Akhil Reddy Pashapu(Dept. of Plant Sciences, Faculty of Biosciences, Norwegian University of Life Sciences, Postboks 5003, 1432, Ås, Norway)、S.O.A. Haughom(Dept. of Plant Sciences, Faculty of Biosciences, Norwegian University of Life Sciences, Postboks 5003, 1432, Ås, Norway)、David Aldridge(Department of Fisheries and New Biomarine Industry, SINTEF Ocean AS, 7010, Trondheim, Norway)、Silje Forbord(Department of Fisheries and New Biomarine Industry, SINTEF Ocean AS, 7010, Trondheim, Norway)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Åshild Ergon, Mallikarjuna Rao Kovi, Franz Goecke, et al. Responses of sugar kelp to higher light intensity: Growth, gene expression and content of iodine, bromine and vanadium. Algal Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.algal.2026.104985. 原著ライセンス:CC BY.