著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

取り組みの目的

インドネシアの研究チームは、ラマダン(イスラム教の断食月)の時期に合わせて、胃の不調の予防とウコンの適切な使い方を住民に伝える健康教育を行い、その前後で知識がどう変わったかを報告しました。

断食中は、食事の時間、日没後の食事(イフタール)から夜明け前の食事(サフール)までの間隔、水分のとり方、睡眠、薬を飲む時間などが普段と変わります。著者らは、こうした変化が一部の人で胃の不調に関わる可能性があるとしています。一方で、断食そのものがすべての人に胃炎を起こすとは言えず、ラマダンと消化器の不調の関係についての研究結果はまだ一致していないとも述べています。

論文は用語の違いにも注意を促しています。地域では胃の不調が「マーグ」などの一般的な言葉でまとめて呼ばれがちですが、胃炎は胃の粘膜の炎症で、診断には内視鏡や組織の検査が関わり、みぞおちの痛みだけでは判断できません。みぞおちの痛みや食後の膨満感などの症状の集まりは「ディスペプシア(消化不良)」と呼ばれ、胃炎とは区別されます。

ウコンは、地域で消化の不調に昔から使われてきた身近な植物です。著者らは、規格化されたウコン製剤が機能性ディスペプシアの症状を改善しうるとした臨床研究がある一方、その結果を家庭で作るウコン粉末にそのまま当てはめることはできないと指摘しています。そのため、この取り組みではウコンを治療の代わりではなく補助的な素材として紹介し、根拠の限界、適量、衛生的な作り方、症状が続くときや危険な兆候があるときは医療者に相談することもあわせて伝えることを目指しました。

何をどのように調べたか

活動は2023年4月8日、インドネシア・プカンバル市アイルプティ地区の一つの町内(RT 03)で行われました。対象は、訪問時に会えて最後まで参加に同意した住民50人です。

チームは家を一軒ずつ回り、一人あたり約10分間、口頭で説明しました。あわせて、胃の不調、ラマダン中に症状を起こしたり悪化させたりしうる要因、予防法、受診が必要な危険な兆候、ウコンの適切な利用をまとめたリーフレットを渡し、質問や話し合いの時間も設けました。

知識は、15の文に「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの4段階で答える質問票で測りました。同じ質問票を説明の前後に使い、点数を百分率に換算して比べています。比較対象となる別のグループを置かない「1群の事前・事後比較」という方法です。

主な結果

参加者は女性が66%、36〜45歳が34%、最終学歴が高校の人が64%で、98%が月収250万ルピア未満でした。

知識の平均点は、説明前の56.63%から説明後の72.20%へ上がりました。上昇幅は平均15.57ポイントで、論文によると参加者全員が事前より事後に高い点数をとりました。統計的にも意味のある差だったと報告されています(p<0.001)。

説明前の聞き取りでは、一部の参加者が「マーグ」を主に食事の時間の乱れと結びつけて捉えていました。食べ物の種類や量、食後の習慣、薬の使い方、危険な兆候、ウコンなど植物由来の素材を使う際の限界については、まだ十分には理解されていなかったといいます。

この結果が示すこと

著者らは、リーフレットを使った戸別訪問の健康教育の後に、ラマダン中の胃の不調の予防とウコンの適切な利用に関する住民の知識が高まったと結論づけています。

ただし論文は、限界も明確に示しています。測定したのは説明直後の知識の変化だけで、その知識が長く保たれるか、実際の行動につながるかは確かめていません。また、ウコンが胃炎を予防・改善するという臨床的な効果を示したものではありません。口頭の説明とリーフレットを同時に使い、比較のグループも設けていないため、それぞれの効果を分けて評価することも、他の教育方法より優れていると言うこともできません。

この報告は、身近なハーブであるウコンを過大な効能の宣伝ではなく、根拠の限界とあわせて伝えようとした地域での健康教育の一例であり、その直後に住民の知識の点数が上がったことを示しています。

原著論文の著者・所属:Ferdy Firmansyah(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)、Melzi Octaviani(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)、Musyirna Rahmah(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)、Alfitra Raisya(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)、Alimia Woelandri(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)、Putri Binti Jakfar(Sekolah Tinggi Ilmu Farmasi Riau)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ferdy Firmansyah, Melzi Octaviani, Musyirna Rahmah, Alfitra Raisya, Alimia Woelandri, Putri Binti Jakfar Edukasi Pemanfaatan Kunyit dan Pencegahan Gastritis Selama Ramadan untuk Meningkatkan Pengetahuan Masyarakat. JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM) 2026-07-30. DOI: 10.33024/jkpm.v9i8.26800. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。