著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Dental Journal (Majalah Kedokteran Gigi)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

歯を失った部分を補う歯科インプラントは広く使われていますが、その周りの歯ぐきや骨に慢性的な炎症が起きる「インプラント周囲炎」が問題になることがあります。インプラントの表面に細菌の膜(バイオフィルム)ができ、炎症が進むと骨が失われ、最終的にインプラントが使えなくなることもあります。

治療の中心は、専用の器具でインプラント表面の細菌の付着物を取り除く「機械的デブライドメント(清掃処置)」です。著者らによれば、この処置で短期的な改善は得られるものの、長期的に病気の進行を止める効果には限界があり、再発も珍しくないため、補助的な治療法が模索されています。

研究チームが注目したのは、DNAの合成や細胞の再生、免疫の調整に関わる水溶性のビタミンB群の一つ、葉酸です。歯周病では葉酸の有用性が報告されてきましたが、インプラント周囲炎ではほとんど調べられていませんでした。そこで本研究は、清掃処置に葉酸の服用を加えることで、臨床的な状態と炎症の指標が改善するかを検討しました。

どのように調べたか

研究はインドのチェンナイにある歯科大学病院で行われ、インプラント周囲炎と診断された25〜55歳の全身的に健康な50人が参加しました。喫煙歴のある人、妊娠・授乳中の人、過去6か月以内に抗菌薬や抗炎症薬、栄養補助食品を使った人、歯周病の既往がある人などは除外されています。

参加者は25人ずつ二つのグループに分けられました。どちらのグループも局所麻酔下でチタン製の器具による清掃処置を受け、そのうえで一方は葉酸錠(400マイクログラム)を1日3回、4週間服用し、もう一方は見た目や包装が同じでんぷんの偽薬(プラセボ)を服用しました。どちらを飲んでいるか分からないようにし、評価を担当する検査者もグループの割り当てを知らない状態で測定しました。

評価は治療開始時と3か月後に行いました。歯垢の付き具合を示す指数、歯ぐきの炎症の程度を示す指数、インプラント周りの歯ぐきの溝の深さ(プロービング深さ)、歯ぐきの付着の位置を示す指標(臨床的付着レベル)を測定しました。さらに、インプラントと歯ぐきのすき間からにじみ出る液体(インプラント周囲溝滲出液)を採取し、炎症を促す物質であるインターロイキン6(IL-6)の量を調べました。IL-6はインプラント周囲炎で増え、病気の重さと関連することが知られている指標です。

主な結果

治療開始時には、両グループの間で年齢・性別やすべての測定項目に統計的な差はありませんでした。3か月後には、両グループともすべての項目で開始時より有意に改善していました。

そのうえで、葉酸を服用したグループは偽薬のグループに比べ、すべての項目で改善がより大きかったと報告されています。たとえばプロービング深さは、偽薬のグループで平均5.94ミリから4.14ミリへ、葉酸のグループで5.97ミリから3.04ミリへ減少しました。滲出液中のIL-6は、偽薬のグループで30.32から16.23 pg/mLへ、葉酸のグループで32.12から9.11 pg/mLへと低下しています。歯垢や歯ぐきの炎症の指数、臨床的付着レベルでも、3か月後の値は葉酸のグループの方が良好でした。研究期間中、副作用などの有害事象を訴えた参加者はいませんでした。

著者らは、IL-6の低下について、葉酸が炎症を促す物質の産生を抑える仕組みに関わる可能性を考察で挙げていますが、これは既存の知見に基づく解釈として示されたものです。

研究が示すこと

この研究は、インプラント周囲炎に対して清掃処置に葉酸の服用を組み合わせた場合、清掃処置と偽薬の組み合わせよりも、3か月後の臨床的な指標と炎症の指標が大きく改善したことを報告しています。著者らは、この種の検討としては初めての研究だとしています。

一方で著者らは、参加者数が少なく追跡期間が3か月と短いこと、参加者の食事からの葉酸摂取量や血液中の葉酸濃度を測っていないことを限界として挙げています。今回の結果は、葉酸がインプラント周囲炎の治療を補う手段になりうる可能性を示した初期段階の報告と位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Priyatha Prasanth(Postgraduate student, Department of Implantology, Saveetha Dental College and Hospitals, Saveetha Institute of Medical and Technical Sciences (SIMATS), Saveetha University, Chennai)、Arvina Rajasekar(Associate Professor, Department of Periodontology, Saveetha Dental College and Hospitals, Saveetha Institute of Medical and Technical Sciences (SIMATS), Saveetha University, Chennai)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Priyatha Prasanth, Arvina Rajasekar Synergistic effects of folic acid supplementation in the management of peri-implant disease: a comprehensive study on clinical and biochemical outcomes. Dental Journal (Majalah Kedokteran Gigi) 2026-09-01. DOI: 10.20473/j.djmkg.v59.i3.p261-265. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

原著の権利表示:Copyright (c) 2026 Dental Journal (Majalah Kedokteran Gigi) 2026 Dental Journal (Majalah Kedokteran Gigi)。本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。