この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
生食用ブドウ「ヘティエンホン(和田紅)」を原料に蒸留酒をつくるとき、収穫時の熟し具合が仕上がりの品質をどう左右するのか。研究チームはこの点を明らかにするため、糖度の異なる3つの熟度段階でブドウを収穫し、それぞれから得た蒸留液を比較しました。
熟度の指標には「°Brix(ブリックス)」という単位が使われています。これは果汁に含まれる糖分などの溶けている成分の割合を示す値で、数字が大きいほど果実が熟して甘みが増している状態を表します。研究では17、20、24 °Brixの3段階が設定されました。
調べ方と主な報告結果
著者らは、HS-SPME-GC-MSと呼ばれる分析手法を用いて蒸留液に含まれる香り成分を調べました。これは、液体の上にたまった気体部分の成分を専用の繊維に吸着させて集め、成分を分離したうえで種類と量を特定する方法です。この分析により、合計72種類の揮発性香気成分が同定されたと報告されています。
熟度が17 °Brixから24 °Brixへ進むにつれて、揮発性脂肪酸は8.48倍に増加し、エステル類の濃度も上昇しました。一方で、ナフタレン誘導体、アルデヒド類・ケトン類、テルペノール類は大きく減少したとされています。
論文がとくに注目しているのは中間の20 °Brixです。この段階の蒸留液は高級アルコール類の濃度が最も高く、香りが最も豊かで、官能評価でも優れた特性を示したと報告されています。個別の成分では、2-メチル-1-プロパノールの濃度が20 °Brixで24 °Brixの15.70倍、オクタン酸の濃度が20 °Brixで17 °Brixの97.93倍だったとされています。
この結果が示すこと
著者らは、ヘティエンホンが蒸留酒の原料として適したブドウであり、収穫時の熟度を選ぶことで最終的な香味の方向性を調整できると結論づけています。熟せば熟すほどよいという単純な関係ではなく、成分ごとに増えるものと減るものがあり、総合的な香りと官能品質の評価では中間の熟度が最もよかったという点が、この研究の中心的な報告です。
研究チームは、この知見が生食用ブドウの付加価値を高める加工につながるものだと位置づけています。
著者:Lei Zhang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Hexiang Bai(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Dexin Yang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Mengrong Chen(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Xingyuang Yang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Xuewen Li(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Qiling Chen(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lei Zhang, Hexiang Bai, Dexin Yang, et al. Impact of Maturity on Volatile Flavor Compounds and Sensory Quality of Distilled Spirit from Hetianhong Table Grapes. Foods 2026-08-26. DOI: 10.3390/foods15173004. 原著ライセンス:CC BY.