アグアス・フレスカスは、果物や種子、花などを水と混ぜて作るメキシコの伝統的な冷たい飲み物で、屋台や市場、レストランなど幅広い場所で日常的に売られています。常温の水や氷、開放容器を使うことが多いため、作り方や保存方法によっては微生物汚染のリスクが生じやすい飲料でもあります。今回紹介する研究は、この身近な飲み物の衛生状態を、販売される市場のタイプ別に比較したものです。
研究チームは、メキシコの規格NOM-251にもとづく衛生基準がどの程度守られているかに着目し、販売の場を三つのタイプに分けて調べました。具体的には、しっかりした品質管理システムを持つ有名店(RMQS)、NOM-251の基準のみに従う有名ブランド店(RMN)、そして一般的な市場の露店(PM)です。各タイプの店舗で販売されているアグアス・フレスカスのサンプルを採取し、食品の衛生状態を示す指標として糞便性大腸菌群(fecal coliform)と大腸菌(E. coli)の数を測定しました。あわせて、マスクや帽子(ヘアネット)、手袋の着用状況といった、NOM-251が定める衛生管理の実践面についても現地で確認しています。
市場のタイプによって衛生状態に大きな差
測定の結果、品質管理システムを備えたRMQSのサンプルは、糞便性大腸菌群・大腸菌のいずれについても100%が許容基準を満たしていたと報告されています。一方、有名ブランド店であるRMNでは、糞便性大腸菌群の基準を満たさないサンプルが53%、大腸菌の基準を満たさないサンプルが40%あったとされています。さらに一般的な市場の露店であるPMでは、糞便性大腸菌群で75%、大腸菌で51%のサンプルが基準を満たしていなかったと述べられています。この結果から、同じアグアス・フレスカスでも、販売される場所によって衛生状態に明確な差があることが示唆されています。
マスク・ヘアネット・手袋の着用にも課題
この研究では、微生物検査だけでなく、調理・販売にあたる人の衛生的な習慣にも目が向けられています。RMNやPMの店舗では、食品衛生に関わる基本的な実践が十分でない場面が見られたと報告されており、具体的にはマスクの着用率が60%、ヘアネットの着用率が43%、手袋の着用率が30%にとどまっていたとされています。また、飲み物の調理や保存の方法についても、いくつかの点で不備が見られたと述べられています。こうした結果は、衛生管理のルールが存在していても、それが現場で徹底されているかどうかは別問題であることを示していると言えそうです。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、メキシコ国内の三つのタイプの市場で採取したアグアス・フレスカスを対象にした一つの調査であり、結果がメキシコ全体やすべての時期・地域に当てはまると確定づけるものではありません。また、糞便性大腸菌群や大腸菌の検出は衛生管理の指標であって、飲んだ人に実際に健康影響が生じたかどうかを直接示すものではない点にも注意が必要です。著者らは、確立された品質管理システムの有無によって衛生状態に差が生じている可能性を指摘しており、衛生practices(実践)の教育や規制の運用強化が必要だとしています。なお、この研究は日本の食品や機関に関するものではなく、対象となった著者の所属機関もすべてメキシコの大学です。
まとめ
身近な冷たい飲み物であるアグアス・フレスカスをめぐるこの研究は、しっかりした品質管理の仕組みを持つ店舗と、そうでない店舗との間で、微生物学的な衛生状態やマスク・手袋などの着用習慣に差があることを示しました。屋台や市場で売られる飲食物の安全性は、規則の有無だけでなく、それが実際の現場でどこまで実践されているかにも左右されることを、あらためて示す研究だと言えそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Eduardo Sánchez-García, Lesly Mayte Villegas Hernández, Mariana F. Pimentel González, et al. Microbiological Quality of “Aguas Frescas”: A Reflection of Mexico’s Food Safety Culture. ハイジーン (2026). DOI: 10.3390/hygiene6030046. 原著ライセンス: cc-by.