著者の所属・活動拠点の国は、ドイツ、イギリスです。

掲載誌:Global Challenges

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

光の色だけでなく、進む方向を変える

研究チームは、光の波長を変える温室用の透明な層について、表面の微細な凹凸が温室内への光の届き方にどう影響するかを調べました。狙いは、波長を変えて生じた赤い光を下向きに取り出しながら、変換されずに通過する光もできるだけ失わない設計を探すことです。

この層には、光を吸収して、より長い波長の光を放つ発光材料が含まれています。しかし、平らな層では、発光した光の多くが内部で反射を繰り返し、端へ向かってしまいます。表面の凹凸は光を外へ取り出す助けになる一方、もともと透過するはずの光を散乱させたり、内部に閉じ込めたりする可能性もあります。

六つの形状を光のシミュレーションで比較

著者らは、多数の光線の進路を追跡するシミュレーションを使い、ドーム、円すい、四角すい、円柱、半円柱、プリズムの六つの形状を比較しました。二種類の発光材料を対象に、凹凸の大きさや間隔、突出かくぼみか、層の上面と下面のどちらに配置するかなどを変えて調べました。さらに、長さ10メートル、幅4メートルの温室モデルで、春分・夏至・冬至の太陽の動きに応じた床面への光の届き方を評価しました。

研究チームの報告では、縦横5センチ、厚さ3ミリの平らな層では、発光した光のうち下向きに取り出せる割合は12%でした。下面に突出したドーム状の構造では最大39%となり、微細な凹凸によって取り出し効率が高まりました。一方、下面の凹凸は、波長が変換されない光の散乱や閉じ込めなどを増やし、その透過を低下させました。赤い発光を多く取り出すことと、通過する光を保つことの間に、両立の難しさが示されました。

層単体の性能と、温室全体の性能は異なる

温室全体のモデルでは、凹凸から取り出された光が床へ届く前に側壁から逃げることも考慮されました。その結果、床面で受け取る光の強さを重視すると、上面の浅いドーム状のくぼみと、下面の浅い円柱状のくぼみが最適な構成として選ばれました。微細な凹凸は光の進む方向も変え、とくに太陽が低い時間帯に、床面での光の分布をより均一にしたと著者らは報告しています。

この研究が示したのは、波長変換層から赤い光を多く取り出せても、それだけで温室の床へ多くの光を届けられるとは限らないということです。植物の成長量を直接測った結果ではなく、光学シミュレーションを中心とした成果として、表面の形状と温室全体の構造を合わせて考える重要性を伝えています。

原著論文の著者・所属:Juvet N. Fru(Institute of Microstructure Technology Karlsruhe Institute of Technology (KIT) Eggenstein‐Leopoldshafen Germany)、Boris Breiner(Lambda Energy Ltd. Crop Technology Southern Innovation Hub, College Road Cranfield UK)、Monica S. Saavedra(Lambda Energy Ltd. Crop Technology Southern Innovation Hub, College Road Cranfield UK)、Stephanie Sheppard(Lambda Energy Ltd. Crop Technology Southern Innovation Hub, College Road Cranfield UK)、Bryce S. Richards(Institute of Microstructure Technology Karlsruhe Institute of Technology (KIT) Eggenstein‐Leopoldshafen Germany; Light Technology Institute Karlsruhe Institute of Technology (KIT) Karlsruhe Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Juvet N. Fru, Boris Breiner, Monica S. Saavedra, et al. Influence of Micro‐Scale Surface Texturing on Light Distribution From Luminescent Downshifting Layers for Next‐Generation Greenhouses. Global Challenges 2026-09-01. DOI: 10.1002/gch2.70163. 原著ライセンス:CC BY.