この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:PERISAI Jurnal Pendidikan dan Riset Ilmu Sains
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
石油由来のプラスチック包装は丈夫で軽く便利ですが、自然には分解されにくく、廃棄物の蓄積や環境汚染の原因になっています。そこで、自然に分解されやすい素材で食品を包む方法が研究されています。その一つが「可食性フィルム(エディブルフィルム)」です。食品と一緒に食べられる薄い膜で、水分や気体の出入り、微生物による汚染を防ぐ役割が期待されています。
インドネシアの研究チームは、国内で豊富に生産されるトウモロコシのでんぷんを材料に選びました。ただし、でんぷんだけで作ったフィルムは硬く割れやすく、水を吸いやすいという弱点があります。そこで著者らは、フィルムをしなやかにする「可塑剤」としてグリセロールを、抗酸化作用や抗菌作用が知られるクルクミンなどを含むウコン(Curcuma longa)の抽出物を加えました。両者の濃度を同時に変えたとき、フィルムの性質がどう変わるかを調べることが研究の目的です。
どのように調べたか
研究チームは、ウコン抽出物の濃度を0.6%、0.8%、1.0%の3段階、グリセロールの濃度を0.5%、1.0%、1.5%の3段階として組み合わせ、それぞれ2回ずつ繰り返して試料を作りました。でんぷんを水に分散させて加熱し、のり状にしてからグリセロールとウコン抽出物を混ぜ、型に流して乾燥させてフィルムにしています。
評価項目は、引っ張ったときに切れるまで耐えられる力(引張強さ)、切れるまでにどれだけ伸びるか(伸び率)、水に浸したときの吸水率、土に埋めたときの分解の進み具合です。さらに、赤外線を当てて分子の構造(官能基)を調べる分析(FTIR)を行い、フィルムでブドウを包んで室温で保存し、見た目や硬さの変化を観察しました。
主な結果
論文によると、グリセロールの濃度を上げるほど引張強さは下がる傾向があり、反対に伸び率、吸水率、土の中での分解率は上がる傾向がありました。引張強さが最も高かったのはウコン0.6%・グリセロール0.5%の組み合わせで3.83MPa、伸び率が最も高かったのはウコン0.8%・グリセロール1.5%の組み合わせで3.61%でした。グリセロールがでんぷんの鎖どうしの結びつきを緩め、柔らかくする一方で、水になじみやすい性質も強めると著者らは説明しています。
統計解析では、吸水率にはグリセロール濃度と、ウコンとグリセロールの組み合わせの影響がはっきり見られた一方、ウコン濃度単独の影響は認められませんでした。分解率にはグリセロール濃度のみが影響していました。また、得られた値は日本工業規格(JIS)の基準(引張強さ3.92MPa以上、伸び率70%以上)には届いておらず、特に伸び率は全条件で大きく下回ったと報告されています。
ウコン0.8%・グリセロール0.5%のフィルムを分析したところ、新しい官能基は現れませんでした。著者らは、材料どうしが化学反応ではなく水素結合という比較的弱い結びつきでまとまっていると解釈しています。ウコン由来とみられる成分がフィルム内に残っていることも示されました。
ブドウの保存試験では、3日目までは全ての試料で状態が良く、6日目ごろから色の鮮やかさが落ち、やや柔らかくなり始めました。9日目にはウコン0.6%の試料で軸の近くに軟化が見られましたが、果汁のしみ出しや明らかな腐敗は全ての条件で見られませんでした。著者らはこの結果を、ウコン成分の抗菌作用やフィルムが水分・酸素の出入りを妨げる働きによるものと推測しています。
研究が示すこと
この研究は、トウモロコシでんぷんにウコン抽出物とグリセロールを加えたフィルムでは、主にグリセロールの量が強さ・しなやかさ・吸水性・分解のしやすさを左右することを示しました。強さと柔軟さの間には、一方を高めると他方が下がる関係が見られ、配合のバランスが重要であることがうかがえます。著者らは、この組み合わせが環境中で分解されやすく、食品の品質保持を助ける包装素材として発展する可能性を持つと結論づけています。
著者:Naila Kharaida(Universitas Serambi Mekkah)、Irmayanti(Universitas Serambi Mekkah)、Fadlan Hidayat(Universitas Serambi Mekkah)、Rita Sunartaty(Universitas Serambi Mekkah)、Chairuni AR(Universitas Serambi Mekkah)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Naila Kharaida, Irmayanti, Fadlan Hidayat, Rita Sunartaty, Chairuni AR FORMULASI EDIBLE FILM BERBASIS PATI JAGUNG DENGAN PENAMBAHAN EKSTRAK KUNYIT (CURCUMA LONGA) DAN GLISEROL. PERISAI Jurnal Pendidikan dan Riset Ilmu Sains 2026-10-11. DOI: 10.32672/perisai.v5i3.4638. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。