著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

香り成分を包み、カビを抑える働きを保つ

研究チームは、シナモン精油の主成分であるシンナムアルデヒドを微粒子に包むことで、カビの増殖を抑える働きを保ち、パンの保存期間を延ばせるかを調べました。この成分には抗カビ作用がありますが、強い香りや風味が食品への利用の課題となっています。

成分を包む材料には、トウモロコシ由来のたんぱく質「ゼイン」と、アカシア属の樹木から得られる多糖類「アラビアガム」を組み合わせました。研究チームが作製した成分入りの粒子は、平均直径255.8ナノメートルでした。ナノメートルは10億分の1メートルを表す単位です。

培養試験とパンで抗カビ作用を比較

研究チームは、パンの腐敗に関わるアスペルギルス属とペニシリウム属の計4種のカビを用い、微粒子に包んだシンナムアルデヒドと、包まずに界面活性剤で水中に分散させたものを比較しました。培地での試験では、いずれのカビでも濃度が高くなるほど増殖が抑えられました。

微粒子に包んだ場合、4種のうち3種では、増殖を完全には抑えない低濃度域の一部で、包まない場合より強い抑制が見られました。一方、ペニシリウム・ロックフォルティでは、調べた濃度で両者に有意な差はありませんでした。著者らは、成分を包むことで抗カビ作用は維持または向上した一方、増殖を完全に抑えるのに必要な濃度は変わらなかったと報告しています。

パンに適用した試験でも、微粒子に包んだ成分による処理は、無処理の場合や包まない成分による処理に比べ、カビの発生を有意に遅らせ、汚染の程度を低く抑えたと報告されました。ただし、香りや味、食感、消費者の受け入れやすさについて、正式な官能評価は行われていません。

保存中の働きも維持

研究チームは、パンそのものの保存試験とは別に、成分を含む分散液を保存した際の抗カビ作用も調べました。4℃では、微粒子に包んだ分散液は180日まで抗カビ作用を維持し、180~210日の間に約10%の低下が見られました。包まない分散液では、120~150日の間に約20%低下し、210日には作用が失われました。

これらの結果は、シンナムアルデヒドをゼインとアラビアガムの微粒子に包むことが、抗カビ作用を保ちながら、パンでのカビの発生を遅らせる手段になり得ることを示しています。

原著論文の著者・所属:Mônia Sartor(Institute of Food Science and Technology (ICTA) Federal University of Rio Grande do Sul (UFRGS) Porto Alegre Rio Grande do Sul Brazil)、Vanessa Teixeira da Rosa(Institute of Food Science and Technology (ICTA) Federal University of Rio Grande do Sul (UFRGS) Porto Alegre Rio Grande do Sul Brazil)、Laura Smaniotto Nascimento(Institute of Food Science and Technology (ICTA) Federal University of Rio Grande do Sul (UFRGS) Porto Alegre Rio Grande do Sul Brazil)、Alisson Steffli Thill(Graduate Program in Physics Institute of Physics, UFRGS Porto Alegre Brazil)、Fabiano Bernardi(Graduate Program in Physics Institute of Physics, UFRGS Porto Alegre Brazil)、Flávio Fonseca Veras(Institute of Food Science and Technology (ICTA) Federal University of Rio Grande do Sul (UFRGS) Porto Alegre Rio Grande do Sul Brazil)、Juliane Elisa Welke(Institute of Food Science and Technology (ICTA) Federal University of Rio Grande do Sul (UFRGS) Porto Alegre Rio Grande do Sul Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mônia Sartor, Vanessa Teixeira da Rosa, Laura Smaniotto Nascimento, et al. Zein/Gum Arabic Nanoparticles for Cinnamaldehyde Delivery: Enhanced Antifungal Performance and Bread Shelf Life Extension. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71488. 原著ライセンス:CC BY.